「いらっしゃいませ! リアのカード工房、本日開店です!」
なんだかバタバタ状態で準備した気もするけど、いよいよ開店の日を迎えたリアのカードショップはその物珍しさだろうか朝から大勢の人が訪れていた。
「この町で買える品物ばかりですが、持ち運びに便利なようになっております。少々説明がございますので購入された方は順番にお並びください」
なにせ、お店経営は初めてのことである。いくら理屈を知っていても直ぐにその通りに出来るものではない。
「――では、このカードに手を乗せてください。今からあなたにこのカードを復元するひも付をしますので」
一生懸命に説明と会計をこなす私だったが、どうあがいても間に合うはずもなく直ぐに会計の列はパンク状態となった。
「おい。いつまで待たせるつもりだ!? なぜこんなに会計に時間がかかる?」
私の店に並ぶ商品は全てカード化したものだ。だから、売るときに元に戻すかカードのまま持ち帰る人に対しては復元化のひも付をしなければならない。ただ、単に売ってお金を貰えばいい訳ではないのだ。
「すみません。初めての方にはきちんと説明をしなければいけませんのでお時間がかかっております」
「なら、もういい! 別にこの店で買わなくても売っている店に行けばいいだけなんだから。別にこの店でしか買えないわけじゃない」
初めは物珍しげに見てくれていたお客も遅々として進まない会計に一人、また一人と会計の列から離れて店から出て行く。
「申し訳ありません」
怒って出て行く客に対して引き留めることも出来ずにただ謝るしかなかった。
「はあっ 散々だったな……」
バタバタのまま時間だけが過ぎて行き気がつけば初日の閉店時間になっていた。少し時間を過ぎてしまったが、なんとか最後のお客を見送ってからドアに『閉店』の札をかけてから椅子に深々と座りこんで大きなため息を吐いた。
「良く考えれば分かっていたことばかりよね。新しいお店がオープンすれば多くの客が押し寄せるのは何処の世界でも同じことか。こんなことならギルドに依頼して人を派遣して貰えばよかったな」
椅子の背にもたれ掛りながら天井を見上げてそう呟く私。そんなふうに反省をしている時に限って「ぐう」とお腹が鳴ってしまう。
「そういえば忙しすぎてお昼ご飯も食べる暇が無かったんだ」
お腹を摩りながら私は何か食べるものを探すが目に当たるものは無い。強いていえば売り物にしているカード化したものだけだった。
「さすがに売り物を食べちゃあ駄目だよね」
自分の財布からお店の売り上げに入れるなら問題ないとは思うが、初日からそんなことではいつかはどんぶり勘定になってしまうことだろう。そんな未来が見えた私は食べたい気持ちをぐっと堪えて椅子から立ち上がるとふらふらとした足取りで隣の商業ギルドにある食堂へ向かったのだった。
「すみません。肉定食をお願いします」
食堂に辿り着いた私は店員に食事を注文すると明日からのことを考えていた。
「あら、リアさんじゃないの。そういえば、お店。今日開店でしたね。どうでしたか?」
私が食事を待っていると、どこからともなくカロリーナがやってきて目の前の椅子に座る。その顔は私の店がどんな状態だったか分かっていた表情だった。
「おかげさまで大盛況でしたよ」
盛況だったのは本当だ。ただ、人が多すぎて怒らせてしまった客が思いの外多かっただけだ。
「言ってくれれば応援を派遣したのに、どうして言ってくれなかったのですか?」
カロリーナは悪びれもせずにそう言って微笑む。悪魔かこの人。
「ちょっと開店初日のお客を舐めていただけですよ。まさか、あれほどの人が来てくれるとは思っていませんでしたから」
これも本当。元々、この町で買える品物しか置いていないのである。わざわざ町に住んでいる人が買いに来る必要はない。それでも、多くの人が来てくれたのは商業ギルドの後押しがあったからに他ならない。
「明日は人を借りても良いですか?」
「んー。どんな人が必要かしら?」
「そうですね。お客を整理してくれる人と会計をしてくれる人ですかね」
実際にやってみて分かった。私はカードの復元化とひも付だけすれば良い状態にしなければ客を捌くことは出来ないと。
