「……ろちゃん、ひろちゃん、もう起きちゃって〜」
「うっ」
突然眩しいひかりが目蓋を貫いてきて、左手の甲を目にぎゅうっと押し付ける。耳慣れた声と、ぱたぱたとフローリングを打ち付けるスリッパの音がする。
布団を目の下までひっぱり上げて、しぶしぶ片目ずつ目を開くと、母が部屋を出て行くところだった。
分厚いカーテンを開けられため、朝日が差し込んできて眩しい。ここの部屋はやや東よりに窓があるため、朝日が強烈なのだ。
寝汗をびっちょりとかいていて、首の裏がベタベタだった。
鳴海は、前開きのチェックパジャマのまま居間に行くと、母は何か台所でご飯を作っているところだった。香ばしい匂いがして、お腹が空いてくる。
「なにつくってんの?」
母の手元をそおっと覗きこんで尋ねる。
「危ないよ、近寄ったら」
「知ってる!中学生だし」
「そうね、もうお兄さんね」
けらけらと母は笑って、フライパンの中をひっくり返した。火を扱っているとき危ないことくらい、もうわかっている。絶対ふざけたりしないのに。
鳴海は少しイライラとして、大袈裟に踵を返した。そしてすぐそばのダイニングテーブルへずかずかと進むと、生の食パンとインスタントのコーンスープが並べてあり、その席に座った。
「今日のお昼ね。青椒肉絲よ」
母は調理したものをフライパンから白い平皿に盛り付けながら言った。出来立ての青椒肉絲から湯気が立ち上っていて、まさに今それを食べたくなった。
「うん、わかった。今日も?」
鳴海は青椒肉絲に目を奪われながら返事をする。
「そうなの。ひろちゃんが起きてくるの遅いからママもう朝ご飯食べちゃった」
今日は土曜日だけれど、母はこれから仕事に行くようだ。また今日もひとりで夜まで留守番なのかと思うと、少しだけ憂鬱だった。
しかしこれからゲームとか宿題とかいろいろやることがある。午前中はとりあえず青椒肉絲のために頑張ろうと心に決めた。
鳴海はテーブルに置いてあるトースターに食パンをセットして、ツマミを適当に回した。おそらくいい塩梅の焼き時間があるのだろうが、いつも半分働いてない頭でやるので、これを覚えられない。
その隣にあるポットの蓋を開いて覗き込むとちょうどいい量の水が入っていたので、そのまま蓋を閉めてスイッチを入れる。母が水を入れておいてくれたのだろう。
そのまましばらく頬杖をついてぼおっと待ちぼうけを喰らう。
「ひろちゃん、ご飯は冷凍の包んであるからチンしてね」
「わかった、ありがとう」
母がエプロンをとって、リビングを去る。そして職場にもっていく大きめの肩掛けバッグを取ってリビングに戻ってくると、全身鏡の前で身嗜みを整えて、棚の上にある腕時計をはめた。そしてこじんまりとした仏壇に手を合わせる。
鳴海は母の身支度を視界の端に見ながらこんがりと焼けた食パンをむしゃりとかじる。今日はうまく焼けたようだ。焼いているときに目を離さなかったのが功を奏したようだ。
「じゃあもうママ行くね」
「うん」
そう返事して鳴海が食べかけのパンを皿に置いて立ち上がりかけると、母は
「いいよいいよ、ママが鍵かけるから」
と言って首を振った。
「それくらいやるのに」
「いいから。ほら、朝ご飯食べちゃって」
「うん。じゃあいってらっしゃい」
鳴海が席にもう一回腰を落ち着けると、母はいってきますと言って、リビングを出て行った。しかしまた戻って来て
「遊びに行くなら鍵かけるの忘れないでね」
と念を押した。
「わかってる、いってらっしゃい」
「はーい、いってきます」
母は微笑んで今度こそ玄関へ行った。
靴の履く音がしてしばらくすると、扉が閉まる音もした。そして鍵が「ガチャ」っと一際大きな音をたてて掛かる。
