「待てよ留美子、生産棟はこんな感じの教室が多いだろ? だったら手分けして探した方が良くないか? この部屋だってそんなに探す場所は多くなかったし」


……龍平のくせに生意気!


私よりバカなのに、そんなまともな提案をするなんて!


「わ、私も同じ事を言おうとしたんだけどね。じゃあ、私は生徒会室とか視聴覚室なんかを調べるから、あんたは隣の部屋に行ってよ」


「まあ良いけどよ……何かあったらいつでも俺の所に来いよ」


これが超絶イケメンに言われたなら、何もなくても行くんだろうけど……相手が龍平じゃあね。


「はいはい、あんたこそ、何かあっても私の所に来ないでよ」


美術室を出て、そんな事を言いながら私は廊下を曲がった。


携帯電話の明かりで照らしながら、昼間でも薄暗いこの廊下を歩いて視聴覚室に向かう。


この部屋は入り口がひとつしかないから、追い詰められると逃げる事ができない。


だから、調べるなら今のうちしかないのだ。


視聴覚室の前にやって来た私は、そのドアを開けて中に入った。


廊下よりも冷たい空気が足元に漂う。