作画:富樫じゅん先生

大阪府在住。別冊マーガレット(集英社)にてデビュー。月刊プリンセスにて連載した『好派!蘭丸応援団』(秋田書店)は全21巻に及ぶ大ヒット作品に。女性誌、ロマンス誌など幅広く執筆、コミックも多数刊行されている。現在、大人女性向け少女コミック誌noicomiにて『鬼の花嫁』連載中。

原作:クレハ先生

大阪府在住。『復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる』(アリアンローズ刊)でデビュー。『鬼の花嫁~運命の出逢い~』をはじめとする『鬼の花嫁』シリーズで累計580万部の大ヒットを記録。ほか『龍神と許嫁の赤い花印』シリーズがある。

今回の「立読み歓迎! コラボプロジェクト」で『鬼の花嫁』のまど上ポスターが東京メトロ全線に掲出されることになりました。この話が決まったとき、どのような気持ちでしたか?


クレハ:東京メトロを利用している人はとても多いと思うので、それだけ多くの人に見ていただけることが純粋にすごいなと思いました。


富樫じゅん(以下、富樫):お話をいただいた時、まず驚きました。電車の広告って、自分からは目にしないような情報が目に入ることが多いので、私自身、電車の広告をしっかり見るのが好きなんですね。なので、そういったたくさんの人が見るところに『鬼の花嫁』が掲出されると聞いて、すごく嬉しかったです。


では、今回掲出される『鬼の花嫁』についてお聞きします。まずは原作者のクレハ先生、作品をつくるきっかけになった出来事などを教えてください。


クレハ:もともと和風の漫画や小説が大好きで昔から慣れ親しんでいたこともあり、そういうものを書いてみたいなと思っていました。【ノベマ!】主催の短編小説コンテストで、テーマが「あやかし×恋愛」というものがあり、書きたい内容とコンテストの題材がマッチしていたので「これは出すしかない!」と書き始めました。


物語はどのように思い浮かんだのですか?


クレハ:どのようなあやかしを使おうか考えたときに「鬼」がまず思い浮かんで、鬼をヒーローにした作品を書こうと決めました。内容は、二人の出会いのシーンがいちばん初めに思い浮かんで、そこに至るまでの流れを考えていった感じです。

その頃、小説投稿サイトで姉妹格差的な物語が流行っていたこともあり、妹と比べられ家族から虐げられるヒロインをヒーローである鬼が助けてくれるという流れにしました。


コミカライズが決まったとき、富樫先生はどう感じましたか?


富樫:とにかく、作品の世界観が新しいなと思いました。キャラクターもものすごく魅力的ですよね。今まで描いたことのない世界観だったので、それを漫画で描かせていただけるという嬉しい気持ちと同時に、作品がおもしろいからこそ漫画で失敗できないという責任感で身の引き締まる思いもありました。

孤独な人間の少女・柚子があやかしの頂点に立つ鬼の玲夜と運命的に出会い、そのふれあいを通じて心の成長を描く本作。人間とあやかしが共生する世界で展開されるラブストーリー

『鬼の花嫁』の見どころはどんなところでしょうか?


クレハ:優遇されている妹に対して劣等感の塊だった主人公の柚子が、あやかしの中で最上位に位置する鬼龍院一族の次期当主である玲夜と出会うことで、自己肯定感を高めてだんだん強くなっていくところを見ていただきたいです。


富樫:コミック版では、和装に力を入れて描いています。見目麗しきあやかしたちがゴージャスな和装でたくさん登場しますので、そこにもご注目いただけたら嬉しいです。


コミックでは美しい和装がたくさん出てきますが、着物の柄や装飾などのデザインはどのように決めているのですか?


富樫:色々な資料を探して描いています。表紙などのカラー原稿は、赤い着物にしたら次は他の色になるようにとか、並べた時にできるだけカラフルになるように意識しています。

あと、コミックの発売時期にあわせて表紙に季節のお花を描いているのですが、そのお花とのコーディネートも考えて着物の柄や色を決めていますね。最近は、同じ時期に発刊される小説とコミックで表紙に使うお花も連動させたりもしています。


クレハ:小説とコミックの表紙でお花を揃えていたら、書店さんでも書籍がおかれるコーナーに同じお花を飾ってくれたりして。それをSNSに上げていただいたりもしています。


富樫:より華やかにしていただいていて嬉しいですよね。


クレハ:本当にありがたいことです。

【コミックス】鬼の花嫁 5巻

【小説】鬼の花嫁 新婚編四~もうひとりの鬼~

魅力的なストーリーやキャラクターはもちろん、小説とコミックで連動するようになった表紙を飾る季節の花や美しい和装も見どころのひとつ。

ここからは作品づくりやキャラクターに焦点を当てていきたいと思います。

『鬼の花嫁』には魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、先生たちはどのようにしてキャラクターをつくったり、デザインしているのでしょうか?


