憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

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 それからがちょっと大変だった。
 あの直後暁が倒れて入院。キョウさんは殆ど食べることが出来ておらず、栄養失調状態だったらしい。
 屋上に居た人達は意識を取り戻し、俺は上手く説明出来ないし寒いしでみんなで急いで帰宅してその内の俺含む何割かが風邪を引いた。
 くしゃみをしながら疲労困憊集団のノロノロとした帰り道であっても綺麗な朝日が差していれば絵になったと思うんだけど、思いっきり曇りだった。現実ってそういうものだ。格好つかない。
 お守りは航琉くんが回収してくれていた。そして航琉くんも風邪を引き、欠席が長引いた。
 後日あのとき屋上に居た人達には「七不思議をやっていておかしなことになった」と、菓子折りを持ってざっくりとした謝罪をした。勿論イヤなヤツ二人組にも。話してみると楽しい奴らで、人間ってそうだよな……と思う。楽しい奴でも他人を無意識に、なんなら楽しいと思って害する。俺もやってるかも……気をつけよう……。
 俺のバイト代は不法侵入がバレたときの罰金ではなく菓子折りのためにあったようだ。全額使ってはいないので、まだまだ貯金はある。貯め込むことに慣れてしまい、使い道は検討中だ。
 盛大な風邪を引き一週間寝込み、後に聞いた話によると、屋上に何人もの人がいるのを明け方散歩をしていた近所の人が見ていて、電話の通じる昼間、学校に連絡が入ったそうだ。先生がホームルームの時間に何か知ってる人はいないかと聞いたけど、誰も屋上に居たことは名乗り出なかったらしい。名乗り出てわざわざ怒られたくはないもんな。
 工事が入り鍵は簡単には開けられないもの、柵が高くなって、非常階段側からも柵門の鍵がないと入れない場所になった。当然屋上側から縁に行くのも高い柵で阻まれる。
 とはいえ職員室のキーボックスの鍵は簡単な南京錠だし、柵も頑張ば登れそうな形状だ。ウチの学校のセキュリティは甘い。
 でも俺はもう行く気がないし、こんなに面倒にされたら誰も行こうとは思わないんじゃないかな……。
 なんだか、青春の終わりのようなものを感じる。

 航琉くんも元気になり俺も風邪から復帰して、登校して久々に会えた喜びからどちらからともなく駆け寄って熱い抱擁を交わし、再会の感動を味わってから俺はベリっと航琉くんを引き剥がした。
 喜びに流されそうになってたし忘れ掛けてたけど、一応確認すべきことがある。
 眉間に皺を寄せて、遺憾の意を表しつつ。
「俺のこと増やそうとしてたんだって?」
「はい……」
「一応確認だけど、ああいうのはダメってのは分かってるよね? 分かっててやった? 分かんなくてやった?」
「やろうとしたときは分かってなかったです……今は、分かっています……。お守りを渡した頃には、もうそれを願うのはやめようと考えていました……」
「なら、まぁ……」
「でもお叱りは受けたいです……!」
「えええ……?」
 叱られることで俺の考え方を知ることや構ってもらえるのが嬉しいようだと察知し、わざと叱られるようなことはしないと約束を交わし、ただ航琉くんがその願いを持った頃は俺もアレだったしなぁという前置きをし、分かってると思うけど人を傷つけてはいけないというのは物理的な怪我だけでなく人格を上書きしてはならないことも含むと叱る雰囲気で説明をした。
「まだ俺を細胞分裂させて育てるとかなら分かるけどさぁ……」
「それ! やりたいです!」
「いやいやいやいや、『良いこと聞いた!』みたいな顔しないの」
「色んな環境下で育った沢山の燈李さん、見てみたいです……!」
 語尾にハートマークをつけてうっとりしないでくれ頼むから。
「それってあれだろ? この歳まで両親揃ってたパターンとか、どっちも居ないとか、ひとりっ子とか、裕福とか貧乏とか、海外育ちとか、大きな病気とか怪我を経験してるとか、そういう環境の話だよな? 俺個人の増殖するのに周辺環境整えまくってたらコスト掛かりすぎだろ。仮に出来たとしてもやらないでよ。俺が沢山いるのは生理的にだいぶイヤ」
「えぇー……」
「えー、じゃないの!」
「ムゥー」
 強情だ。万が一ファンタジックなパワーを手に入れたときにやられたらたまったもんじゃない。
「航琉くんの彼氏は俺一人でしょ! 俺だけ見てればいいんだよ!!」
「……! はいっ! 好きです!!!」
「俺も好き!!!」
 我ながら扱いが上手くなったと思うし、素直になったと思う。
 最後のほうだけ聞いていたと思われる通りすがりの大介が、航琉くんの後ろからこちらを眺めて微笑み腕を組んで、うんうんと噛みしめるように頷いていた。