セリスとリシュエルが話をしている頃。
一人残されたルアンは応接間の扉の前で焦慮を感じていた。
(遅くないか…。いつまで話してるんだ。セリスに限って無駄話をするような事はないだろうし…。まさか、あの王子に何かされてるんじゃないだろうな…)
セリスが他の男と二人きりでいる事に、気が気ではない様子だ。その顔は険しく、指をトントンとさせている。
(あの野郎、もしセリスに何かしたら王子だろうと、ぶん殴ってやる!)
ルアンが一人物騒な事を思っていると、ガレンとエミリアが休憩から戻ってきた。
ガレンは、ルアンの形相の悪さにぎょっとする。
「ルアン、待たせた。って機嫌悪いな、おい。顔こぇーよ。」
「そう言えば、セリスはどうしたの?」
「セリスなら、リシュエル王子の所だ。話があるとかで連れていかれた」
エミリアが、セリスが居ない事を疑問に思い、ルアンに問う。すると、ルアンは不機嫌なまま顰めっ面で答えた。
「えぇ!そうなの!?大丈夫かな?男と部屋で二人きりとか…」
「セリスもそれなりに強いとは言え、相手は王子だしなぁ。」
「あー、くそ!やっぱり行かせるんじゃなかった!」
心配そうに話すエミリアとガレンの言葉に、ルアンの不安は増すばかりだ。
彼は激しく後悔の念に駆られ爪が食い込むほど、手を強く握った。
そんな様子のルアンに、ガレンは言う。
「そんなに後悔するなら、何で行かせたんだよ」
「俺は一応止めようとした。だが、セリスが相手は王族だとか、大丈夫だと言うから…」
「あー、なるほど。それでお前が渋々折れたのか」
「……あぁ」
ルアンは苦々しい顔で頷いた。
そんなルアンにエミリアは提案をする。
「ねぇ、ルアン、探しに行ってきなよ。」
「そうしたいのは山々だが、あの王子の部屋を知らないし、すれ違っても困るからな。」
本当は今すぐにでも探しに行きたいが、生憎と二人の居場所が分からない。探しに出て、すれ違いでもしたら逆に時間がかかってしまう。
このまま、此処で待っていた方が確実だし早いだろう。そう思い、ルアンはエミリアの申し出をやんわり断った。
そこへ、リシュエルとの話を終わらせたセリスが小走りで戻ってきた。
一見怪我などはなく、何事なく戻ってきたルアンはホッと胸を撫で下ろす。
「ごめん!話が長引いちゃって!」
「おー、遅かったな、セリス」
「あー、うん。何か話すこといっぱいあったみたいで」
「でも、何もなかったみたいで良かったよ!」
が、ガレンとエミリアと話しているのを見たルアンは、セリスの様子がいつもと違う事に気が付いた。
(何かあったな…)
いつもの様に、明るく振る舞ってはいるが、どことなく暗い。
そんな彼女の様子に、ルアンはおそらく何か言われたのだろうと推測し、リシュエルへの怒りを再発させた。
何があったのか聞きたいルアンだが、
今聞いたところで、セリスが答えないことは解っている。よってルアンは、ひとまず黙っていることにした。後で聞き出す事にして。
「じゃあ俺とセリスは休憩に行く」
「おー。行ってこい行ってこい」
「ごゆっくりー!」
ごゆっくりって何だ、遊びじゃないんだぞ。と心の中で思いながらルアンはセリスと手を繋いで、城下町にある飲食店へと向かう。
しばらく歩き、二人が入った飲食店は、若い層に人気のあるパスタ店だった。
内装は、お洒落で明るい雰囲気だ。
店内は昼過ぎと言うこともあり、客の数は少ない。
二人は店に入ると、奥のテラス席へとついた。そこには休憩場所として作られているのか、観葉植物で周りが上手く隠れているため死角になっている部分がある。
他の人に聞かれたくない話をするなら絶好の場所だ。
二人は向かい合うように座ると、まずは
メニュー表を開き料理を選ぶ。
「セリス、何にする?俺はこのミートソースパスタ」
「あ、じゃあ、カルボナーラで」
「ん、分かった」
ルアンは店員を呼び二人分の料理を頼んだ。店員が去っていった後、ルアンは口火を切った。
「で?何があった?あの野郎に、何を言われたんだ」
「!えっ…あ、えっと…」
急に直球をつかれたセリスは狼狽える。
「あの二人がいる前じゃ話せないと思って、ここまで待ってた…」
「もー、鋭いなぁ」
「何年の付き合いだと思ってるんだよ」
「それもそっか…」
「で?」
「………」
セリスは押し黙り、後ろめたから俯いた。
言えるって思っていた。自分から別れてと。だがしかし、いざとなると言い出せない。
(どうしよう。言わなきゃダメなのに…。言わなきゃ。別れてって。でも…)
そんな彼女を急かせず、じっとルアンは待つ。
(そんなに言いづらいことなのか?)