クレハ:私は、流れに身を任せて、というんでしょうか。『こういうキャラがいたらいいなぁ』という感じで増やしています。思い浮かんだキャラ同士をかけ合わせたらどんな話になるだろう?とか考えながら……計画的にというよりは、執筆を進めていく中で自然と浮かんでくる発想を元にキャラクターをつくっています。


そうして生まれたキャラクターのビジュアル化はどのように進めていますか?


富樫:クレハ先生がキャラクターにリアルなイメージを持っておられるので、そのイメージをお聞きした上で、キャラクター同士のバランスを見ながら絵にしていっています。


キャラクターをビジュアル化していく中で、難しかったキャラクターはいますか?


富樫:絵にするにあたっては、途中から登場する「まろ」と「みるく」ですね。ネコちゃんは大好きなんですけど、漫画にするとなかなかかわいくならなくて苦労しました。


クレハ:まろとみるくは、うちで飼っていたネコたちがモデルなんです。なので、富樫先生に写真を見せて「この子たちをお願いします!」とお伝えしました。


富樫:かわいくしなければと思うんですけど、なんかかわいくならなくて……(笑)


クレハ:いえいえ! かわいいです!(笑)

物語の途中で柚子が出会うまろとみるくはクレハ先生の飼い猫がモデル。両先生ともに猫を飼っていて、インタビューの合間に猫ちゃんトークに花が咲く一幕も。

お気に入りのキャラクターは誰ですか?


クレハ:私はもちろん子鬼ちゃんで!二人セットでお気に入りです。女性キャラだと何気に手芸部部長が好きです。


富樫:私は高道が大好きです。女性キャラクターですと桜子さんですね。


執筆や作画をしていて、楽しいキャラクターは誰ですか?


クレハ:玲夜が柚子のために作り出した使役獣の子鬼ちゃんたちや龍、まろとみるくなど、愉快な仲間たちのやりとりを書くのが好きです。


富樫:猫又のあやかしである猫田東吉と、東吉の花嫁であり柚子の友人でもある透子が描きやすいですね。二人ともキャラが立っていて明るいので、やりとりなどを描いていて楽しいです。

親友である透子とその婚約者で猫又のあやかし・東吉は、物語の中で常に柚子を支えてくれる心強い存在。そしてクラスメイトたちと楽しい時間を過ごせる学校は柚子にとって大切な場所。

作品をつくっていて表現に難しさを感じるキャラクターがいたら教えてください。


クレハ:何気に玲夜がちょっと難しいですね。ちゃんとかっこよく書かなければならないんですが、たまに少し弱いところも見せつつ……。でもちゃんとヒーローであり柚子を支える存在として、スパダリというんですかね、そんな感じで書かないといけないので、どう表現しようかと悩むことがあります。


富樫:私は柚子ですね。愛情を受けないで育ってきた普通の女の子が、玲夜と出会って愛されることを知って少しずつ心を開いて成長していく。その過程を矛盾が生じないようにていねいに描きたいと思って、表現に気を使っています。


クレハ:柚子の心情のさじ加減は私も苦労しました。1巻で玲夜に心を開いて少し強くなったけど、2巻でまたちょっと弱い柚子に戻って。ちょっと進んではちょっと戻るというのを繰り返しながら、少しずつ強くなっていく柚子を表現するのが大変でした。


キャラクターの心境が少しずつ変わっていく様子は読者にとっても読み応えがあるところだと思います。柚子だけでなく、玲夜の心の変化も見どころですよね。


富樫:そうですね。玲夜の変化にもめちゃくちゃ気を使っています。表情や手の仕草、柚子への手の差し出し方ひとつとっても、少しずつ親密になるように意識しています。

物語の進展に合わせて、二人の表情や仕草などにも少しずつ変化が。柚子と玲夜の心境の変化はセリフだけでなく、細かな表現の中にも込められている。

クレハ先生がコミックでお気に入りのシーンは?


クレハ:『鬼花』はここから始まった、という、柚子と玲夜の出会いのシーンがいちばん思い出深くて好きなシーンです。富樫先生にコミカライズしていただいたこのシーンの玲夜の顔が、もう本当に好きで……。


富樫:ありがとうございます!


クレハ:優しげな玲夜の表情が本当に好きで、とても印象に残っています。


クレハ先生のイメージ通りに描いていただいたんですね。


クレハ:はい、想像通り……というか、想像以上です!


クレハ先生にも大好評のコミック版ですが、作画で苦労していることはありますか?


富樫:作画カロリーが高いんです、この作品は……(笑)。着物もそうですし、キャラも多いですし、やはりあやかしなので華やかに美しく描かなければ説得力が出ないので、作画はいつも大変です。描いていて楽しいですけどね! 普通の作品よりは、時間がかかります(笑)。


クレハ:申し訳ございません……!(笑)


富樫:がんばります!


