高三ダブりな俺の異世界再生記 〜転生して女神になった友達から助けを求められたので、イケメン騎士や美少女達と共に異世界を救おうと思います〜

「ハルと私の世界の狭間ってとこかな」

俺の問いかけに結衣が静かに答える。
ああ、これが所謂――。

「『異世界転生』ってやつか」
()()だよ。ハルは死んでない。向こうでちゃんと生きてるよ」

「何だよ……」と、言いかけて慌てて呑み込む。
結衣にだけは気取られちゃいけない。
コイツは生きたくても生きられなかったんだからな。

「お前は何だ? 天使にでも転生したのか?」
「女神だよ! 今じゃ世界の創造主★」
「はえ~、ご立派ご立派」

小さく息をついて座ると、結衣も翼を畳んで隣に腰掛けてくる。

その拍子に腕がぶつかった――はずなのに、何も感じなかった。
衝撃も体温さえも。
通り抜けたんだ。俺の体をすっ……と。

ああ。
ホントに神様になっちまったんだな。

「…………」
「でもね、やらかしちゃったの」
「……何を?」
「邪神にね、力取られちゃったの」

「誰の?」と問いかける間もなく、結衣は自分の胸をぽんぽんと叩いた。

「邪神はお前が創造したものじゃないってことか?」
「うん。簡単に言うと私の『悪の心』ってところかな。神様は持ってちゃダメなもので、それで切り離したんだけど……そしたら、襲い掛かってきて」
「どこの●ッコロ大魔王だよ」
「ははっ、面目ない……」

へこへこと頭を下げながら苦笑いを浮かべている。
イラッとはしなかった。
むしろ、酷く痛々しいというか。

言い訳の一つでもすりゃいいのに、俺なんかにひたすら頭下げて。
正直見ていられなかった。
咳払い一つに目を伏せる。

「で、俺は何をすればいいんだ?」
「ズバリ、勇者になって邪神を倒していただきたいです」
「念のため聞くが、俺以外に選択肢は?」
「ないよ」
「……即答かよ」
「焦らしたってしょうがないでしょ」
「そりゃそうだけど」

結衣には大きな借りがある。
だから、退治役を担うこと自体に異存はない。

ただ、期待に応えられるかどうかは別だ。
便乗するようで悪いけど、今のうちに断りを入れておこう。

「俺はお前に嘘をついてた」
「…………」
「全国区のテニスプレイヤーでもなければ、全国模試でトップクラスの秀才でもない。おまけに女子から告られたこともない。並以下の人間なんだ」
「みたいだね」
「っ! 知ってたのか?」
「今知ったの。ここでならハルの全部を丸裸に出来るからね」
「……そうか」

安いプライドを満たすために、何も知らない結衣を利用した。
()()()()()()()()()()を演じて、逃げてたんだ。
スポーツも、勉強も、何もかもが上手くいかないクソみたいな高校生活から。

「……悪かった」
「ダメ。今はまだ許さない。私の世界を救ってくれたら許してあげる」
「それはいくら何でも割に合わないんじゃないか?」
「そうかな?」
「そうだ……いや……」

なるほど。赦されれば前に進める。そう言いたいんだな。
正直、そんな単純な話ではないような気もする。でも――。

「文字通り勇者になれたら、人生やり直すのも夢じゃないかもな」
「もち!」
「よせよ」

結衣がぐーっと親指を向けてくる。
触れてもすり抜けていくだけだ。
分かっていても、……いや、分かっているからこそ避けてしまう。

そのすり抜けていくのを見たくなくて。
我ながら情けねえな。

「っ!」

全身が白い光に包まれていく。
まさかもう? まだろくに説明も受けてねえってのに……!

「ちょっ、おい! お前が創った世界ってどんな世界なんだよ?」
「ハルと創った『ブレラケ』をベースにした()()()()だよ」
「所謂、ゲームの中の世界じゃないってことか?」
「うん。そう。人間も動物も自然も全部自分の意思で生きてるよ」
「マジか……」
「まずは仲間を集めて。それから、三つの大水晶を取り戻してほしいの。そうしたら、私の力が地上に届くようになる。魔物も弱くなるし、ハル達のバックアップも出来るようになるから」
「仲間はエステラ、ルゥ、ゼノス、ミレーネさんの四人でいいんだな?」
「うん! そう! 最初は原作通り、まずはエステラちゃんの前に出るからそのつもりでね」

――聖女・エステラ

原作では正ヒロインを務めることになる()()()()()()()()()()()だ。
水色のウェーブがかった長い髪が特徴的で、白と金の修道服を着ている。

戦うことは出来ないけど、その分回復役としては超優秀。
戦闘経験ゼロな俺としては何とも頼もしいパートナーだ。

「ねえ、ハル」
「何だ?」
()()()()()()()()()()()()だよ。でも、あの子達はもう命を持った人間だから――」
「分かってる。間違ってもキャラ扱いなんてしたりしねえよ」

結衣のほっとしたような笑顔を最後に景色が切り替わった。
それと同時に体勢が大きく崩れる。

あれ? 
俺……もしかして浮いてる?

「おわっ!?」

うつ伏せの状態で地面に落ちた。

「いて~~っ……」

鼻打った。最悪。
おまけに土煙まで。
ゲホゲホと咳込みながら顔を上げる。

「は? 何よこれ」
「あぐっ!?」

そうしたら直ぐにデコを蹴られた。
なっ、何だ!? 敵か!?

「これが勇者? 女神のヤツ、マジでナメてるわね」

勇者? 女神? まっ、まさか……。
恐る恐る顔を上げてみる。
するとそこには、(さげす)んだ目で俺を見下ろす青髪の女子の姿があった。