「赤い人に見つかって、こんなにのんびりしてるはずないだろ。それよりお前、ここはもう探したのか?」
「ああ、うん。視聴覚室もこの部屋も調べたけどね。赤い人が来たから、動けなかったんだ」
私が動けないってのに、龍平は平気でここまで歩いて来たんだ。
赤い人に見つかってないでしょうね。
「だったらよ、早くここから逃げようぜ。赤い人と同じ階にいるなんて、生きた心地がしねぇよ」
そう思うなら、こんなとこに来ないでさっさと逃げれば良かったのに。
どうもこのバカの考えは、私には理解できない。
「赤い人に会ったらどうすんのよ。まだ死にたくないっての」
どこにいるか分からない赤い人に怯えるより、私が張った罠にかかった後に移動した方が確実だ。
なんて考えていたら……。
「う、うわああああああっ!!」
ずいぶん遠くから、誰かの悲鳴が聞こえた。
「今の……健司か。奥の方から聞こえたから……留美子、行くぞ」
「え、ちょっと! 本当に大丈夫なの!?」
とまどう私の腕をつかみ、教室を飛び出した龍平。
私達が来た道を引き返して、美術室の横にある階段に向かおうとしている。
健司がどこで赤い人に遭遇したのかは分からない。