応接間から真っ直ぐ廊下を行き、突き当たりの階段を登り、また廊下を渡り歩いて行くと、ある一室の前でセリスが立ち止まった。
「ここか?」
「うん…」
緊張した面持ちでセリスは、リシュエルの部屋をノックした後、「セリスです」と名乗った。すると、中から「入ってくれ」と返事が来た。
セリスは、ルアンを一瞥すると、「失礼します。」と中に入った。その後ろにはルアンが続く。
リシュエルは執務をしていたのか、机に向き合っていた顔を上げて扉の方を見た。
「待ってたよ、セリス。話は出来たのか?…何で貴様がいる。」
「あ、あの!彼がリシュエル様に用があるみたいでして」
セリスの横にいるルアンを、睨むように見ながら言うリシュエルに、セリスが慌てて説明する。片や睨まれているルアンは平然とした様子だ。
「まぁ良い。セリス、そんな男の傍にいないで、こちらへおいで」
「で、でも…」
「君はオレの婚約者だろ?」
「…は、はい」
躊躇うセリスに、リシュエルは優しくも
やや強めに言う。それを受けて、セリスは渋々リシュエルの方へ行こうとする。が、ルアンが彼女の腕を掴み阻止した。
「貴様、どういうつもりだ」
「解りきってることだろ。セリスに近づくな」
「それは此方の台詞だ。その手を離せ」
「嫌だと言ったら?」
ルアンは不敵に笑い挑発するように言った。彼の態度に、リシュエルはこめかみに青筋を浮かべる。そして腰から剣を抜き、ルアンに向ける。
「その手、余程要らないらしいな?良いだろう、切り離してやろう」
「!ルアン!離して!
リシュエル様、私まだ婚約者です!彼に手は出さないで下さい!」
リシュエルの言葉にセリスは動揺し、ルアンに懇願する。しかしルアンは離そうとはせず、むしろ握る力を強くした。
リシュエルはセリスに言われ、剣を鞘に戻すと、椅子に荒々しく座り直した。
「で?話とは何だ。俺は忙しいんだ、早く済ませろ」
リシュエルは苛立っているようで、貧乏ゆすりをしながらルアンを促す。
「なら、単刀直入に言う。セリスとの婚約を取り消せ。今すぐにだ」
「何を言い出すかと思えば。もう決まったことだ。今更取り消しなど出来るわけ」
「出来なくないだろ?そもそも、アンタの父親である国王にすら話が通ってないんじゃねぇか?どうせ口約束だろ?」
「口約束ではない。ちゃんと婚約届もここにある。彼女のサインだってしてある」
ルアンの指摘にリシュエルは、婚約届を出して見せる。
「それも国王のサインが必要なはず。だだから、まだ正式に決まったわけじゃない。アンタが取り消せば済む話なんだよ」
「だとしても、なぜ貴様にそんなことを言われなきゃならない。これはオレとセリスの問題だ。貴様には関係ない事だろう」
「大アリだな」
「何だと?」
ルアンは、睨みを効かせながらリシュエルに話を続ける。
「さっきも言ったがセリスは俺の恋人だ。その恋人が、気に食わない奴と婚約させられようとしてんだ。それも無理矢理な。黙ってられるワケねぇだろ」
「無理矢理ではない。穏便な話し合いの結果だ」
「穏便?ふざけるなよ、俺は全部聞いたんだよ!アンタがしたことをな!」
堪忍袋の緒が切れたルアンは、今までは抑えていた怒りを、此処に来て爆発させる。そして、リシュエルの胸ぐらを掴み凄い剣幕で言う。
するとリシュエルも負けじと怒声を上げる。
「貴様っ!王族のオレに向かって、こんなとこしてただで済むと思ってるのか!!」
「あぁ分かってるよ!けどな、俺はセリスを守る為なら何だってする!