(それとも俺には言えないことなのか?)
と思いながら、ルアンが待つことしばし。
頼んだ料理が運ばれてきた。しかしセリスは料理に手をつけようとはせず、俯いている。
「…食欲ないのか?」
「……。ううん、大丈夫」
ルアンが心配そうに声をかけると、セリスはそう返したが、依然として食べようとはしない。ルアンは小さく溜め息をつく。
「なら、話すのは後でも良いから、とりあえず食べろ。倒れるから」
「う、うん」
促されるままにセリスは料理を食べたす。その様子を見ながら、ルアンは自分も料理を口に入れ咀嚼する。
(さて、どうしたものか…)
ルアンが料理を食べながら思考を巡らせていると、セリスが一旦箸を置いた。そして、重い口を開いた。
ルアンも食べるのを中止して、テーブルに肘をつき話を聞く体勢に入る。
「あ、あのね!」
「ん?」
「あの…別れて、ほしいの」
「…………」
ルアンの思考が一瞬停止した。
リシュエルに無理難題を言われたのは何となく解ってはいた。
しかし、まさか別れ話をされるとは思っていなかった。
一人残されたルアンは応接間の扉の前で焦慮を感じていた。
(遅くないか…。いつまで話してるんだ。セリスに限って無駄話をするような事はないだろうし…。まさか、あの王子に何かされてるんじゃないだろうな…)
セリスが他の男と二人きりでいる事に、気が気ではない様子だ。その顔は険しく、指をトントンとさせている。
(あの野郎、もしセリスに何かしたら王子だろうと、ぶん殴ってやる!)
ルアンが一人物騒な事を思っていると、ガレンとエミリアが休憩から戻ってきた。
ガレンは、ルアンの形相の悪さにぎょっとする。
「ルアン、待たせた。って機嫌悪いな、おい。顔こぇーよ。」
「そう言えば、セリスはどうしたの?」
「セリスなら、リシュエル王子の所だ。話があるとかで連れていかれた」
エミリアが、セリスが居ない事を疑問に思い、ルアンに問う。すると、ルアンは不機嫌なまま顰めっ面で答えた。
「えぇ!そうなの!?大丈夫かな?男と部屋で二人きりとか…」
「セリスもそれなりに強いとは言え、相手は王子だしなぁ。」
「あー、くそ!やっぱり行かせるんじゃなかった!」
心配そうに話すエミリアとガレンの言葉に、ルアンの不安は増すばかりだ。
彼は激しく後悔の念に駆られ爪が食い込むほど、手を強く握った。
そんな様子のルアンに、ガレンは言う。
「そんなに後悔するなら、何で行かせたんだよ」
「俺は一応止めようとした。だが、セリスが相手は王族だとか、大丈夫だと言うから…」
「あー、なるほど。それでお前が渋々折れたのか」
「……あぁ」
ルアンは苦々しい顔で頷いた。
そんなルアンにエミリアは提案をする。
「ねぇ、ルアン、探しに行ってきなよ。」
「そうしたいのは山々だが、あの王子の部屋を知らないし、すれ違っても困るからな。」
本当は今すぐにでも探しに行きたいが、生憎と二人の居場所が分からない。探しに出て、すれ違いでもしたら逆に時間がかかってしまう。
このまま、此処で待っていた方が確実だし早いだろう。そう思い、ルアンはエミリアの申し出をやんわり断った。
そこへ、リシュエルとの話を終わらせたセリスが小走りで戻ってきた。
一見怪我などはなく、何事なく戻ってきたルアンはホッと胸を撫で下ろす。
「ごめん!話が長引いちゃって!」
「おー、遅かったな、セリス」
