あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


私の九州大会の4日前。
律のサッカー部は、復帰に向けた重要なフォーメーション確認の紅白戦を迎えていた。

「ねぇねぇ!東郷くんが今日、復帰後初めての本格的なゲームやるんだって!」

部活の昼休憩に入った瞬間、音楽室のあちこちでそんな声が飛び交っていた。
普段はあまり運動部のグラウンドに目を向けない女子部員まで、そわそわと窓の外を気にしている。
律は怪我をする前から、その無愛想なルックスと圧倒的なサッカーセンスで、他部活の女子からも密かに人気だったけど……。
怪我をしてサッカーから少し離れている間に、女子達の、サッカーをする律の姿が見たいという欲が、爆発したみたいだ。

やっぱり、みんな見に行くんだ……。

胸の奥がキュッと小さく軋む。
だけど、私もじっとしては居られなかった。
律から借りていた使い捨てカメラを掴み取ると、私は足早に階段を駆け下り、グラウンドの端にある防球ネットの脇へ向かった。

グラウンドの周囲は、すでに人山ができていた。
他部活の女子たちが大勢集まり、ネット越しに熱い視線を送っている。

「きゃあ!東郷くん、足治ったんだ!」
「うわ……ユニフォーム姿久しぶり。かっこよすぎるんだけど……!」

飛び交う甲高い黄色い声。
胸の奥がモヤモヤと熱い嫉妬で焦げ付いていく。
律はあんなに口が悪いし、素直じゃないし、私にはツンツンしてばかりなのに。
他の女子から見たら、ただの『格好いい東郷くん』なんだ。

だけど——ピッチの中央に立つ律の姿が目に入った瞬間、周囲の喧騒も、自分の嫉妬さえも、一瞬で頭の中から吹き飛んで消えた。

そこには、今まで見たこともないほど、キラキラ輝く律がいた。
あまりにもかっこよくて、息をすることすら忘れてしまう。