平野桜がその言葉を発した時、稲垣亜矢音は親友の富田知佳に肩を抱かれて泣いていた。

昨日は和田がいなくなってすぐに家に帰ってしまい、今朝になってから、その和田もが死んだことを知ったのだ。


『タカギマモルニ コロサレマシタ』

言葉が記号のように頭に流れ込む。

意味を理解するまで時間がかかった。


・・・あの転校生。

亜矢音は教壇に立つ桜をにらみつけた。


友達でもないくせに病院に現れた。

友達でもないくせに健治が桜をかばった。

友達なんかじゃない。

友達なんかじゃない。