これは未だに慣れない。ひとりの留守番は小学校のときから何度もしてきて慣れっこなのに、鍵が掛かる音だけは毎度背筋がぞぞっとする。ひとりになった部屋に閉じ込められたような気がして怖いのだ。
鳴海は引き続きトーストをかじる。サクサク感の薄れる後半部分は、千切ってコーンスープの中に放り込み、絡めて食べるとおいしい。
トーストの最後のひと口を飲み干すと、食器を持って立ち上がり流しへと置く。
着替えてから再び、台所に戻ると、先ほど水を貯めておいた食器たちの洗い物に取り掛かった。
洗い終えて食器を水切り籠に並べると、洗面所で顔を洗い、歯磨きを済ませた。
またダイニングに戻ってふと掛け時計を見上げる。まだ時刻は9時すぎだった。
父の前に行ってお線香を一本立てる。おはようございますとやっと手を合わせられた。
正直鳴海は父のことをあまり覚えていない。鳴海が5歳のときにはもう病気で亡くなったらしいのだ。
遺影に見る父はいつ何時もやさしそうな笑みをたたえている。しかしなんだか頼りなさそうな感じもする。
自分に似ているとこはあるのかなと、ふと思い、なんとなく気になってじっと写真を見つめてみる。
よく母に似ていると他人から言われるけれど、父には似てないのかもしれない。こうしてじっくりと見てみても自分と似ているところは見当たらない。
「やっぱり似てない」
と独りごちて、床に腰を下ろすと後ろに手をついて開脚した。秒針が動く音に合わせて、足で床を鳴らして遊んでみる。
そんなことをしているときふと母の言葉を思い出して、がばっと起き上がりもう一度父の遺影を覗き込んだ。
『ひろちゃんはお父さんと笑った顔がそっくりね〜』
母いわく、鳴海は父に笑った顔がそっくりらしいのだ。遺影にはやはりいつものひとのよさそうな笑みをたたえた父がいる。自分が笑ったときの顔なんて自分で見たことがないからわかるはずがない。
そんなことより、さっさと宿題でも終わらせよう。世界地図に大陸名を書き込んで色分けをするという課題が、金曜日に出されたのだが、気が進まなくてその日のうちにやらなかったのだ。
ダイビングにしか机がないので、学校に持っていくリュックを自室から持ってきてこれにとりかかる。ユーラシア大陸は大きいので一番好きな赤色にしよう。
もともと字をなぞったり、色塗ったりする作業は苦手だけれども、今日はなんだか特にはみ出す。色鉛筆を握っている手の内側が湿って、額には脂汗まで滲んできた。将来僕はこういう繊細な作業のある仕事をできないかもしれない。
やっと宿題が完成した。汗をかいたし目が回るような感じもした。塗っている時にこれが終わったら青椒肉絲を食べようと心に決めていた。
おいしいものを食べて午後に備えるのだ。まだ11時になったばかりだけど、お腹が空いているので、仕方ない。
ほかほかの白ご飯に青椒肉絲をダイブさせて一緒に口へと運ぶ。いつも母がつくってくれる青椒肉絲だ。野菜がほどよくしゃきしゃきしていて香ばしい。
食事を終えるとゲーム機がしまってある棚へ一目散に行って、ゲームを素早く起動させた。
鳴海がいまハマっているのは、2D表示のスクロール画面で、キャラクターが飛んだり走ったりしながら右側にあるゴールを目指すゲームである。何作も同じシリーズで発売されている人気のゲームだ。
昨日ステージをひとつクリアしたので、次のステージが解放された。カーソルを合わせて新しいステージを選択する。
軽快な音楽とともに始まり、ボタンを親指で押す。しかし、走ってすぐのところで何度もなんて事のない穴に落ちてゲームオーバーになってしまう。
(あれ……?)
