『私も捨てたけど……これで大丈夫かな?』
「いやいや、大丈夫かなって……しっかりしてよ!」
この手の怖い話は信じないようにしてるけど、さすがに知らないぬいぐるみがあるってのは気味が悪くて仕方がない。
それも、捨ててあったぬいぐるみがあるのだから。
『そんな事言ったって……あ、ああっ! いやぁぁぁぁぁっ!! ブツッ!』
「ちょ、ちょっと!? どうしたのよ美雪!!」
美雪の悲鳴……突然切れた電話……美雪に何が起こったのか。
その答えは、この部屋のドアが開くと同時に、室内へと入って来ようとしていたのだ。
「な……なに? 誰よ……」
この家には私しかいないはずなのに、誰がドアを開けてるの?
怖くて声が震える。
ゆっくりと開かれて行くドアの陰に隠れているのは……誰?
ハッキリとその姿は見えないけど、小さな女の子のように見える。
キンッ……キンキンッ。
その少女の姿が露になろうとした瞬間、天井の照明が乾いた音を立て、光が瞬く。
嘘でしょ!? 何よこれ!
お願い、消えないで!!
そんな私の願いもむなしく、照明は光を灯す事をやめてしまったのだ。