「ならば、やり手の受付嬢を二人派遣しましょうか」
「良いのですか? 受付嬢が二人も抜けたらギルドが大変になるんじゃ?」
「まあ、お隣ですからね。問題が発生したらすぐに戻れますし、時間で交代させても良いですから心配しなくても大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます。カロリーナさんがそこまで考えていてくれていたなんて嬉しいです」
人の派遣でもそのレベルによって効率が大きく変わる。仕事の出来る人間を寄こしてくれるとなるとそれだけで私の負担が大幅に減るのは確定だ。
「当然ね。リアさんには多額の借入金がありますからね。お店が失敗したら回収出来なくなるじゃあないですか」
「あ、ああ。ソウデスネ」
彼女の対応に感動した私が甘かった。やはり彼女はギルドのことしか頭にないのだと思い知らされたのだった。
「――お待たせしました。肉定食ですね」
カロリーナとの話が一段落ついた時、頼んでいた食事が運ばれてくる。
「あら、美味しそうね。私も何か頼もうかしら」
カロリーナはそう言って私の料理を運んで来てくれた店員にいくつか注文をすると席を立つことなく、相席のままで待っていた。
「先に食べさせてもらいますね。他に何かあるのですか?」
せっかくアツアツの料理を運んで来てくれたのだ。冷めてしまっては勿体ないと料理に手をつけようとした私にカロリーナは待ったをかけた。
「せっかく私も注文したのですから、一緒に食べませんか? 確か、リアさんのカード化は時間劣化がないのですよね? 今、ここでカード化しておけば熱いままの料理で待つことが出来るでしょう?」
いや、確かに出来ますよ。ですが、私はお腹が減ってたまらないから食堂に来たのです。それを一緒に食べたいからと後から注文した料理が来るまでお預けさせようなんて酷くない?
「出来ますけど、しません。私はお腹が減っているのです。今日は忙し過ぎてお昼ご飯を食べ損ねていますから、わざわざカロリーナさんの料理が来るのを待つ必要性がありません」
私はそう言い切ってから料理に手をつけたのだった。
なんだかバタバタ状態で準備した気もするけど、いよいよ開店の日を迎えたリアのカードショップはその物珍しさだろうか朝から大勢の人が訪れていた。
「この町で買える品物ばかりですが、持ち運びに便利なようになっております。少々説明がございますので購入された方は順番にお並びください」
なにせ、お店経営は初めてのことである。いくら理屈を知っていても直ぐにその通りに出来るものではない。
「――では、このカードに手を乗せてください。今からあなたにこのカードを復元するひも付をしますので」
一生懸命に説明と会計をこなす私だったが、どうあがいても間に合うはずもなく直ぐに会計の列はパンク状態となった。
「おい。いつまで待たせるつもりだ!? なぜこんなに会計に時間がかかる?」
私の店に並ぶ商品は全てカード化したものだ。だから、売るときに元に戻すかカードのまま持ち帰る人に対しては復元化のひも付をしなければならない。ただ、単に売ってお金を貰えばいい訳ではないのだ。
「すみません。初めての方にはきちんと説明をしなければいけませんのでお時間がかかっております」
「なら、もういい! 別にこの店で買わなくても売っている店に行けばいいだけなんだから。別にこの店でしか買えないわけじゃない」
初めは物珍しげに見てくれていたお客も遅々として進まない会計に一人、また一人と会計の列から離れて店から出て行く。
「申し訳ありません」
怒って出て行く客に対して引き留めることも出来ずにただ謝るしかなかった。
「はあっ 散々だったな……」
バタバタのまま時間だけが過ぎて行き気がつけば初日の閉店時間になっていた。少し時間を過ぎてしまったが、なんとか最後のお客を見送ってからドアに『閉店』の札をかけてから椅子に深々と座りこんで大きなため息を吐いた。
「良く考えれば分かっていたことばかりよね。新しいお店がオープンすれば多くの客が押し寄せるのは何処の世界でも同じことか。こんなことならギルドに依頼して人を派遣して貰えばよかったな」
