階段の隣の教室、家政学室、調べる所はいっぱいあると思うけど、まずは逃げる事が先だ。
逃げ切れなければ殺される。
その時点で私の今日が終わってしまうから。
赤い人に追い付かれる前にと、階段を上っている最中……ふと感じた気配に横を見ると。
私に伸びる赤い手。
階段の裏側にはり付いている赤い人の姿がそこにあったのだ。
顔に迫る赤い手。
反射的に屈んだ私はその手をよけて、這うようにして急いで階段を上り切り、廊下に飛び出した。
そうだ、そうだよ!
赤い人は壁も天井も関係ない。
どこだって床みたいにして、階段すら無視して移動するんだから、すぐに追い付かれるよ!
どこに逃げるか……なんて考える暇もない。
私は工業棟に向かって必死に走って、廊下の突き当たりにあるドアの中に逃げ込む事しか頭になかった。
背後に迫る無邪気な殺意。
小さい女の子なのに、廊下いっぱいを埋め尽くす、大きな怪物のような存在感。
追い付かれたら最後、私なんか虫けらみたいに潰される。