少しでも動けば切り刻まれてしまいそう。
だけど、動かなければ絶対に殺されてしまう。
「あ、あんたなんかと遊ぶかっての!」
声が震える……。
赤い人が一歩、また一歩と私に近づいて来るのは、死が近づいているのと同じ。
まだ死ねない!
せめて後ひとつ、カラダを見つけるまでは!
「いやっ! 来ないでっ!!」
さらに一歩、赤い人が足を前に出した瞬間、私は構えていた鉄パイプを、その頭部目がけて振り下ろした。
ゴツッ! という鈍い音がしたけど、赤い人は平然としていて……。
何度も何度も、祈るような気持ちで私は鉄パイプを頭部に振り下ろした。
いくら殴っても、赤い人にはまったく効果がなくて。
不気味な笑みを浮かべたまま、お構いなしに前進してくる。
「あっちに……行ってよっ!」
迫る赤い人に恐怖して、震える手でもう一撃。
鉄パイプを赤い人の頭部に振り下ろした。
だけど……それは、赤い人の左手にはばまれて、鉄パイプをつかまれてしまったのだ。