いつも塩対応だった義弟の溺愛スイッチを押してしまったようです

「あのさ。俺の、どこがそんなにいいの」

 この際だから、思い切って突っ込んで聞いてみよう。
 二番目の母親の件でトラウマを抱えてた佑士に、俺の言動は多少の影響を与えたかもしれない。それでも、佑士がここまで尽くしてくれるような良さが、俺にあるとはとても思えなかった。
 
「好きになったきっかけは、たぶんさっき話した理由だけど、どこが、って改めて答えんのは難しいな」
 
 あの日いきなり降ってきたっつうか、前から抱えてた気持ちに突然気づいた感じだしな、と佑士は呟く。

「気がついたら全部好きだった、じゃ駄目か。あと、おまえ、可愛いし」
「か、可愛い?」
「可愛い。っつうか、綺麗だと思ってる」
「綺麗……?」

 もしかして佑士、視力が物っ凄く悪いんだろうか。
 心の底から懐疑的な声を出した俺のそぶりを感じ取ったのか、佑士は膝頭に左頬を当てたまま、斜めに俺を仰いだ。

「あ、見た目の話じゃなくてな」
「おい」
「俺にとっては見た目も可愛いけど、客観的には判断できねえ。だから、見た目の話じゃねえの」
「……あのなあ」
「おまえ、俺のじゃねえのは分かってるけど、俺の一番大切なものだから。大事にしてるものは綺麗に見えるだろ。そういうことだよ」
 
 いや、キャラ変が凄まじいって。
 返す言葉も見当たらず、俺は佑士を見下ろす。
 黒目のはっきりした佑士の瞳の奥に、間抜け面をした俺が映り込んでいる。あ、佑士、やっぱり睫毛長いな。綺麗っていう形容詞が似合うのは断然、佑士の方だ。中身だって、俺は綺麗とは程遠い。なのに佑士はそう思ってくれるんだ。
 ふつふつと頬に熱が集まってくる。
 最近ずっと、こんな風に心をかき乱されてばかりだ。

「なんで俺なんか……」
「俺の大切なものを『なんか』って言うな。玲でも許さねえ」
「キャラ違いすぎなんだけど」
「別に何も変わってねえよ。隠さなくなっただけだっつうの」
 
 穏やかに見せかけて実は高温の熾火に似た、佑士の熱に当てられてしまう。
 佑士はゆっくりと身を起こし、体ごと俺に向き直った。

「もう少し、触ってもいいか——?」