「あの話」というのに、何の心当たりもなかった。


「覚えてるわけないじゃん。詳しく教えてよ」


寝るまでの間、良い暇潰しができたと内心喜んで、私は美雪に尋ねた。


『あのうさぎのぬいぐるみさ、どこかで見た事があるなって思ってたの。間違いないよ、去年皆で遊びに行った日に、学校の近くのゴミ捨て場に置いてあったやつだよ!』


「なわけないじゃん。去年のゴミなんか、とっくに燃やされてるって。考え過ぎじゃない?」


『良いから聞いて! 結子さんは「道に落ちてるうさぎのぬいぐるみは拾っちゃダメ、赤い人がぬいぐるみを取り返すために殺しにやって来る」って言ってたの!』








は? 赤い人?









そう言えば、そんな話を聞いたような聞いてないような……。


「でもさ、あのぬいぐるみがそれなわけないじゃん。考えすぎだよ」


美雪は頭が良いのに意外と怖がりだな。


『「家に知らないぬいぐるみがあったら、すぐに捨てた方が良い」って言ってたよ……留美子、部屋にうさぎのぬいぐるみ、ない?』


うさぎのぬいぐるみか……そりゃあ私は可愛い物好きだから、ぬいぐるみくらいあるけどさ。