それに、何が王族だ!脅して無理矢理婚約に合意させる事が王族のすることか!」
「うるさい!黙れ!」
リシュエルはルアンを突飛ばし、掌をルアンに向けた。
ルアンは、不意を突かれたこともあり、よろけて体勢を崩す。立て直そうとするも、何故か体が動かない。
「テメェ、何しやがった!」
そんなルアンに向かって、リシュエルは、再び剣を抜き振りかぶる。
「何って魔法を使っただけだが?貴様、今ここで殺す為にな。」
「止めてください!リシュエル様
!」
「そこをどけ」
「出来ません!」
セリスは、リシュエルとルアンの間に入ると、剣を突き立てるリシュエルに対して両手を広げた。
だがしかし、リシュエルは剣を下げることなしない。
「退けと言ってるだろ!」
「きゃっ!」
リシュエルは、強引にセリスを押しどけた。すると、セリスは体を突かれた勢いで倒れ込んでしまう。
「!セリス!」
ルアンは倒れ込んだセリスを見た後、体の自由が戻り、急いで彼女に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
セリスは、痛みを我慢して弱々しく笑う。
そんな彼女の姿に、ルアンは悔しさで強く拳を握る。
そして背後を振り返り、剣呑な双眸で睨み付け、地を這うような低い声で言う。
「……テメェ、許さねぇ」
「ふん。オレは悪くない。急に割って入った彼女が悪いんだ」
リシュエルは、座り込んでいるセリスを見下ろしながら言う。
「何だと!?誰のせいで、セリスがこうなったと思ってやがる!」
「誰のせい?それこそ、貴様のせいだろう。貴様がオレに楯突くからこうなるんだ。貴様が大人しく身を引けば、セリスに被害は出なかったと思うが?」
「テメェ…!」
開き直った態度に、ルアンはカッと頭に血が昇り、リシュエルに殴りかかろうとする。だがしかし、後ろからセリスが引き留める。
「ルアン!ダメ!止めて!」
「止めるなセリス!コイツだけは、殴らねぇと腹の虫が収まらねぇ!」
「私は大丈夫だから!ね!」
「チッ…」
セリスに止められ、ルアンは動きを止めて握っていた拳をほどいた。
「テメェの相手は後だ。今はセリスの手当てをさせろ」
「それは同意だが…、オレに指図をするな!」
「うるせぇ、良いから早く医務室の場所を教えろ。」
喚くリシュエルに、ルアンは怒気を込めて一喝する。すると、リシュエルは渋々、医務室の場所を教えた。
「ここか?」
「うん…」
緊張した面持ちでセリスは、リシュエルの部屋をノックした後、「セリスです」と名乗った。すると、中から「入ってくれ」と返事が来た。
セリスは、ルアンを一瞥すると、「失礼します。」と中に入った。その後ろにはルアンが続く。
リシュエルは執務をしていたのか、机に向き合っていた顔を上げて扉の方を見た。
「待ってたよ、セリス。話は出来たのか?…何で貴様がいる。」
「あ、あの!彼がリシュエル様に用があるみたいでして」
セリスの横にいるルアンを、睨むように見ながら言うリシュエルに、セリスが慌てて説明する。片や睨まれているルアンは平然とした様子だ。
「まぁ良い。セリス、そんな男の傍にいないで、こちらへおいで」
「で、でも…」
「君はオレの婚約者だろ?」
「…は、はい」
躊躇うセリスに、リシュエルは優しくも
やや強めに言う。それを受けて、セリスは渋々リシュエルの方へ行こうとする。が、ルアンが彼女の腕を掴み阻止した。
「貴様、どういうつもりだ」
「解りきってることだろ。セリスに近づくな」
「それは此方の台詞だ。その手を離せ」
「嫌だと言ったら?」
ルアンは不敵に笑い挑発するように言った。彼の態度に、リシュエルはこめかみに青筋を浮かべる。そして腰から剣を抜き、ルアンに向ける。
「その手、余程要らないらしいな?良いだろう、切り離してやろう」
「!ルアン!離して!
