あまり興味がなさそうだったあゆみも、目の色を変えてぬいぐるみを手に取る。


そんなキッタナイぬいぐるみが何十万もするわけないじゃん。


あ、ほら、なんか鼻くそみたいなのが付いてるし。


「いや、ただ古いだけだろ。見てみろよ、足の裏に名前が書いてある。これじゃあ価値はないんじゃないか?」


そう言って健司が手に取った足の裏には、確かに汚い字で何か文字のような物が書かれていた。


「なーんだ、じゃあいらない」


あゆみも現金だな。


一気に脚光を浴び、突然皆に見向きもされなくなったぬいぐるみは、再びゴミ捨て場に横たわる事になった。


誰も気にも留めなくなったのに、美雪だけはまだ何かを考えているように首を傾げているのは気になったけど。


まあ、私が考えても答えが出るわけじゃないし。


それよりも、今日の晩ご飯のメニューの方が気になった。









皆と別れ、家に帰った私は、不安になりながらまったく何の匂いもしないキッチンへと向かった。


ドアを開けると、そこにママの姿はなく、あったのはコンビニ弁当と書き置きだけ。