男子トイレの一番奥、個室の中をのぞきながら、小野山美紗に反論する。
ないとは思うけど、一応タンクの中も見ておかないとね。
「そうね。でも、うまく行けば相島さんと袴田さんを死なせずに済むかもしれないわ。可能性は低くて、池崎君は変わらず存在しないとは思うけど」
その言葉に、私は思わず小野山美紗の方を見た。
難しい話は私には分からない。
だけど、そんな世界があるのなら、小野山美紗の言う通りにしてみる価値はあるかもしれないと考えていた。
「どうすれば美雪とあゆみは生きられるの? 私にできる事があるなら教えて!」
「……とりあえず、今はカラダを探しなさい。朝になったら、私の家に来れば良いわ。詳しい話はそこで」
それだけ言うと、小野山美紗はトイレから出て行った。
まるで、私がそう返事するのを待っていたかのように。
「可能性は低い……か。このカラダ探しを、どういう形で終わらせても、誰かが犠牲になるんだよね……」
私の中では、犠牲は龍平で決まっているけど……皆にこの話をしたらどうなるかな。