「もう、その体じゃ無理だろ。諦めて降参しろ。」
「いや、まだだ!これなら躱せまい!」
リシュエルは剣を握り直し、よろよろと立ち上がる。そして再び魔法弾を飛ばす。
それは、最初のよりも大きく不規則な動きな上に、数が多く速度も速い。
ルアンは、軌道が読めないそれに舌打ちをする。
雷撃波で消滅させていくが、全て撃破すること出来ずに、右上腕に直撃した。
「ぐっ!(なんつー重ぬさだ。まるで腕に岩が乗っているようだ)」
ルアンの右腕は、魔法弾によるダメージを受けた。更には鉛を乗せられたような重みがのし掛かり、腕を上げることが出来ない。
「くっ!」
リシュエルは、次々と魔法弾を連発する。
ルアンは、それを再び片手で撃破していく。
「どうした、まだまだいくぞ!」
リシュエルは更に魔法弾を創りだし、次々とルアンに放つ。
ルアンは、止まることなく襲いかかる魔法弾を左手のみを使い、雷撃波で再び撃破していく。
彼が魔法弾を撃破しているうちに、リシュエルはルアンに間合いを詰めた。そして、
「さっきのお返しだ!」
リシュエルは、自分の足に三十キロの重さを付与する。そして、その足でルアンのがら空きになった腹部に蹴りを入れる。
ルアンの腹部に、リシュエルの重量が付与された足がめり込む。
「っ!ゲホッゴホッゲホッ!ぐぅ…!」
突然の腹部への息が詰まる程の衝撃と痛みがルアンを襲う。彼はガクッと膝をつき、腹部をおさえながら、咳き込む。
「ふん、いい気味だな。ルアン・ヴァイオレン。所詮、貴様はそんな程度か。よくそれでセリスを守り抜く等と言えたものだな」
「うるせぇ」
リシュエルは、そんなルアンを見下し嘲笑う。そして、注射器のような物を内ポケットから取り出し、不敵な笑みを浮かべる。
ルアンは悪態をつきながら、リシュエルを睨む。
「これはな、特定の人物への好意やプラスな感情を消せる代物だ。逆惚れ薬とでも言おうか」
「そんなものまで持ってやがるのか。どこまでも卑怯な奴だな。(秘策とやらは、アレのことだったのか。迂闊に近づかなくて良かったな)」
得意顔で話すリシュエルに、ルアンは苦しげに毒づく。
「何とでも言えば良い。まぁ元々は地位と金目当てに寄ってくる煩わしい女達に打つ為の物だったがな。
これで貴様の中から、セリスへの特別な感情を消してやろう。そうすれば邪魔物は居なくなる。」
注射器を持ってルアンに近づくリシュエル。ルアンは、何とか立ち上がると近づけまいと天雷球を撃つ。だがしかし、リシュエルは易々と、天雷球を斬り伏せながら距離を詰める。
(くそっ!)
いよいよ、ルアンの目の前まで来ると、彼の腕に注射器を当て刺した。
「っ!」
「どうだ!これで貴様の中からセリスへの特別な感情や想いは消えたはずだ!貴様、今セリスの事をどう思う。」
「……どうやら、俺には効かねぇようだな?ソレ。アイツに対する気持ちは何一つ変わってねぇ」
「なん、だと!?何故だ。今まで効かない奴なんて居なかったと言うのに!」
嬉々として揚々と言うリシュエルだが、返ってきた言葉に驚き狼狽した。
「薬の強さより、俺のアイツへの想いの方が強かったみたいだな」
口角を上げ、そう言いながらもルアンは内心ホッとしていた。
彼女への気持ちは、薬で消せる程度の物ではないと思っていた。ただ、それでも薬の強さも解らない以上、拭いきれない不安があった。だが、それも杞憂に終わったようだ。
それは、見ていたセリスやガレン、エミリア達も同じようで、ホッと息をついた。
ルアンは風魔法で空気を圧縮した球を出すと、眼の前にいるリシュエルに放つ。
「くらえ!」
「ぐああああ!」
至近距離で受けたリシュエルは、呻き声を上げ再び吹き飛んだ。立ち上がろうとするが、ダメージが大きく動けないようである。悔しそうに顔を歪めている。
対するルアンも、魔力の使いすぎで荒い息だ。
ルアンは、リシュエルに歩いて近づくと、先程と同じ質問をする。
「そういえば、聞いてなかったなかったな……。セリスに拘る理由を」
「それは…」
「それは、何だ?…くだらねぇ理由なら、もう一発食らわすぞ」
「……彼女のあの綺麗な黒い瞳に惹かれた。あれほどに澄んでいるのような異国の花のような瞳をオレは他に知らない。だから、自分の物にしたくなった」
