プロフィール

花岡 華恋
【会員番号】1268388

作品一覧

夕方五時、誰もいない団地で

総文字数/4,369

ホラー2ページ

第2回モキュメンタリーホラー小説コンテストエントリー中
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夕方五時。 帰宅を急ぐ人々の影が伸びる時間。 それは、今日がまだ終わっていないはずの時刻だ。 地平線しかない場所に、ぽつんと建つ集合住宅がある。 周囲に道も、隣家もない。ただ、同じ形の部屋が静かに並んでいる。 そこに迷い込む人々を、あなたは“案内人”として迎え入れる。 案内する先は、一人につき一つの部屋。 室内には、その人の記憶が形を持って残されている。 通勤鞄、割れたスマートフォン、止まった時計。 けれど、それらに触れることはできない。 なぜなら、彼らはすでに仏様だからだ。 忘れてしまった死の記憶を思い出せたとき、 部屋には天へと続く道標が現れる。 だが、思い出せなければ―― その部屋から、二度と出ることはできない。 案内人の仕事は淡々としている。 説明し、扉を開け、見送る。 そこに疑問を抱く必要はないはずだった。 しかし、いくつもの部屋を巡るうち、 あなたは違和感に気づき始める。 なぜ夕方は終わらないのか。 なぜ部屋の中に、見覚えのある物があるのか。 そして、なぜ自分自身の記憶だけが、どこにも見当たらないのか。 これは、死後の世界の物語ではない。 「帰る途中だった日常」が、静かに形を変えていく物語だ。 フィクションと現実の境界は、気づかぬうちに溶け、 ページを閉じたあとも、夕方五時はあなたの中に残り続ける。 その集合住宅は、今日も地平線の中に立っている。 次に迷い込むのは、あなたかもしれない。
色づく一手

総文字数/12,445

青春・恋愛5ページ

第63回キャラクター短編小説コンテスト「青春ボーイズライフ」エントリー中
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灰色に沈んでいた放課後。平凡な毎日を送る高校生、春原湊。将棋は好きだけれど、本気で勝つことにはいつも躊躇していた――誰かを傷つけたくない、そんな弱さのせいで、心の針は止まったまま。 そんなある日、転校生・朝比奈陽真が将棋部に現れる。明るく大胆、勝負事が大好きな陽真は、湊の世界に雷のように入り込む。最初は戸惑う湊だったが、いつしか陽真の熱に引き寄せられ、色のなかった日常が少しずつ彩り始める。 部長や後輩、そして自由奔放なOBたち――さまざまな人々に囲まれながら、湊は初めて「本気で勝ちたい」と思う。大会での悔しさ、合宿での笑い、そして親友のような相棒との絆。全ての経験が、湊を少しずつ成長させていく。 やがて迎える決勝戦、そして何十年も離れていた父・春原遼との親子戦。盤上に刻まれる一手一手が、過去のわだかまりを解き、湊の心を色づかせる――友情と成長、親子の絆、そして青春の輝きが交差する物語。 「本気で向き合うこと」――その一手が、人生を変える。
オードパルファムの香りで

総文字数/3,566

BL2ページ

第3回青春BL小説コンテストエントリー中
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女装が趣味の悠は、女の姿でいると心が落ち着く。 ある日、初めて試したパパ活で出会ったのは、まさかの同じ大学の人気者・蓮。 絶対にバレないと思っていたのに、翌日には大学であっさり正体を見抜かれてしまう。 「誰にも言わない。代わりに、俺のお願いだけ聞け」──そう言う蓮の瞳は、どこか優しくて強くて。 女装の姿も、素の自分も、悠にとって蓮は特別。 そして蓮にとっても、悠は唯一無二の存在。 学食でのすれ違いや、カフェでの偶然の出会い、囁くような独占欲…… 小さな距離の変化が、二人の心を少しずつ近づけていく。 甘くて切ない、でも温かい恋。 香水の香りに導かれた運命の恋人同士の物語、ここからはじまる——
窓辺に残る鈴の音

総文字数/23,209

ヒューマンドラマ11ページ

第62回キャラクター短編小説コンテスト「心癒される、猫小説」エントリー中
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――その鈴の音は、今も胸の奥で響いている。 疲れた心に、静かな祈りを届けるヒーリングファンタジー。 ある冬の夜、会社帰りの悠真は、路地裏で傷だらけの白猫を拾う。 その猫は、冷たい風の中で小さく震え、かすかな息をしていた。 放っておけず自宅に連れ帰った彼は、毛布に包み、温かなミルクを差し出す。 翌朝――猫が言葉を発した。 「助けてくれて、ありがとう。わたしは“神”なのだよ」 信じられない光景に戸惑いながらも、悠真は猫を「ミコト」と名付け、一緒に暮らし始める。 コーヒーをこぼせば不思議とこぼれず、眠れない夜には胸の上で喉を鳴らし、心を落ち着かせてくれる。 そんな小さな奇跡の日々の中で、悠真の凍っていた心が少しずつ溶けていく。 かつて神であったミコトは、祈りを失い、力をなくしてこの世に落ちてきた。 人の「願い」や「想い」を忘れた時代で、もう一度人の温もりを知りたい―― その願いが、ひとりの孤独な男との出会いを導いた。 やがて二人の間に芽生えたのは、言葉では言い表せないほどの絆。 しかし、穏やかな日々の中で、ミコトの身体が徐々に透け始める。 「もう、祈りの力が足りないんだ」 悠真は祈る。「消えないでくれ」と。 その祈りが、ミコトの最後の光を優しく包み込む――。 翌朝、窓辺には一筋の白い毛と、小さな鈴が残されていた。 それは確かに、彼が“もう一度生きよう”と決めた証だった。 悲しみの先にあるのは、静かな希望。 失ったものの中にこそ、寄り添うぬくもりがある。 『窓辺に残る鈴の音』は、 喪失と再生、そして「祈り」をめぐる優しい奇跡の物語です。 心が疲れたとき、 どうかこの物語のページを開いてください。 どんな夜にも寄り添ってくれる―― あなたの傍にも、きっと鈴の音が聴こえるはずです。

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