「誰に負けるのよ……まあ、まあ留美子はツンデレだからね。それもとびきり極端なやつ」
ツンデレって……どこがよ?
こんなに優しい留美子さんのどこにツンがあるっての?
「あら、柊さんに袴田さん。あなた達は帰らないの?」
私達の背後からかけられた声に、慌てて振り返った私。
こんな物言いをするのはひとりしかいない。
「傘がないんだからさ、濡れるの嫌なんだからやむのを待つしかないでしょ。それよりあんたは傘あるの? 持ってないみたいだけど」
私の問いに、小野山美紗はかすかに笑みを浮かべた。
不敵な笑みの後、小野山美紗が何を言うのか、正直なところ気になった。
「私には必要ないわ。この世界では私は濡れる事がないから」とか言いそうで。
特別な力があるんだったら、それくらいできるんじゃないかと勝手に想像して。
「傘なんて持ってないわ。雨が降るなんて思ってなかったもの」
ツンと横を向いて、長い髪を右手でなでながら、持っていないのが当然のようにそう答えた。
あー……はい、そうですか。
つまり、あんたも雨がやまないから家に帰れないわけね。