「………」
リシュエルはルアンに恫喝され渋々と答えた。その返答にガレンとエミリアは、(そんな事で!?)と内心呆れた。
確かにセリスの瞳は綺麗だが、ここまでして欲しがる物なのかと不思議に思う。
だが、ルアンは思う所があるのか何も言わない。いや、言えないのだ。彼自身、セリスと初めて会った時に、同じように彼女の瞳に惹かれていたから。
少し共感さえしてしまう。
「何にしろ、テメェの負けだ。リシュエル。セリスとテメェの婚約を取り消せ。そんで、セリスの事をキッパリ諦めるんだな」
「くっ!オレが負けるとは」
ルアンがリシュエルに告げる。
リシュエルは、負けた事に納得がいかないのか悪態をついた。
こうして、セリスを巡るルアンとリシュエルの戦いが終わった。
リシュエルが魔法を解け、ルアンの腕の腕も重みが無くなり元に戻った。
ルアンは見守っていたセリス、ガレン、エミリアの三人の所にフラフラと歩き出す。
彼が三人の所に着くと、ガレンが興奮気味に話しかけた。
「しかしスゲェな、お前。王族に勝っちまうとは」
「ギリギリだったけどな」
「それでも凄いわよ!」
ルアンをガレンが褒めて、グレースも、それに同意するように言う。
セリスは、そんな三人のやり取り微笑んで見ていた。すると、ルアンがセリスの前で跪いた。
「セリス、待たせたな。…って、何泣いてんだよ」
「だって、ルアンがまた1人で無茶するし…。こんなにボロボロだし。…心配したんだから!」
「……悪かったよ。だから、泣くな。お前の゙涙には、どうにも弱いんだ」
目に涙を溜めて怒るセリスに、ルアンは困ったように苦笑した。そして、彼女の涙を親指で優しく拭う。
「……お腹、大丈夫?」
「あぁ…平気だ。心配ない」
「なら良いんだけど…」
心配そうに腹部を見て聞いてくるセリスに、ルアンは頷いて言う。
二人で話していると、グレースがゴホンと咳払いをした。
「二人で話てる所悪いけど、そろそろ戻ろう」
「そうだな」
エミリアの提案にガレンが賛成すると、ルアンとセリスも従い、三人は医務室に行くことになった。
「セリス、歩けるか?」
「…ちょっと無理みたい」
「そうか…。ガレン、悪いがセリスを頼んだ。」
「おう、任せとけ!ほら、セリス乗れ!ルアンよりは落ち着かないかもしれねぇけど、落としはしねぇよ」
「うん、ありがとう」
本当は、自分が負ぶって連れていきたいルアンだが、打撃を受けた腹部の ダメージが強く、一人で歩くのが精一杯だ。
なので、仕方なくガレンに頼むことにした。
ガレンは、ルアンに任され快く引き受けると、しゃがみ込んでセリスに背中を向ける。セリスが彼の背に乗ると、四人は医務室へと歩き出した。
前を歩くガレンとグレースに、少し遅れるように、ルアンがゆっくりと歩いている。
医務室には先程の医務官が戻ってきていた。ルアンとセリスの二人はに診察を受ける。すると、セリスは右足首が案の定悪化し腫れが酷くなっていた。
そうしてセリスが終わり、ルアンが診てもらう番に。
彼は、肩と腕の傷の手当てをしてもらった後、ベッドに仰向けになるように言われた。
ルアンは、言われた通りに仰向けになると、中腹部を触診をされる。
医務官が臍より少し下を押した。
「っ…!」
その瞬間、ルアンは腹部に感じた強い痛みに苦悶の表情を浮かべた。
医務官が、服を捲り腹部を露出させると、中腹部全体が赤紫色に変色していた。
その後も診察は続き、部位が部位だけに念入りに調べられた。結果、酷い打撲とのことだった。
診察が終わると、まだやることがあるとアイシングを断り、とりあえず湿布だけを貼ってもらった。これで手当ては終わった。
ルアンは起き上がろうとする。
「……くぅ……!」
だが、腹筋に力を入れるとズキンと痛みが走った。それでも何とか痛みに耐えて起き上がる。
「おい、無理するなよ」
「無理じゃない」
「はいはい。そーですか。で?やることってなんだよ」
「あの王子の所に行って婚約届を破かせる。多分、アイツのことだから用意してあるだろうしな」
「その必要はありません」
ルアンは、ガレンの手を借り起き上がる。
そして歩き出そうとしていた。その時、ふいに声をかけられた。声のする方へ振り向くと、そこにはレイリアが居た。