目を擦って、何度も瞬きしてみる。なにかがおかしい。
注視したところだけが、滲んだようにぼやける。これはどういうことだ。
右に行きたいから右の方を見ているのに、肝心なところだけが、周りの青色と同化してなにも見えなくなるのだ。
一瞬ゲーム機が壊れたのかと思って、再起動してみる。しかし、どうやらおかしいのは自分の眼の方のようだ。
再起動している間に、部屋の時計に目を向けてみたときに、確信した。目を合わせた数字だけがぼやけて消えてしまうのだ。
何度も瞬きを繰り返してみるが、この現象が治らない。
どうしてこんなに部分的にものが見えなくなるのだろう。目にゴミでも入ったのかもしれない。首を傾げながら、風呂場についている洗面所に行った。
水を勢いよく流す。身をかがめて顔を横に倒して、眼に流水を当ててみる。プールのとき以来水に目を当てた。
何度か瞬きをして、顔をあげると、鏡には髪までびしょびしょになった情けない自分がぼんやりと写っていた。
鳴海は顔の水気をそばにあった手拭きで拭ってもう一度鏡を見る。自分の右目に視点を合わせてみる。さっきまでそこにあった右目が黒いもやもやになって消えてしまう。目が充血していることだけはわかった。
(え……)
脳内に最悪の想像がよぎった。もしかしたらこの前テレビでやってた“なんたら障”とかいうやつかもしれない。
夕飯を食べていた時にやっていた健康番組だ。健康番組はお化け屋敷より嫌いだけれど、母がよく回すので見てしまうのだ。
ふつうこの病気は歳を取った人がなるらしいのだが、僕みたいな中学生もなるのだろうか。
それよりもっと重い病気かもしれない。
鳴海はいよいよパニックになった。一生このままだったらどうしようとか、さっきまでも実はこんな見え方だったっけとか、いろいろなことが頭の中を駆け巡る。
今までのズルをすべて言うから、目を戻して欲しい。
テレビ台のそばにあるタブレットで調べてみたら、鳴海の症状はぴたりと緑内障に合致した。20代の若い人もなるらしい。
この病気は良くなりはせず、現状のままで食い止めることが治療になるらしい。そのために「早期発見、早期治療が重要」と太文字で書いてある。
調べているときも、なかなか文字が追えなくて大変だった。次第にパニックに代わって、絶望感が心の中を浸食してきた。
ああ、まだ中1になったばかりなのに。これからずっとこんな視界なんて。ゲームもろくにできない、漫画もうまく読めない、こんな目になるなんて。
大粒の涙が両眼から溢れてきた。グエっという嗚咽が喉から出る。
目が見えるなんてことは、今まで当たり前だった。よく見えないなんて考えたこともなかった。
鳴海はひとりの部屋でずっとしばらく泣いていた。母も今日は夜までずっと帰ってこない。
泣いているうちに、寒気と、胸がつかえるような気持ち悪さが襲ってきて、いよいよだめかもしれないと思った。
自分の部屋に行って、箪笥から、靴下と時期外れの裏起毛のパーカーを引っ張り出した。それを身につけて布団にくるまる。
ガタガタと震えがきて、目を閉じてもまぶたいっぱいに涙がたまる。しかし布団の温もりに包まれていると、だんだんと心が落ち着いてきた。
気づいたら寝てしまっていたようだ。
少し冷静になった。こうしててはいられない、とベッドから起き上がる。
時刻は午後15時。布団をマントのように肩に掛けて、ずりずりと裾を引きずりながら移動してリビングに向かった。
ひとしきりリビングをぐるぐるしたのち、テレビ台のそばのカード入れの箱を発見して、何をやるのか思い出した。リビングへ来る間に何をしようとしていたのか忘れてしまっていたため、うろうろとしてしまった。頭が朦朧としていていけない。
前に何かの目薬をもらった眼科は確か高架下近くの病院だった。診察カードを確認すると、土曜の午後は休診だった。
仕方ない。川を渡った遠くの眼科にいくしかないみたいだ。そこは小さい頃に一度だけ行ったことがある。
早く行かないと。診てもらわないと。「早期発見、早期治療」という文字が頭の中をぐるぐるする。
玄関へ行ってもたもたしながら靴に足を入れる。心が急いてマジックテープを留める手がわずかに震える。
