「あ……悪い。ただ、留美子に用事があるんだ」
今にも泣き出しそうなあゆみを、何とかなだめようとしているけど、それは逆効果のような気がするな。
クラスメイトから刺すような視線を向けられたまま、私達は廊下に出た。
「は? 小野山美紗を信じる? あんた、別の世界の事なんて分かるはずがないっていってたでしょ?」
人がいない場所を求めて、生産棟に向かって歩いていた私達。
突然の健司の言葉に、私は驚いた。
いや、確かに私は小野山美紗の話を信じたけどさ、まさか健司が信じるとは思ってなかったから。
「あいつさ、俺に何を話したと思う? 皆にも言ってない事を、あいつは当たり前のように話したんだ」
「私達に言ってない事? それと話を信じるのと、どう関係があるわけ?」
「留美子は、50年以上前の事なんて知ってるか?」
うーん、健司の言う事も私にはさっぱり分からない。
私が生まれるずっと前の事なんて分かるはずがない。
「知らないだろうな。俺のじいちゃんの兄貴の事なんて、俺もあまり知らなかった」