椅子の背にもたれ掛りながら天井を見上げてそう呟く私。そんなふうに反省をしている時に限って「ぐう」とお腹が鳴ってしまう。
「そういえば忙しすぎてお昼ご飯も食べる暇が無かったんだ」
お腹を摩りながら私は何か食べるものを探すが目に当たるものは無い。強いていえば売り物にしているカード化したものだけだった。
「さすがに売り物を食べちゃあ駄目だよね」
自分の財布からお店の売り上げに入れるなら問題ないとは思うが、初日からそんなことではいつかはどんぶり勘定になってしまうことだろう。そんな未来が見えた私は食べたい気持ちをぐっと堪えて椅子から立ち上がるとふらふらとした足取りで隣の商業ギルドにある食堂へ向かったのだった。
「すみません。肉定食をお願いします」
食堂に辿り着いた私は店員に食事を注文すると明日からのことを考えていた。
「あら、リアさんじゃないの。そういえば、お店。今日開店でしたね。どうでしたか?」
私が食事を待っていると、どこからともなくカロリーナがやってきて目の前の椅子に座る。その顔は私の店がどんな状態だったか分かっていた表情だった。
「おかげさまで大盛況でしたよ」
盛況だったのは本当だ。ただ、人が多すぎて怒らせてしまった客が思いの外多かっただけだ。
「言ってくれれば応援を派遣したのに、どうして言ってくれなかったのですか?」
カロリーナは悪びれもせずにそう言って微笑む。悪魔かこの人。
「ちょっと開店初日のお客を舐めていただけですよ。まさか、あれほどの人が来てくれるとは思っていませんでしたから」
これも本当。元々、この町で買える品物しか置いていないのである。わざわざ町に住んでいる人が買いに来る必要はない。それでも、多くの人が来てくれたのは商業ギルドの後押しがあったからに他ならない。
「明日は人を借りても良いですか?」
「んー。どんな人が必要かしら?」
「そうですね。お客を整理してくれる人と会計をしてくれる人ですかね」
実際にやってみて分かった。私はカードの復元化とひも付だけすれば良い状態にしなければ客を捌くことは出来ないと。
「ならば、やり手の受付嬢を二人派遣しましょうか」
「良いのですか? 受付嬢が二人も抜けたらギルドが大変になるんじゃ?」
「まあ、お隣ですからね。問題が発生したらすぐに戻れますし、時間で交代させても良いですから心配しなくても大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます。カロリーナさんがそこまで考えていてくれていたなんて嬉しいです」
人の派遣でもそのレベルによって効率が大きく変わる。仕事の出来る人間を寄こしてくれるとなるとそれだけで私の負担が大幅に減るのは確定だ。
「当然ね。リアさんには多額の借入金がありますからね。お店が失敗したら回収出来なくなるじゃあないですか」
「あ、ああ。ソウデスネ」
彼女の対応に感動した私が甘かった。やはり彼女はギルドのことしか頭にないのだと思い知らされたのだった。
「――お待たせしました。肉定食ですね」
カロリーナとの話が一段落ついた時、頼んでいた食事が運ばれてくる。
「あら、美味しそうね。私も何か頼もうかしら」
カロリーナはそう言って私の料理を運んで来てくれた店員にいくつか注文をすると席を立つことなく、相席のままで待っていた。
「先に食べさせてもらいますね。他に何かあるのですか?」
せっかくアツアツの料理を運んで来てくれたのだ。冷めてしまっては勿体ないと料理に手をつけようとした私にカロリーナは待ったをかけた。
「せっかく私も注文したのですから、一緒に食べませんか? 確か、リアさんのカード化は時間劣化がないのですよね? 今、ここでカード化しておけば熱いままの料理で待つことが出来るでしょう?」
いや、確かに出来ますよ。ですが、私はお腹が減ってたまらないから食堂に来たのです。それを一緒に食べたいからと後から注文した料理が来るまでお預けさせようなんて酷くない?
「出来ますけど、しません。私はお腹が減っているのです。今日は忙し過ぎてお昼ご飯を食べ損ねていますから、わざわざカロリーナさんの料理が来るのを待つ必要性がありません」
私はそう言い切ってから料理に手をつけたのだった。

