私がそう尋ねると、小野山美紗はその答えをすでに用意していたように口を開いた。


「父親は……赤ちゃんが死んだのは美子に命を奪われたからだと考えて、美子を生き返らせる事をためらったのよ。そうして悩んでる間に、美子の魂が闇に染まり続けて……美紀も殺された。魔術のひとり歩きね」


小野山美紗はどうやってそれを知る事ができたのだろう?


まるで見てきたような口振りだけど。


「私の父は、元の世界では生まれるはずがなかったのよ。この世界でだけ生まれる事ができたの。つまり……この世界では、美子の父親は魔術に頼ろうとしなかった」


……何て言うか、訳が分からない。


え? 美子の父親は、美子を生き返らせようとしなかったわけだよね?


なのに、赤い人はいる。


生き返らせようとしなかったら、赤い人も生まれないんじゃないの? 今の話だと。


私の頭では、小野山美紗の話を理解できそうになかった。


「良く分からないけど、なんだか大変な事態だって事は分かったわ」


本当は、それすらも分かっていないんだけど。


湿ったブレザーを脱ぎ、ふかふかのベッドに横になって天井を見上げた。