ヤバいヤバい! 絶対にここにいる!


どこにいるか確認しようものなら、間違いなく見つかって殺されてしまう!










『あー……ここにもいない』












窓の向こうで呟かれた赤い人の声が、フィルターでもかかっているかのように聞こえる。


ガラス一枚……。


それが、私を赤い人から守る唯一の物だった。


今これが破られれば、床に這っている私は、逃げる前に殺されてしまうから。


赤い人に気付かれないように、静かに……少しずつ這って進む。


今、赤い人はまだ私の上にいるはず。


本当なら動きたくないけど、赤い人が近くにいるのにジッとなんてしていたくないから。


こんな状況で動くなんて……指一本動かすだけでも、刃物で肌をなでられるかのようで。


早く私の上からいなくなってほしいのに、ペタペタという足音が離れようとしない。


ちょっと……マジで勘弁してよ。


こんな、渡り廊下のど真ん中で、進む事も戻る事もできないなんて。


もう無理! 一か八か、見つかってしまうのを覚悟で走ってやろう。


と、考えて、ゆっくりと身体を起こしたその時だった。