編集H：第2回のモキュメンタリーホラー小説コンテストについて、コワゾーさんは今回の審査やコワゾー賞をどのような位置づけで捉えていらっしゃいますか？

コワゾー：モキュメンタリー小説という形式自体は、前回の梨さんの解説や第1回の応募作品群によって、かなり多様な形で表現されたと感じています。なので第2回、そしてコワゾー賞としては、あくまで「ホラーそのものの表現」にフォーカスしたいなと。単なる形式や手法の面白さだけではなく、「こんな恐怖描写があったのか！」と驚かされるような、従来のホラー表現を超える作品に出会えることを楽しみにしています。

編集H：では今回は、モキュメンタリーという“枠”よりも、その中に描かれる“恐怖”の質に注目したい、というイメージでしょうか？

コワゾー：はい。モキュメント形式はあくまで手段であって、主役は恐怖の表現だと思っています。読んだあとに形式の巧さよりも、「あの恐怖が忘れられない」「あの感覚が残っている」と記憶に残るような作品に出会えたら理想ですね。

編集H：今回のコワゾー賞の選考では、具体的にどのようなホラー表現に注目していらっしゃいますか？

コワゾー：モキュメント形式を使いながらも、「新しいホラー表現」に挑戦している作品を見てみたいと思っています。ホラー映画で言うと、たとえば…以下のような類型がありますが、それだけでは従来の作品と差別化できないため、それらを超越したものや、すべてが複合して“お祭り”のようになっている作品にも期待しています。

• Jホラーのような不気味な雰囲気や、じわじわと迫る心理的恐怖
• 主人公や読者に直接迫るようなダイレクトな恐怖
• スケール感や遊び心のあるエンタメ性の強い恐怖

編集H：その中で、今回特に大事にしたい軸はどこにありますか？

コワゾー：モキュメンタリーという形式そのものの面白さが前面に出ている作品よりも、あくまで「ホラー表現の面白さ」が際立っている作品を評価したい、というのが今回の大きな軸です。形式に頼らず、恐怖そのものの完成度で勝負している作品にこそ出会いたいですね。

編集H：今回、舞台設定については「現代劇」が望ましいというお話もありました。その理由を教えてください。

コワゾー：あまりに時代や場所が極端な設定だと、どうしても読者との距離が生まれてしまうと思うんです。現代を舞台にすることで、読み手が自分の生活と地続きの恐怖として想起しやすくなる。その感覚は、モキュメンタリーホラーとの相性としてもかなり重要だと考えています。

編集H：一方で、映像化を意識しすぎて極端に低予算な設定に寄せる必要はないともおっしゃっていましたが、そのあたりについても詳しく教えてください。

コワゾー：そうですね。確かにモキュメンタリーホラーは映像化とも相性がいいですが、だからといって「低予算で撮れそうかどうか」を最優先に考えて物語を小さくしてしまう必要はないと思っています。作家さんには、映像化を見据えつつも、発想やスケールを窮屈にせず、自由に恐怖表現に挑戦してほしいです。