「いや、まだだ!これなら躱せまい!」
リシュエルは剣を握り直し、よろよろと立ち上がる。そして再び魔法弾を飛ばす。
それは、最初のよりも大きく不規則な動きな上に、数が多く速度も速い。
ルアンは、軌道が読めないそれに舌打ちをする。
雷撃波で消滅させていくが、全て撃破すること出来ずに、右上腕に直撃した。
「ぐっ!(なんつー重ぬさだ。まるで腕に岩が乗っているようだ)」
ルアンの右腕は、魔法弾によるダメージを受けた。更には鉛を乗せられたような重みがのし掛かり、腕を上げることが出来ない。
「くっ!」
リシュエルは、次々と魔法弾を連発する。
ルアンは、それを再び片手で撃破していく。
「どうした、まだまだいくぞ!」
リシュエルは更に魔法弾を創りだし、次々とルアンに放つ。
ルアンは、止まることなく襲いかかる魔法弾を左手のみを使い、雷撃波で再び撃破していく。
彼が魔法弾を撃破しているうちに、リシュエルはルアンに間合いを詰めた。そして、
「さっきのお返しだ!」
リシュエルは、自分の足に三十キロの重さを付与する。そして、その足でルアンのがら空きになった腹部に蹴りを入れる。
ルアンの腹部に、リシュエルの重量が付与された足がめり込む。
「っ!ゲホッゴホッゲホッ!ぐぅ…!」
突然の腹部への息が詰まる程の衝撃と痛みがルアンを襲う。彼はガクッと膝をつき、腹部をおさえながら、咳き込む。
「ふん、いい気味だな。ルアン・ヴァイオレン。所詮、貴様はそんな程度か。よくそれでセリスを守り抜く等と言えたものだな」
「うるせぇ」
リシュエルは、そんなルアンを見下し嘲笑う。そして、注射器のような物を内ポケットから取り出し、不敵な笑みを浮かべる。
ルアンは悪態をつきながら、リシュエルを睨む。
「これはな、特定の人物への好意やプラスな感情を消せる代物だ。逆惚れ薬とでも言おうか」
「そんなものまで持ってやがるのか。どこまでも卑怯な奴だな。(秘策とやらは、アレのことだったのか。迂闊に近づかなくて良かったな)」
得意顔で話すリシュエルに、ルアンは苦しげに毒づく。
「何とでも言えば良い。まぁ元々は地位と金目当てに寄ってくる煩わしい女達に打つ為の物だったがな。
これで貴様の中から、セリスへの特別な感情を消してやろう。そうすれば邪魔物は居なくなる。」
注射器を持ってルアンに近づくリシュエル。ルアンは、何とか立ち上がると近づけまいと天雷球を撃つ。だがしかし、リシュエルは易々と、天雷球を斬り伏せながら距離を詰める。
(くそっ!)
いよいよ、ルアンの目の前まで来ると、彼の腕に注射器を当て刺した。
「っ!」
「どうだ!これで貴様の中からセリスへの特別な感情や想いは消えたはずだ!貴様、今セリスの事をどう思う。」
「……どうやら、俺には効かねぇようだな?ソレ。アイツに対する気持ちは何一つ変わってねぇ」
「なん、だと!?何故だ。今まで効かない奴なんて居なかったと言うのに!」
嬉々として揚々と言うリシュエルだが、返ってきた言葉に驚き狼狽した。
「薬の強さより、俺のアイツへの想いの方が強かったみたいだな」
口角を上げ、そう言いながらもルアンは内心ホッとしていた。
彼女への気持ちは、薬で消せる程度の物ではないと思っていた。ただ、それでも薬の強さも解らない以上、拭いきれない不安があった。だが、それも杞憂に終わったようだ。
それは、見ていたセリスやガレン、エミリア達も同じようで、ホッと息をついた。
ルアンは風魔法で空気を圧縮した球を出すと、眼の前にいるリシュエルに放つ。
「くらえ!」
「ぐああああ!」
至近距離で受けたリシュエルは、呻き声を上げ再び吹き飛んだ。立ち上がろうとするが、ダメージが大きく動けないようである。悔しそうに顔を歪めている。
対するルアンも、魔力の使いすぎで荒い息だ。
ルアンは、リシュエルに歩いて近づくと、先程と同じ質問をする。
「そういえば、聞いてなかったなかったな……。セリスに拘る理由を」
「それは…」
「それは、何だ?…くだらねぇ理由なら、もう一発食らわすぞ」
「……彼女のあの綺麗な黒い瞳に惹かれた。あれほどに澄んでいるのような異国の花のような瞳をオレは他に知らない。だから、自分の物にしたくなった」
「………」