振り返ったら、リビングに続くドアが半開きになっていて、さっきくるまっていた布団が大きく口を開けた生き物みたいな形になって置き去りにされていた。なにか冷えるなと思ったら布団がないからだ。
慌てて靴を脱いで、立ち上がろうとしたときだった。胸のもやもやがのどのほうに急激にのぼってきたのだ。あれ、と思う間もなく、よくない種類の唾液が奥歯のわきのあたりからだらだらと込み上げてくる。
涙がまた滲んできて、奥歯をぎっと噛んだ。もう諦めて、家で寝ていようか。
いや、だめだ。
これでもっと悪化したら取り返しがつかないんだ。そういう風に心の中で唱えて自分をなんとか奮い立たせる。
唾液を早いスパンで飲み込むことにして、なんとか自室に戻り、さらに大きめのジャンバーを重ね着することができた。
夏にほどちかい時期にこの厚着っぷりである。
頭にはもやがかかったような気怠さと熱を感じていたが、外へ出たとき、爽やかな風が心地よく吹いて、額の熱を若干逃してくれた。
アパートの階下へ降って、隙間なく押し込められた自転車の山から自分のものを引き出した。
自転車を車道にまで押してくると、向こうから散歩帰りの重田さんらしき人が迫ってくるのが見えた。なぜらしき人なのかというと、頭と視界が朦朧として、よく見えないからだ。
重田さんは、鳴海の家の下に夫婦で住んでいる40代くらいのおばさんだ。きゃんきゃんと吠える小さな犬を飼っている。
「あら、鳴海さんとこの…!」
重田さんもこちらに気づき、気のいい笑顔で話しかけてきた。年季の入った笑い皺が温厚な雰囲気を与えている。
「こんにちは」
鳴海は、いつもより何倍も愛想のいい笑顔を浮かべて挨拶をした。朦朧としてうまく働かない頭が、誤作動を起こしたようだ。別のことを考える余裕がなくなって、ただ相手の笑みをコピーして複製したような感じだった。
「これからお友達と遊ぶのかしら?」
とおっとりした調子で、言うので、つられて鳴海も「は〜い」と間延びしたような受け答えをした。
そこからも何かにこにことあれこれ話しかけてきたので、はーとかへーとかとただ受け流していた。鳴海の耳には膜が一枚隔てたみたいに何もとどかなかった。重田さんに捕まると長いのはいつものことだ。
「あら!ごめんなさい!ずっと引き止めちゃったわ。じゃあ、気をつけていってらっしゃいね。車通り多いから!」
そう言うと、重田さんは、アパートの方に犬を連れて帰っていった。
気を取り直して自転車に跨った。もうそこからは何も考えたり見たり聞いたりする余裕なく、ただ太ももを上下させて風をきった。
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「鳴海くんだよね……?大丈夫?」
頭の上から声がして目を薄く開いたら、覚えのある顔があった。瑞原が少し屈んでこちらを見ている。
視界がまだぼんやりしていて、輪郭がゆっくりと戻ってくるような感覚だった。額にじんわり残る熱と、喉の奥に引っかかる気持ち悪さだけが先に現実として戻ってくる。
「……」
鳴海は恥ずかしいやら情けないやらで、声が出せなかった。右に目をそらしたら、ピントの合わないアスファルトが目前にある。
さっきまで全力で走っていたはずなのに、今は自分の身体が別の生き物みたいに重く感じる。起き上がるという動作すら、どこか遠い行為のようだった。
瑞原はなにも言わずにそばにある自転車を起こして止めた。ガシャンとスタンドを立てる音がする。
鳴海はさっき自転車で派手に転んだ。
きっかけは単純で、風が気持ちよくて少しだけ無理をしただけだった。スピードが出ると、頭の中の熱が少し薄れていく気がして、それがやけに心地よかったのだ。
風をきって走ると、頭と目の奥の熱が冷やされてマシになり、よかった。しかし右折する時、重心を右に傾けたらそのまま戻って来られず倒れてしまったのだ。
あの瞬間だけ、世界の軸がふっとずれて、自分だけ置いていかれたような感覚があった。
「……ありがとう」
それだけ言って、体を起こすと、膝を抱えるようにして蹲って、顔を伏せた。頭と顔が燃えるように熱い。おまけに右のひざからふくらはぎにかけて血が出て痛い。
