『赤い人が、工業棟一階に現れました。皆さん気を付けてください』














今日、最初の校内放送が流れた。


赤い人が現れた場所は、ここから正反対と言えるほど離れている。


しばらくは赤い人に恐怖する事はない。


そんな事を考えていると、美雪が歩き始めて、私の横を通り過ぎた。


「ちょっと、美雪ぃ。待ってよ、ひとりで行かないで」


夜の校舎でカラダ探しをするのも三日目とは言え、置いて行かれるのは何だか怖い。


それに、少しでも美雪と仲直りができるチャンスがあるなら、それを見過ごしたくないから。


私の先を行く美雪が入ったのは、階段と教室の間にある物品倉庫。


部屋の両側にスチール製の棚が置かれていて、入り口からでも見通せるから、携帯電話の光で室内を照らした美雪が、すぐに振り返って隣の教室に向かう。


……何か、少しくらい話してくれても良いじゃない。


美雪って、案外強情だね。


小野山美紗が言う、別の世界が本当にあったとして、その世界でも私と美雪は喧嘩したんだろうな。


ま、どうでも良いけどね。