君はSSS賞

 ——しょぼん。
 それは対象外ってことですか……?

 たこ焼きの下準備が終わり、焼くところからはリビングですることになった。僕たちはローテーブルの前に横並びで座った。

「あ、あれつけとく?」
 と世那くんが、僕が大好きな漫画のアニメ版をテレビで流してくれた。

 たこ焼きを焼きながら、出会った日に引いた一番くじの話をした。

「一番くじって、何賞まであるんすか?」
「商品によって違いますよ。A賞とかB賞とか、ラストワン賞とか……」
「へえ、いろいろあるんすね。じゃあ、SSS(トリプルエス)賞とかもあるんすか?」
「えっ、SSS賞?」
「いや、なんとなく。Sより上があったら、めっちゃすごそうじゃないすか」
「確かに……! あったら絶対、すごい景品ですよね!」

 世那くんは面白そうに笑っていた。

 そのあとは、アニメを見ながら作品についての話が弾んだ。

「俺、この作品の好きなところ、はちゃめちゃなのに急にセリフで心震わしてくるところなんすよね……」
「分かります分かります! 哲学的っていうのかな……?」

 世那くんが指をぱちんと鳴らして、
「そう! 哲学! 哲学っすね」と言った。

「いつか、哲学系の般教取ろうかな……」と独り言っぽく言ったのを、僕は聞き逃さなかった。

「今更なんですけど、世那くんって大学生ですか?」
「あはは! 何も言ってなかったもんね。そう、大学一年生です」

 そう言って、通っている大学と学部を教えてくれた。ここから一駅先にある、名門私立大学だった。
 大学一年生ってことは、二つ上か。そんなに年は離れてないな。オッケーオッケー。……って、何がだ。

「僕は見ての通り高校生で、次三年生になります」
「あー、じゃあ来年受験っすね。志望校とか決まってる?」
「一応決まってます。でも、学部で迷ってて、文系なんだけど、何に興味あるんだろうって……」
「難しいよね。……あ! さっき言ってた、哲学とか!」

 面白いかもって思った。世那くんに言われたからではなく、本を読むの好きだし、なぜ? って疑問を持つと突き詰めて考えるタイプだから。あとで、ちゃんと考えようと思った。

「アリかもしれないです」
「っしゃ! 先輩風吹かせられた〜」
 と世那くんは悪戯っぽく笑った。

 世那くんと作ったたこ焼きは、今までで一番美味しかった。修学旅行で大阪に行ったときに食べたのより美味しかった。 
 好きな人と食べるご飯って、最高。

 つい笑顔になってもぐもぐと頬張っていると、世那くんが笑いながらこう言った。

「りっちゃんって本当、弟みたいで可愛い」

 ……弟⁈⁈

 少し考えたあと、恋愛のシャッターを下ろされたような気がして悲しくなってしまった。
 どこで間違っちゃったの……。セーブポイントに戻りたい。
 それからは、たこ焼きの味もしなくなった。あんなに美味しかったと思ったのに。

 食べられるだけ食べたけど、さすがに百個は無理だった。残りは半分ずつ分け、半分は世那くんの家の冷凍ストックに、もう半分は僕の家へのお土産にすることになった。

 アイスを食べるお腹の余裕はなかった。

「今日は誘ってくれてありがとうございました。美味しかったです」
「こちらこそ、来てくれてありがとうね。……あ、アイス、置いとくからまた食べにおいで」

 弟みたいと言われて落ち込んでいたはずなのに、また来ていいんだと思うと嬉しくなった。

 まさに、感情ジェットコースターだ。