リシュエルはルアンに恫喝され渋々と答えた。その返答にガレンとエミリアは、(そんな事で!?)と内心呆れた。
確かにセリスの瞳は綺麗だが、ここまでして欲しがる物なのかと不思議に思う。
だが、ルアンは思う所があるのか何も言わない。いや、言えないのだ。彼自身、セリスと初めて会った時に、同じように彼女の瞳に惹かれていたから。
少し共感さえしてしまう。
「何にしろ、テメェの負けだ。リシュエル。セリスとテメェの婚約を取り消せ。そんで、セリスの事をキッパリ諦めるんだな」
「くっ!オレが負けるとは」
ルアンがリシュエルに告げる。
リシュエルは、負けた事に納得がいかないのか悪態をついた。
こうして、セリスを巡るルアンとリシュエルの戦いが終わった。
リシュエルが魔法を解け、ルアンの腕の腕も重みが無くなり元に戻った。
ルアンは見守っていたセリス、ガレン、エミリアの三人の所にフラフラと歩き出す。
彼が三人の所に着くと、ガレンが興奮気味に話しかけた。
「しかしスゲェな、お前。王族に勝っちまうとは」
「ギリギリだったけどな」
「それでも凄いわよ!」
ルアンをガレンが褒めて、グレースも、それに同意するように言う。
セリスは、そんな三人のやり取り微笑んで見ていた。すると、ルアンがセリスの前で跪いた。
「セリス、待たせたな。…って、何泣いてんだよ」
「だって、ルアンがまた1人で無茶するし…。こんなにボロボロだし。…心配したんだから!」
「……悪かったよ。だから、泣くな。お前の゙涙には、どうにも弱いんだ」
目に涙を溜めて怒るセリスに、ルアンは困ったように苦笑した。そして、彼女の涙を親指で優しく拭う。
「……お腹、大丈夫?」
「あぁ…平気だ。心配ない」
「なら良いんだけど…」
心配そうに腹部を見て聞いてくるセリスに、ルアンは頷いて言う。
二人で話していると、グレースがゴホンと咳払いをした。
「二人で話てる所悪いけど、そろそろ戻ろう」
「そうだな」
エミリアの提案にガレンが賛成すると、ルアンとセリスも従い、三人は医務室に行くことになった。
「セリス、歩けるか?」
「…ちょっと無理みたい」
「そうか…。ガレン、悪いがセリスを頼んだ。」
「おう、任せとけ!ほら、セリス乗れ!ルアンよりは落ち着かないかもしれねぇけど、落としはしねぇよ」
「うん、ありがとう」
本当は、自分が負ぶって連れていきたいルアンだが、打撃を受けた腹部の ダメージが強く、一人で歩くのが精一杯だ。
なので、仕方なくガレンに頼むことにした。
ガレンは、ルアンに任され快く引き受けると、しゃがみ込んでセリスに背中を向ける。セリスが彼の背に乗ると、四人は医務室へと歩き出した。
前を歩くガレンとグレースに、少し遅れるように、ルアンがゆっくりと歩いている。
医務室には先程の医務官が戻ってきていた。ルアンとセリスの二人はに診察を受ける。すると、セリスは右足首が案の定悪化し腫れが酷くなっていた。
そうしてセリスが終わり、ルアンが診てもらう番に。
彼は、肩と腕の傷の手当てをしてもらった後、ベッドに仰向けになるように言われた。
ルアンは、言われた通りに仰向けになると、中腹部を触診をされる。
医務官が臍より少し下を押した。
「っ…!」
その瞬間、ルアンは腹部に感じた強い痛みに苦悶の表情を浮かべた。
医務官が、服を捲り腹部を露出させると、中腹部全体が赤紫色に変色していた。
その後も診察は続き、部位が部位だけに念入りに調べられた。結果、酷い打撲とのことだった。
診察が終わると、まだやることがあるとアイシングを断り、とりあえず湿布だけを貼ってもらった。これで手当ては終わった。
ルアンは起き上がろうとする。
「……くぅ……!」
だが、腹筋に力を入れるとズキンと痛みが走った。それでも何とか痛みに耐えて起き上がる。
「おい、無理するなよ」
「無理じゃない」
「はいはい。そーですか。で?やることってなんだよ」
「あの王子の所に行って婚約届を破かせる。多分、アイツのことだから用意してあるだろうしな」
「その必要はありません」
ルアンは、ガレンの手を借り起き上がる。
そして歩き出そうとしていた。その時、ふいに声をかけられた。声のする方へ振り向くと、そこにはレイリアが居た。


