高三ダブりな俺の異世界再生記 〜転生して女神になった友達から助けを求められたので、イケメン騎士や美少女達と共に異世界を救おうと思います〜

「助けてくれて本当にありがとうございました」
「素直でよろしい♪」

エステラは上機嫌だ。
苦手なバトルで活躍出来たのが嬉しかったんだろうな。

「とっとと強くなってよね。アタシは見ての通りのか弱いレディーなんだから」
「しょっ、精進します」

幸いなことに、ソフトテニスを基にした『勇者の剣』はそこそこ通じた。

けど、喜んでばかりもいられない。
2Dのコマンドバトルの時には見られなかった課題が山積みなんだからな。

一番の問題はやっぱパワーか。
ああいう手合いと対峙した時どう対処したらいいのか。
ぜひともプロの先生にご指導をいただきたいものだ。

「ここは『アストリア』のどのあたりなんだ?」
「王都近くの『アッシュウッドの森』よ」
「……マジか」

原作では聖教の本拠地がある『パクスノヴァ』が始まりの地だった。
ワールドマップで言えば、ここから森、平原、山をそれぞれ一つずつ越えた先だ。

どうしてエステラはこんなところに?
それもたった一人でいたんだろう?
謎は深まるばかりだ。

「少し休んだら『エルスワース』に行くわよ」
「……騎士学校か」
「その通りよ。アンタにはそこで腕を磨いてもらう」
伝手(つて)があるのか?」
「ええ。前に私の護衛をしていたバルダスって男よ」
「バルダス……さん……」

エステラの元護衛だから聖騎士だよな。
そんなキャラは原作には出てこなかった。

言うまでもなく、ゲームが現実になったことで生まれた人。
言葉を選ばずに言えば『辻褄(つじつま)合わせ』だ。

こういうのはこれから先も多々あると見た方が良さそうだな。
原作知識はいくらか持ってるけど、過信し過ぎないようにしよう。

「アイツは最高の騎士よ。言う通りにやってれば、必ず強くなれるはず」
「信頼してるんだな」
「まあね」
「でも、珍しいよな。聖騎士ならそのまま聖騎士団に残りそうなものなのに、王国の施設の職員になったのか」
「アイツは脱会したのよ」
「!? なっ、何で?」
「真面目だからよ」
「それってつまり……聖教が腐敗してるってことか?」
「ええ。もうどうしようもないぐらいにね」
「……お前がグレちゃったのも聖教が腐敗したから――いでっ!!?」
「失礼ね。アタシは義賊よ」

俺は叩かれた額を押さえながら、改めてエステラに目を向けた。
やっぱり俺にはヤンチャな家出少女にしか見えない。

「義賊って、具体的には何してるんだよ」
「それはまぁ……そのうちね」
「ンな勿体ぶるようなことか?」
「うっさいわね。これから先ウンザリするぐらい一緒にいることになるのよ。楽しみは取っておくに越したことはないでしょ」
「んん゛? ……まあな?」

楽しみにするようなことか?
色々とモヤっとはするが、でもまぁ――。

「安心した」
「何が?」
「その髪は誰かに無理やり切られたわけじゃないんだな」
「っ!」

エステラの目が大きく見開く。
凄く驚いたような表情だ。

「エステラ?」
「そ……そうよ!! これは自分で切ったの。過去との決別ってやつ?」
「ははっ、そう言われるとすげえカッコよく見えてくるな」
「…………」

エステラが途端に大人しくなる。
やべ。今のは失言だったか……?

「……って、ホント肝心な部分は見せてくれないのよね」
「何が?」
「『慧眼』よ。け~がん」
「?」

『慧眼』はよそ様で言うところの『鑑定眼』にあたるものだ。
所謂ステータスを閲覧することが出来るスキルで、数値化出来るもの(魔力や体力、知力)だったり、名前、身分なんかを見通すことが出来る。

そんな慧眼を(もっ)てしても目に見えないもの?
……何だ? ぱっとは思いつかないな。

「疲れたでしょ。少し休みなさい」

目の上にエステラの手が(かざ)された――と思ったら、物凄く眠くなってきた。
これは……催眠魔法か。

「ふふっ、アホ面」

うっせいやい。
おかしそうに笑うエステラの声がどんどんどんどん遠ざかっていく。

不意に細長い……指? が俺の額を撫でた。
前髪を払ってるのか? くっ、擽ったい。

「…………………………………………ありがとね」

ったく、素直じゃねえな。
結衣と俺が作ったエステラとはまるで似ても似つかない。

他のヤツらもそうなのかな。
楽しみな反面、何だかちょっと怖いな。

それにしても、『俺はまだ……』か。
少し前までは死にたいとすら思ってたのに。

我ながら調子がいいと思う。
でも、こんな自分も悪くない。