【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

三人がそんな話をしていると、メルトビアの兵士が、慌ただしく血相を変えて応接間に入っていった。

どうやら報告するような何かが起きたのだろう。

応接間から出てきたメルトビア兵士に、ガレンが何があったのか尋ねる。

「おい、何があった?」
「それが…、ルアン殿がリシュエル様をいきなり殴り飛ばしまして…」

それを聞いてガレンとグレースはと内心溜め息ついた。
自分達が、休憩から戻った時の怒りように、いつかはやるんじゃないかと思っていたのだ。
逆にセリスは、顔を青ざめさせて本当にやっちゃったの!?という信じられないような表情をしている。
そんな三人にメルトビア兵士は続ける。

「それだけではなく、お二人が戦闘を始め…」
「「「戦闘!?」」」

戦闘という言葉に三人は驚愕する。
セリスは、居ても立っても居られなくなり、兵士に訓練所の場所を聞く。
そして、足を怪我しているのも忘れて、勢いよく駆け出した。
その後をガレンとエミリアも追いかける。

(もし、またあの魔法を使われたら…。いや、きっと使うはず。だとしたらルアンは不利だ。何か対策でもあるのかな。)

セリスは走りながら、先ほど目の当たりにしたリシュエルの魔法を思い出し、ルアンの身を案じる。

そうこうしている内に三人は城から少し離れた訓練所に着いた。彼らは扉の前に立ち止まる。
そこでは、外からでも分かるような轟音がしている。

「おいおい、もう始まってるのか。急ぐぞ!」

ガレンの言葉を合図に三人は訓練所に入った。
訓練所の中には、ルアンとリシュエルだけで、他の兵士達は居ないようだ。
おそらく、出ていくように促したのだろう。

「ルアン!」

セリスが名前を呼ぶと、ルアンは振り向き瞠目する。

「セリス!?お前なんで……。足の怪我は。…まぁいい、そこで見てろよ」

そして彼は、こう言うと再びリシュエルの方を向き、見据える。
殴られて吹き飛んだ、リシュエルは立ち上がりながらルアンを睨む。

「貴様!よくも!」
「今のはセリスを脅した分だ。
本番はこれからだ。セリスをかけて今ここで俺と勝負しろ、クソ王子」

(((ついにクソ王子って言った)))

ガレン、エミリア、セリスの三人は、内心同じ事を思った。

「貴様がオレに勝てるとは思わないが、良いだろう。受けて立ってやる。」
「言ってろ。俺が勝ってテメェとセリスの婚約を取り消させてやる。そして、キッパリと諦めさせてやる」

ルアンとリシュエルが対峙する。

先に仕掛けたのはリシュエルだった。

彼は、「手加減はしない!」と言うと、灰色の小さな魔法弾を複数作る。そして、ルアンに向けて撃った。その魔法弾は、高速でルアンに向かって多方向から飛んでいく。

「この魔法弾(ウエイトバレッド)は当たると重さを与えるようになっている。せいぜい頑張って躱すんだな。」

「(チッ。そんな使い方も出来るのか。だが、当たらなければ良いだけだ。)」

四方八方から向かってくる魔法弾を、ルアンは雷撃波(サンダーショック)で全て撃破する。
そして、天雷球(サンダーボール)を連射する。すると、リシュエルは、天雷球を鋭い剣捌きで次々と叩き斬っていく。

斬られた天雷球(サンダーボール)は、真っ二つになり、小さい音を立てて消滅する。

「(流石は王族といったところか)」

ルアンは、リシュエルの剣捌きに心の中で関心する。

「オレ相手に魔法しか使えない貴様など相手ではな
「まだ分からないだろ。油断してると痛い目みるぞ!」

リシュエルはルアンを軽侮した。
そんなリシュエルに、ルアンは至って冷静に返すと、今度は掌から雷撃波(サンダーショック)を放った。
放たれた雷撃波(サンダーショック)は一直線にリシュエルに向かう。

「くっ!」

リシュエルは、それに気付くと咄嗟に飛び退いだ。だがしかし押され始め、防ぎきれないと悟ると、後ろに飛び退いた。
それによって、リシュエルは雷撃波(サンダーショック)から逃れる事に成功する。

両者は再び距離を取ると睨み合う。

ルアンとリシュエルの戦いを、セリス、ガレン、エミリアは離れた場所から見守っている。

「ほぼ互角か…?」
「今の所はね。でも、魔力は王族の方が多いし、長引くほどルアンは不利になるよ」
「だよな……」
「………(ルアンなら大丈夫)」

二人の戦いを見ながらガレンとエミリアが話す中で、セリスはルアンを信じ黙って見守っていた。

そんなセリスの心境を察したのか、ガレンとエミリアが、彼女に声をかける。

「心配すんな、アイツなら負けねぇよ。」
「そうだよ!何せ、セリスがかかってるんだから、負けるはずない!それより、足大丈夫?」
「心配はしてないよ。ルアンの事、信じてるし。足?」
「そう、右足首捻挫してるんでしょ?」
「……そういえば、そうだった。忘れてた。」

アハハと笑ってごまかすセリスだが、指摘されたことで、忘れていた痛みが戻ってきて顔を強張らせる。
しかも、走ったせいで悪化させたのか、先程よりも強く痛むようで、右足首を手で押さえる。

「あ、いったたたっ!ものすごく痛い!」
「あれだけ走ったんだから当たり前でしょ。床に座ってなよ。」
「だってルアンの事が気がかりで、それどころじゃなかったし。うん。そうさせてもらう。」

エミリアは呆れながら溜め息つくと、座るように促した。セリスはボソボソと言い訳をしながら素直にその場に横座りした。


一方、ルアンとリシュエルは互いに睨み合ったまま牽制し合っている。
そんな中、ルアンが口火を切った。

「おい、一つ聞かせろ」
「なんだ…」
「なぜ、そこまでセリスに固執する?アイツは普通の魔法士で、普通の女だぞ。王族の人間が欲しがるような奴じゃない」
「そんな物は関係ない。欲しいと思った物は手に入れる」
「だから、それが何でだって聞いてんだよ!」

ルアンは、そう言いながら風魔法で手風を纏わせて、振り払うような動作をする。すると風の刃がリシュエルに向かって飛んでいった。

ここから二人の戦いは白熱していく。


「なぜ貴様に教えてやらねばならんのだ!」
「テメェが、俺からセリスを奪おうとするからだろうが!」


リシュエルは風の刃を躱す。
しかし全てを避けきれず、顔に切り傷がつき、服も所々切れている。その間にルアンは、天雷球(サンダーボール)を無数に出出現させ、リシュエルに向けて一斉に放った。
全てがリシュエルに命中したかと思われたが、そこに彼の姿は既になかった。

「なっ!?居ない!?」
「遅い!」

彼は、いつの間にかルアンの目前にまで間合いを詰めていたのだ。
驚くルアンに、リシュエルは剣を振るうが、間一髪の所で、それを横に躱した。しかし、剣先が右肩に掠り血が滲む。

隙を与えないように連続で剣を振るうリシュエル。
ルアンは、それを避けながら、手を帯電させる。そして渾身の力を込めて、その手でリシュエルにボディーブローを入れる。

「ぐぅ!」

リシュエルは、衝撃で後方に吹き飛び壁に激突した。

「かはっ!」

まともに攻撃をくらったリシュエルは、口から血を吐き出し、動かない。ルアンはその隙に距離を取り息を整える。