あいつを犠牲にしてやろうかな……。


なんて事も考えてしまうほどだ。


「それにしても、声が聞こえないな……赤い人は今、どこにいるんだろ」


ドアに耳を当てて、廊下の音を聞いてるけど……物音ひとつ聞こえやしない。


と、思った時。


耳を当てていたドアが、ゆっくりと開き始めたのだ。










えっ!? な、何これ!


何が起こってるの!?


慌ててドアから離れた私は、赤い人が来たんだと息を飲んだ。


ああ……せっかく視聴覚室のドアを少し開けて、罠を張ったのに。


赤い人はそれに引っかからなかった。


私は、開くドアを見つめて、今日が終わりを告げているんだという事を理解した。


でも……。













「留美子、バカお前! 独り言の声がでかいんだよ!」










ドアを開けて入って来たのは……赤い人ではなく、龍平だった。


あれ? 龍平?


赤い人に見つかったんじゃないの?


「赤い人がいるんだからよ、もう少し静かにしろよ。廊下まで声が聞こえてるぞ」


「いやいや、あんたこそ赤い人に見つかったんじゃなかったの?」


私が尋ねると、首を傾げながらドアを閉める。


そうじゃないとなると……別の誰かがここにいたんだ。