最寄り駅にある激安の殿堂ストアで、気になったお菓子や飲み物を買い込み、家に戻る。
まだ本調子じゃないだろうって、佑士が荷物を全部持ってくれた。
ダイニングテーブルの上へ袋を置き、リビングの壁にかかった時計を見上げると、十五時を少し回っていた。
「動画観ながらだらだらすんのもいいかと思ったけど、いったん部屋で休むか。やっぱ顔色良くねえし、無理しない方がいい」
そう気遣ってくれたけど、俺は正直、物足りなかったし、きっと佑士も同じだと思う。だって、デートの筈だったんだから。
……本音を言えば、もう少し一緒にいたかった。
だから、先に自分の部屋へあがろうとしていた佑士を、思わず呼び止めてしまっていた。
「佑士の部屋のテレビって、リビングのより大きいよね」
「ん? ああ。ゲームするにも映像観るにも迫力ある方がいいから、買い替える時にバイト代も足して、でかいのにしたな」
「あのさ、そっちでさ、映画とか……観てもいい、かな?」
「そっちって……俺の、部屋か?」
すでに階段の踊り場にいた佑士が、あっという間に降りてきた。
廊下で二人、向かい合う。
「ええと、そうなんだけど、無理にとは言わないから」
「あー……」
首の後ろに手をやりながら、困ったように唸られたから、俺は慌てて提案を引っ込める。
「部屋片づけたりとか、はいられるのに抵抗あるとか、色々あるよな。いきなりごめん」
「そうじゃねえ。いや、片付ける必要は確かにあんだけど、そうじゃなくて」
佑士はいきなりその場へしゃがみ込み、両手で顔を覆った。
「おまえが俺の部屋に来たら、『家じゃ兄弟をやる』って約束、破るかもしんねえ」
——約束すんじゃなかった、と、低い囁きが確かに聞こえた。
やばい、ちょっと佑士が可愛い。
Rさんショックも、映画館でのトラウマ発露も、佑士といれば些細なことに思えてしまう。何とかなるんじゃないかって。佑士が俺を好きだって言ってくれて、俺も——まだ見極め中だけど、ちゃんと佑士が好きだって確信出来たなら、それだけで全部全部乗り越えられるんじゃないかって。
俺も彼の前に屈んで、目線を合わせる。
「俺さ、佑士が『家では兄弟やらないと、気を抜ける場所がなくなるだろ』って言ってくれたこと、すっげえ嬉しかった」
「くっそ、自分で自分の首絞めたわ」
「じゃあ、前言撤回する?」
「しねえよ」
「……佑士、優しいな」
「好きな奴に優しくすんのは普通だろ」
うん、当たり前にそう言えちゃう佑士が、俺には眩しいよ。
脳裏をよぎった実の父親の影を追い払って、いまだ自分の表情を隠したままの佑士の手の甲にそっと触れた。ゆるゆると手が下ろされて、どこか拗ねたような、きまり悪げな面持ちが現れる。
俺は佑士の手を取って立ち上がらせた。
「なに観ようかなあ。気になる作品、あったりする?」
「俺は別に何でもいい」
素っ気なく答えてから、訂正するみたいに小さく首を振る。
「ちげえな。おまえと観るなら、何でもいい」
駄目だな、これは沼だ。
抜け出せなくなりそうな底なし沼。
まだ本調子じゃないだろうって、佑士が荷物を全部持ってくれた。
ダイニングテーブルの上へ袋を置き、リビングの壁にかかった時計を見上げると、十五時を少し回っていた。
「動画観ながらだらだらすんのもいいかと思ったけど、いったん部屋で休むか。やっぱ顔色良くねえし、無理しない方がいい」
そう気遣ってくれたけど、俺は正直、物足りなかったし、きっと佑士も同じだと思う。だって、デートの筈だったんだから。
……本音を言えば、もう少し一緒にいたかった。
だから、先に自分の部屋へあがろうとしていた佑士を、思わず呼び止めてしまっていた。
「佑士の部屋のテレビって、リビングのより大きいよね」
「ん? ああ。ゲームするにも映像観るにも迫力ある方がいいから、買い替える時にバイト代も足して、でかいのにしたな」
「あのさ、そっちでさ、映画とか……観てもいい、かな?」
「そっちって……俺の、部屋か?」
すでに階段の踊り場にいた佑士が、あっという間に降りてきた。
廊下で二人、向かい合う。
「ええと、そうなんだけど、無理にとは言わないから」
「あー……」
首の後ろに手をやりながら、困ったように唸られたから、俺は慌てて提案を引っ込める。
「部屋片づけたりとか、はいられるのに抵抗あるとか、色々あるよな。いきなりごめん」
「そうじゃねえ。いや、片付ける必要は確かにあんだけど、そうじゃなくて」
佑士はいきなりその場へしゃがみ込み、両手で顔を覆った。
「おまえが俺の部屋に来たら、『家じゃ兄弟をやる』って約束、破るかもしんねえ」
——約束すんじゃなかった、と、低い囁きが確かに聞こえた。
やばい、ちょっと佑士が可愛い。
Rさんショックも、映画館でのトラウマ発露も、佑士といれば些細なことに思えてしまう。何とかなるんじゃないかって。佑士が俺を好きだって言ってくれて、俺も——まだ見極め中だけど、ちゃんと佑士が好きだって確信出来たなら、それだけで全部全部乗り越えられるんじゃないかって。
俺も彼の前に屈んで、目線を合わせる。
「俺さ、佑士が『家では兄弟やらないと、気を抜ける場所がなくなるだろ』って言ってくれたこと、すっげえ嬉しかった」
「くっそ、自分で自分の首絞めたわ」
「じゃあ、前言撤回する?」
「しねえよ」
「……佑士、優しいな」
「好きな奴に優しくすんのは普通だろ」
うん、当たり前にそう言えちゃう佑士が、俺には眩しいよ。
脳裏をよぎった実の父親の影を追い払って、いまだ自分の表情を隠したままの佑士の手の甲にそっと触れた。ゆるゆると手が下ろされて、どこか拗ねたような、きまり悪げな面持ちが現れる。
俺は佑士の手を取って立ち上がらせた。
「なに観ようかなあ。気になる作品、あったりする?」
「俺は別に何でもいい」
素っ気なく答えてから、訂正するみたいに小さく首を振る。
「ちげえな。おまえと観るなら、何でもいい」
駄目だな、これは沼だ。
抜け出せなくなりそうな底なし沼。