「あー、うん。何か話すこといっぱいあったみたいで」
「でも、何もなかったみたいで良かったよ!」
が、ガレンとエミリアと話しているのを見たルアンは、セリスの様子がいつもと違う事に気が付いた。
(何かあったな…)
いつもの様に、明るく振る舞ってはいるが、どことなく暗い。
そんな彼女の様子に、ルアンはおそらく何か言われたのだろうと推測し、リシュエルへの怒りを再発させた。
何があったのか聞きたいルアンだが、
今聞いたところで、セリスが答えないことは解っている。よってルアンは、ひとまず黙っていることにした。後で聞き出す事にして。
「じゃあ俺とセリスは休憩に行く」
「おー。行ってこい行ってこい」
「ごゆっくりー!」
ごゆっくりって何だ、遊びじゃないんだぞ。と心の中で思いながらルアンはセリスと手を繋いで、城下町にある飲食店へと向かう。
しばらく歩き、二人が入った飲食店は、若い層に人気のあるパスタ店だった。
内装は、お洒落で明るい雰囲気だ。
店内は昼過ぎと言うこともあり、客の数は少ない。
二人は店に入ると、奥のテラス席へとついた。そこには休憩場所として作られているのか、観葉植物で周りが上手く隠れているため死角になっている部分がある。
他の人に聞かれたくない話をするなら絶好の場所だ。
二人は向かい合うように座ると、まずは
メニュー表を開き料理を選ぶ。
「セリス、何にする?俺はこのミートソースパスタ」
「あ、じゃあ、カルボナーラで」
「ん、分かった」
ルアンは店員を呼び二人分の料理を頼んだ。店員が去っていった後、ルアンは口火を切った。
「で?何があった?あの野郎に、何を言われたんだ」
「!えっ…あ、えっと…」
急に直球をつかれたセリスは狼狽える。
「あの二人がいる前じゃ話せないと思って、ここまで待ってた…」
「もー、鋭いなぁ」
「何年の付き合いだと思ってるんだよ」
「それもそっか…」
「で?」
「………」
セリスは押し黙り、後ろめたから俯いた。
言えるって思っていた。自分から別れてと。だがしかし、いざとなると言い出せない。
(どうしよう。言わなきゃダメなのに…。言わなきゃ。別れてって。でも…)
そんな彼女を急かせず、じっとルアンは待つ。
(そんなに言いづらいことなのか?)
(それとも俺には言えないことなのか?)
と思いながら、ルアンが待つことしばし。
頼んだ料理が運ばれてきた。しかしセリスは料理に手をつけようとはせず、俯いている。
「…食欲ないのか?」
「……。ううん、大丈夫」
ルアンが心配そうに声をかけると、セリスはそう返したが、依然として食べようとはしない。ルアンは小さく溜め息をつく。
「なら、話すのは後でも良いから、とりあえず食べろ。倒れるから」
「う、うん」
促されるままにセリスは料理を食べたす。その様子を見ながら、ルアンは自分も料理を口に入れ咀嚼する。
(さて、どうしたものか…)
ルアンが料理を食べながら思考を巡らせていると、セリスが一旦箸を置いた。そして、重い口を開いた。
ルアンも食べるのを中止して、テーブルに肘をつき話を聞く体勢に入る。
「あ、あのね!」
「ん?」
「あの…別れて、ほしいの」
「…………」
ルアンの思考が一瞬停止した。
リシュエルに無理難題を言われたのは何となく解ってはいた。
しかし、まさか別れ話をされるとは思っていなかった。