リシュエル様、私まだ婚約者です!彼に手は出さないで下さい!」
リシュエルの言葉にセリスは動揺し、ルアンに懇願する。しかしルアンは離そうとはせず、むしろ握る力を強くした。
リシュエルはセリスに言われ、剣を鞘に戻すと、椅子に荒々しく座り直した。
「で?話とは何だ。俺は忙しいんだ、早く済ませろ」
リシュエルは苛立っているようで、貧乏ゆすりをしながらルアンを促す。
「なら、単刀直入に言う。セリスとの婚約を取り消せ。今すぐにだ」
「何を言い出すかと思えば。もう決まったことだ。今更取り消しなど出来るわけ」
「出来なくないだろ?そもそも、アンタの父親である国王にすら話が通ってないんじゃねぇか?どうせ口約束だろ?」
「口約束ではない。ちゃんと婚約届もここにある。彼女のサインだってしてある」
ルアンの指摘にリシュエルは、婚約届を出して見せる。
「それも国王のサインが必要なはず。だだから、まだ正式に決まったわけじゃない。アンタが取り消せば済む話なんだよ」
「だとしても、なぜ貴様にそんなことを言われなきゃならない。これはオレとセリスの問題だ。貴様には関係ない事だろう」
「大アリだな」
「何だと?」
ルアンは、睨みを効かせながらリシュエルに話を続ける。
「さっきも言ったがセリスは俺の恋人だ。その恋人が、気に食わない奴と婚約させられようとしてんだ。それも無理矢理な。黙ってられるワケねぇだろ」
「無理矢理ではない。穏便な話し合いの結果だ」
「穏便?ふざけるなよ、俺は全部聞いたんだよ!アンタがしたことをな!」
堪忍袋の緒が切れたルアンは、今までは抑えていた怒りを、此処に来て爆発させる。そして、リシュエルの胸ぐらを掴み凄い剣幕で言う。
するとリシュエルも負けじと怒声を上げる。
「貴様っ!王族のオレに向かって、こんなとこしてただで済むと思ってるのか!!」
「あぁ分かってるよ!けどな、俺はセリスを守る為なら何だってする!
それに、何が王族だ!脅して無理矢理婚約に合意させる事が王族のすることか!」
「うるさい!黙れ!」
リシュエルはルアンを突飛ばし、掌をルアンに向けた。
ルアンは、不意を突かれたこともあり、よろけて体勢を崩す。立て直そうとするも、何故か体が動かない。
「テメェ、何しやがった!」
そんなルアンに向かって、リシュエルは、再び剣を抜き振りかぶる。
「何って魔法を使っただけだが?貴様、今ここで殺す為にな。」
「止めてください!リシュエル様
!」
「そこをどけ」
「出来ません!」
セリスは、リシュエルとルアンの間に入ると、剣を突き立てるリシュエルに対して両手を広げた。
だがしかし、リシュエルは剣を下げることなしない。
「退けと言ってるだろ!」
「きゃっ!」
リシュエルは、強引にセリスを押しどけた。すると、セリスは体を突かれた勢いで倒れ込んでしまう。
「!セリス!」
ルアンは倒れ込んだセリスを見た後、体の自由が戻り、急いで彼女に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
セリスは、痛みを我慢して弱々しく笑う。
そんな彼女の姿に、ルアンは悔しさで強く拳を握る。
そして背後を振り返り、剣呑な双眸で睨み付け、地を這うような低い声で言う。
「……テメェ、許さねぇ」
「ふん。オレは悪くない。急に割って入った彼女が悪いんだ」
リシュエルは、座り込んでいるセリスを見下ろしながら言う。
「何だと!?誰のせいで、セリスがこうなったと思ってやがる!」
「誰のせい?それこそ、貴様のせいだろう。貴様がオレに楯突くからこうなるんだ。貴様が大人しく身を引けば、セリスに被害は出なかったと思うが?」
「テメェ…!」
開き直った態度に、ルアンはカッと頭に血が昇り、リシュエルに殴りかかろうとする。だがしかし、後ろからセリスが引き留める。
「ルアン!ダメ!止めて!」
「止めるなセリス!コイツだけは、殴らねぇと腹の虫が収まらねぇ!」
「私は大丈夫だから!ね!」
「チッ…」
セリスに止められ、ルアンは動きを止めて握っていた拳をほどいた。
「テメェの相手は後だ。今はセリスの手当てをさせろ」
「それは同意だが…、オレに指図をするな!」
「うるせぇ、良いから早く医務室の場所を教えろ。」
喚くリシュエルに、ルアンは怒気を込めて一喝する。すると、リシュエルは渋々、医務室の場所を教えた。