富樫先生は、コミカライズをどのようなプロセスで進めていくのですか?


富樫:いったん自分の中に完全に入れないと出力できないと思っているので、まずは原作を読み込んで、それから、自分のオリジナル作品を描くような気持ちで描いています。その方が結果的にキャラがよく動いてくれますね。


漫画の構想ができあがったらクレハ先生が確認する、といった感じでしょうか。


富樫:ネームというのですが、絵コンテ的なものを最初に作ります。それをクレハ先生に見ていただいて、OKが出たら実際に漫画を描いていきます。


クレハ:富樫先生はネームづくりがすごくうまいんですよ!分かりやすくてきれいなんです。


富樫:ありがとうございます!漫画はネームが全てだと思っています。そこで面白くないと絵をいくらきれいに描いても魅力的にはならないので、毎回ネームから頑張ってつくっています。


コミックでは、クレハ先生の書き下ろし小説も収録されていますが、どのように作られていくのでしょうか?


クレハ:コミックの内容と連動するようにつくっています。『本編の裏側ではこんなことも起きています』という感じで。

他にも、柚子が大学へ進学する話が収録されている4巻の特装版には小冊子がつくのですが、そこでは鬼の花嫁である柚子が入学してくることに戦々恐々とする教師たちのお話を書いています。

最新刊となる7巻では「このキャラでいこう」って富樫先生とも相談して内容を決めました。


富樫:ちょっと打ち合わせが必要なネタだったんですよね。


クレハ:そうなんです。だから「ここをこういう風に書きたいんですけど」ってお伝えして。


富樫:「じゃあこうしておきます!」みたいな感じで決まっていきました。

原作小説、コミック、描き下ろし小説と、見どころ満載の『鬼花』。新しいあやかしとその花嫁、陰陽師などの新キャラクターも続々と登場。ファンには嬉しいグッズも展開されている。

息がピッタリなクレハ先生と富樫先生ですが、小説家と漫画家、それぞれ逆のお仕事をしてみたいと思いますか?


クレハ:もちろんです。もともと絵を描くのが好きだったので描けるなら描きたいのですが、画力が小学生……幼稚園児で止まっておりまして(笑)。

ちょうど電子書籍の方で小説3巻から新しく登場するキャラクターの絵を描いて説明しようとしたら、とんでもないことになり……。ですが、富樫先生がちゃんと意図をくみ取ってくださって、しっかりとしたキャラにしてくれました。


富樫:小説家に憧れはありますけど、やはり漫画家なので、絵とセットで物語が浮かんでくるんですよね。小説家の方は文章だけですべてを表現していてすごいなと思います。語彙力がほしいです。


クレハ:私は画力がほしいです……!


ちなみに先生たちは小説や漫画のアイデアはどんな時に浮かんできますか?


クレハ:締め切りが迫って切羽詰まっているときに限って浮かんだりします。あとはリラックスしているときですね。「あっ」って感じで。


富樫:私はお風呂の中で浮かびますね。物語の構成などで悩んでいるときに、とりあえずお風呂に入ると、いいアイデアを思いつくことがあります。脳がリラックスするんですかね?


クレハ:なんでしょうかね! 周りに雑音もないしすごくリラックスして、ボーッとしているときに……


富樫:そう、ぼーっとしてる時に浮かびますよね。「あっ、そうか!」みたいな感じで。


クレハ:でもお風呂の中だと書くものがないので、湯気でガラスが曇っているところに書いたりします。


富樫:私も書きます!ちょっとメモ……って感覚で。


お風呂でとったメモ書きは無事でしたか?


クレハ:書くことでひとまず頭の中に残しておくって感じなので大丈夫です!


富樫:そうそう、書いてインプットされるみたいな!


先生たちの意外な共通点が見つかりましたね!


クレハ:そうですよね!


富樫:同じですね!


クレハ:まさかの!


大いに盛り上がったところですが、そろそろ最後の質問です。今回の「立読み歓迎! コラボプロジェクト」をきっかけに、これから初めて『鬼の花嫁』を読む方に向けて、メッセージをお願いします。


クレハ:まど上ポスターを見ていただいたのも何かのご縁だと思うので、まずは最初の1ページ、読んでいただけたら嬉しいなと思います。


富樫:ときめきがあり、ハラハラもあり、とても素敵な物語です。読んだあとに、ほっと幸せな気持ちになれる作品だなと思っています。ぜひ、たくさんの皆さまに読んでいただけたら嬉しいです。

富樫じゅん先生、クレハ先生、ありがとうございました!

メトロアドエージェンシー × コミックシーモア × スターツ出版

「立読み歓迎!コラボプロジェクト」


東京メトロ全線のまど上ポスターにて、スターツ出版の人気コミック作品の中から毎月1作品、4か月連続で計4作品を紹介。

「メトロアドエージェンシー × コミックシーモア × スターツ出版」のコラボ期間は終了しました。

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