シンと静まり返る廊下に、背後の室内から聞こえるガサガサという音。


うん、赤い人は近くにはいないみたいだ。


そう思って、中庭の方を見た時だった。








「あ……」










中庭を挟んで向かい側の三階。


教室の窓がひとつ……雷で一瞬見えたそこは、何かが飛び散ったような赤い液体で染められていたのだ。


そして……その隣には、赤い女の子。


窓に張り付いて、私の方をジッと見ていた。


雨降りの夜、雷の光で浮かび上がる真っ赤な少女。


あまりに不気味なシチュエーションに、私は声も出せずに。


それでも龍平に、赤い人に見つかった事を伝えようとした時。


それは起こった。







小さく、パリンとガラスが割れる音が聞こえて。




赤い人がその窓から外に飛び出すと、私の方に一直線に向かって来たのだ。


赤い人が落ちてきた……。


そんな言葉が頭に浮かんだけど、それどころじゃない!


「り、龍平! 赤い人が来た!」


そう叫んで、今来た道を引き返すように私は走り出した。