【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

「理由は?」
「それは…」
「俺の事が嫌いにでもなったか?」
「違う!そんな訳ない!ルアンの事嫌いになるわけない!」

口ごもるセリスにルアンは自嘲気味に言う。するとセリスは、首をブンブンと横に振りながら否定した。

突然の大声に、周りの客が何事だと二人の方を見る。中には別れ話か?などとコソコソ話し声もしている。

セリスはそれに気が付くと、恥ずかしそうに椅子に座り直した。

「じゃあ、何でだ?」
「……、私と居るとルアンに無理ばかりさせちゃうから…」

そう言うセリスの声は若干震えている。
ルアンはセリスの返答に溜め息をついた。

「あのな、俺は好きでやってるんだよ。お前が気にすることじゃないって言ってるだろ。そんな理由なら別れないからな。(まぁ、何を言われても別れるつもりはないが)」
「………」

再び押し黙るセリスに、ルアンは先程と同じ質問をする。本心かどうかと言う事は、解りきっている為聞かない。

「もう一度聞くぞ、アイツに何を言われた?脅されでもしたんだろ?」

セリスが突然理由もなく、こんな事を言うような性格ではない。だからこそ、他に理由があるのではないか思い、ルアンは問うたのだ。

観念したように、セリスはポツポツと話し出す。

「……、リシュエル様に、婚約してくれないかって…」
「……それで?」
「勿論、お断りしたんだけど…。その婚約受けないと協定解消するとか言われたの」
「あぁ……」

聞く度ルアンは、リシュエルの卑怯さに苛立ちを感じていた。
全くもって、姑息な手段だ。正直、ルアンには国の事わりととどうでも良い。
なぜなら、彼女が宮廷魔法士になるなら、彼女を守る為に自分もこの職につくことを決めたからだ。
故に国にそこまで忠誠はない。

しかしセリスは自分とは違う。国の事を大事に思っている。
そんな彼女の気持ちを考えると、フツフツと怒りが沸いてくる。
ルアンは、今すぐにでもぶん殴りたい衝動を抑え、セリスの話の続きを聞く。

「それも許せなくて反論したら、今度は…。」
「………」
「今度は…。今度は……、ルアンを消すような不穏な事を言ったから…私…」
「……受けたのか?」
「うん。ごめん、ごめんね。」

セリスは小さくコクリと頷くと、何度も謝る。
ルアンは、セリスの話を全て聞き「なるほどな」と納得した。そして、

「お前な、俺が負けるとでも思ったのか?」

と、呆れたように言う。
セリスは涙目になりながら訴える。

「ううん!思ってない!ルアンが強いのは解ってる!でも、でも何か企んでそうな妖しい顔してたから…。万が一を考えると、もう、これしかなくてって…」

最後は消え入りそうな声で言うとセリスは俯いた。
そんなセリスにルアンは諭すように話す。

「いいか?俺はそう簡単には殺られないし、お前を渡すつもりもない。」
「でも…」
「それに、今はガレンもエミリアも居るだろ。どうにかなる。だから、そんなに心配しなくても大丈夫だ」
「うん…」

テーブルから身をのりだし、俯き目に涙を溜めているセリスの頭を撫でる。彼の手の手の温もりに心底安心し、強張っていた体から力が抜けていくのをセリスは感じた。

「大丈夫だから、泣くな」
「うん…。ごめん。もう大丈夫」

セリスは涙を拭い笑ってみせた。
ルアンはそれを見ると、撫でる手を止めた。それから、席に座り直した。

「それにしても、こんなに長く一緒にいるのに、信用されてなかったとは…そっちの方が傷つくぞ」
「!違うよ!信じてないわけじゃないよ!」
「冗談だ、冗談。俺の事を思ってのことだってのは…。それより、早く食べて戻るぞ」

二人はすっかり冷めてしまったパスタを食べ終えると、会計を済ませメルトビア城に戻る道を歩いていく。


道中、二人は終始無言だ。
だが、ルアンの頭の中は何か良い方法がないか、忙しなく働いている。

(さて、どうするか…。)

セリスに婚約はやっぱり無理と断れるかどうか。言い出せはするだろうが、また何かしらで脅されたら…NOとは言えないだろう。
それどころか今度は逆上してセリスに何するか解らない。
秘策があるとも言ってた。それが自分を始末する事だとは思えない。何か他に隠しているはず。
セリスに言わせるのは得策じゃないか。
俺が言うか?でも居場所分からねぇしな。

そんな事を思っていると、気が付けばメルトビア城に着いていた。

城の中に入ると、二人は先にガレンとエミリアが居る応接間の前に行った。
遅いと怒られた二人だが、事のあらましを話したら納得したようだった。

グレースに至っては、「何それ!許せない!私がなぐるりに行く!」などと激怒していたが。


「まぁ、そういうわけだ。俺は少しリシュエル王子の部屋に行こうと思う。セリス、アイツの部屋分かるんだよな?」
「え?う、うん。分かるけど…。ダメだよ!何されるか分かんないだよ!」
「大丈夫だ。あの王子も、お前の前じゃ手荒な事はしてこないだろ。」
「そうかもしれないけど…」
「だから、セリス。リシュエル王子の部屋まで案内してくれないか?」
「……わかった。」

そう懇願(こんがん)されてしまっては何も言えず、セリスは不本意ながら了承した。
ガレンとグレースは、そんな二人を優しい目で見ていた。

話が決まった二人は、グレースとガレンに応接間の前で待機を頼み、リシュエルの部屋へと向かった。