俺は少し躊躇ったのち、かすかに首を上下に振った。
「……少しだけなら、いいよ」
「……おまえ、ちょろすぎて心配になるわ」
佑士だって、自分から言い出したくせに、どこか困ったような顔をする。
確かに俺はちょろいのかもしれない。流されている自覚はある。
でも、佑士に触られるのは嫌じゃない、どころか、触ってほしい気すらする。さっき俺から振りほどいてしまった手も、離れた頭も、体温も、本当は名残惜しかった。
ベッドの上、二人、向かい合う形で座り直す。
握りしめた手元に落としていた視線を、佑士へ合わせる。
こちらから腕を伸ばす間も与えられず、大きな体の内に強く抱き込まれていた。
「玲……!」
耳元から流し込まれる、熱を帯びた俺の名前。誰も俺をこんな風には呼ばない。佑士以外は。
宝物を呼ぶように、甘く。
宝物を隠すように、情熱的に。
俺に触れるのは、佑士だけだ。
激しく脈打つ心臓の音は、佑士のもの。同じくらいひどく高鳴る鼓動は、俺のものだ。たくましい両腕の中へと閉じ込めるみたいに抱きしめられて、俺は佑士の胸に顔をうずめる。
佑士の上半身が一瞬震え、さらに力がこめられた。
離れたくないな、と思う。
離したくないな、と思う。
もう誤魔化せない。
——これは、恋だ。
「佑士、おれ——」
意を決して口を開いた瞬間、階下から物音がした。
俺は言葉を切り、佑士に抱かれたまま身じろぎをする。
「……親父たちが帰ってきたみたいだな。いいところだったのに、くそ」
悪態をつきながらも、俺を見つめる佑士の眼差しは柔らかい。
急に気恥ずかしさが襲ってきて、俺は力を抜いてくれた佑士の腕から、もそもそと抜け出た。
「帰ってくるの、やけに早いね。まだ六時過ぎなのに」
「夕飯食ってくるって言ってたのにな。まあ、明日は月曜だし、疲れたんじゃね?」
そんな会話を小声で交わしていたら、階段を上がってくる足音がする。二人分だ。
俺は慌ててベッドから飛び下り、床に座る。
棚にあった雑誌を一冊ひったくって佑士がベッドに寝転がった時、ノックもなく部屋のドアが開いた。
もつれた足取りで飛び込んできたのは母さんだった。
後ろに義父さんの姿もある。苦笑いを浮かべていると、余計に佑士の面影があるな。よく似てる親子だ。佑士も将来こんな雰囲気のイケオジになるのかな。
「佑士くん、電気が点いてるから部屋にいると思って……あら、玲も一緒なの? なら丁度いいわね」
母さんはかなり酔っているみたいだった。あまり酒は飲まない方なのに、珍しい。
そして空気を読まない酔っ払いは、上機嫌で俺たちの上に爆弾を投げ落とした。
「あのね、私たち、入籍しました!」
「入籍してきました」
「玲も養子縁組するから、これで四人、名実ともに家族よ! 宮之原しず香と宮之原玲、うん、家族、家族、これで本当の家族ね!」
「……少しだけなら、いいよ」
「……おまえ、ちょろすぎて心配になるわ」
佑士だって、自分から言い出したくせに、どこか困ったような顔をする。
確かに俺はちょろいのかもしれない。流されている自覚はある。
でも、佑士に触られるのは嫌じゃない、どころか、触ってほしい気すらする。さっき俺から振りほどいてしまった手も、離れた頭も、体温も、本当は名残惜しかった。
ベッドの上、二人、向かい合う形で座り直す。
握りしめた手元に落としていた視線を、佑士へ合わせる。
こちらから腕を伸ばす間も与えられず、大きな体の内に強く抱き込まれていた。
「玲……!」
耳元から流し込まれる、熱を帯びた俺の名前。誰も俺をこんな風には呼ばない。佑士以外は。
宝物を呼ぶように、甘く。
宝物を隠すように、情熱的に。
俺に触れるのは、佑士だけだ。
激しく脈打つ心臓の音は、佑士のもの。同じくらいひどく高鳴る鼓動は、俺のものだ。たくましい両腕の中へと閉じ込めるみたいに抱きしめられて、俺は佑士の胸に顔をうずめる。
佑士の上半身が一瞬震え、さらに力がこめられた。
離れたくないな、と思う。
離したくないな、と思う。
もう誤魔化せない。
——これは、恋だ。
「佑士、おれ——」
意を決して口を開いた瞬間、階下から物音がした。
俺は言葉を切り、佑士に抱かれたまま身じろぎをする。
「……親父たちが帰ってきたみたいだな。いいところだったのに、くそ」
悪態をつきながらも、俺を見つめる佑士の眼差しは柔らかい。
急に気恥ずかしさが襲ってきて、俺は力を抜いてくれた佑士の腕から、もそもそと抜け出た。
「帰ってくるの、やけに早いね。まだ六時過ぎなのに」
「夕飯食ってくるって言ってたのにな。まあ、明日は月曜だし、疲れたんじゃね?」
そんな会話を小声で交わしていたら、階段を上がってくる足音がする。二人分だ。
俺は慌ててベッドから飛び下り、床に座る。
棚にあった雑誌を一冊ひったくって佑士がベッドに寝転がった時、ノックもなく部屋のドアが開いた。
もつれた足取りで飛び込んできたのは母さんだった。
後ろに義父さんの姿もある。苦笑いを浮かべていると、余計に佑士の面影があるな。よく似てる親子だ。佑士も将来こんな雰囲気のイケオジになるのかな。
「佑士くん、電気が点いてるから部屋にいると思って……あら、玲も一緒なの? なら丁度いいわね」
母さんはかなり酔っているみたいだった。あまり酒は飲まない方なのに、珍しい。
そして空気を読まない酔っ払いは、上機嫌で俺たちの上に爆弾を投げ落とした。
「あのね、私たち、入籍しました!」
「入籍してきました」
「玲も養子縁組するから、これで四人、名実ともに家族よ! 宮之原しず香と宮之原玲、うん、家族、家族、これで本当の家族ね!」