じわじわと染みる痛みが、遅れて意識に追いついてくる。呼吸をするたびに胃のあたりが揺れて、気持ち悪さが少しずつ戻ってくるのがわかった。
もう何事もなかったかのようにそのまま通り過ぎてほしい。今何か受け答えする余裕はないのだ。
相変わらず食道の根本がむかむかとしていて、気を抜いたら吐き気が襲ってきそうだ。
願いとは裏腹にいっこうに立ち去る足音がない。痺れをきらして見上げる。すると瑞原はなにも言わずに鳴海を見下ろすように立っていて、目が合ってしまった。
「もう行っていいよ」
鳴海が絞り出すようにそう言うと、瑞原は眉をひそめた。あまりに元気がなさそうな声だったからだろうか。
彼は視線を彷徨わせてから、鳴海のそばに屈んだ。そして、ゆっくりとした動きで手を伸ばしてきた。
大きな手がこちらに迫ってくる。指先が髪をそっとよけて鳴海の額に触れた。掌で包まれるようにひんやりとした手が熱い額に触れて気持ちがよかった。
「っ……」
鳴海は目を思わず瞑った。このままここから一歩も動きたくない。動ける気もしないが。
触れられた場所だけ、世界の熱が一瞬だけ引いていくみたいだった。
「すごい熱」
瑞原は驚いたように目を開いた。
ぱっと立ち上がって、遠くをみたり後ろを振り返ったり唸ったりしながらしきりにうろうろとし始める。動けなくなった鳴海の処遇を考えてくれているのだろうか。
その様子はどこか落ち着きがなく、それでいて妙に楽しそうでもあった。真剣なのか冗談なのか、境目がよくわからない。
しばらくすると突然ぴたりと止まって、こちらを振り返った。
「少し歩いたら休める場所があるんだけど」
彼はさっと自転車に視線を移して、それをてきぱきと民家の塀よりに寄せた。また戻ってきて蹲っている鳴海の肩にそっと案じるように手を置くと耳元で囁いた。
「立てる?」
問いに対して鳴海は15度くらい左に顔を動かして元の位置に戻した。そのゆっくりとした動作で十二分に動けないことが伝わったようだ。
「そっか、どうしようかな……あ!じゃあおぶっていこうか」
瑞原はいい考えだと言わんばかりに、手で膝を打った。
なんだかこの前学校で見たときより生き生きとしているような気がする。
その発想の速さが、今の鳴海には少しだけ救いにも見えた。
「乗って」
瑞原は鳴海のすぐそばに屈んで振り返った。了承した覚えもないのにと思いながらゆっくりとした動きで近づいた。首の前に腕を回し、背中にくっついて体重を預ける。
すると彼は鳴海の薄い太もものしたに手を回しガシッと掴むと、勢いをつけて立ち上がった。
「っ……」
まずい。姿勢転換したら吐き気が再発動してきた。いきなり視線が高くなったのと、体が動いた事によって何かが込み上げてきそうなのだ。
視界が揺れて、世界が一瞬だけ上下にずれた気がした。
生理的な唾液が奥歯のわきあたりからだらだらとあふれてくる。目をぎゅっと瞑っても少しもやりすごせそうにない。
「大丈夫?」
鳴海を担いだ瑞原がゆっくり歩を進めながら気配に気付いて優しい口調で尋ねてくる。
「……うん」
それ以外声の発しようがなかった。なぜなら下手な動きをしたら吐きそうだからだ。
もう10分くらい歩いたように感じる。実際は1分半くらいだろうか。
時間の感覚だけが妙に伸び縮みしていて、地面の揺れと一緒に頭の中もゆらゆらしていた。
尚も唾液が止めどなく湧水のように溢れてくる。唾液でひたひたになったベロの裏をなんとかしたいのだが、唾液を飲み下すと吐く予感がした。嘔吐一歩手前までスキップしてしまう気がする。
「……ん?」
道路を左に曲がる手前、瑞原が首を傾げて自身の前身頃を見た。鳴海の唾液がだらだらと降下して、彼の右の胸あたりに染みをつくっている。
もうだめだ。吐いてしまう。身じろぎをして今すぐ降ろしてほしい旨をなんとか伝えよう。
「大丈夫大丈夫」
意思表示に全く気づかず、彼は見当違いに腿をトントンと叩き出した。降ろしてくれる気配はない。唾液はなおも降下し、しとどに彼の前見頃あたりを濡らし続ける。
たまらずなんとか最後の力を振り絞って右手で彼の肩を叩こうと前に動かし——次の瞬間、色とりどりの粘質な物体が水音を伴って鳴海の口から散らばり落ちていた。
「ああー吐いちゃったね」
鳴海が大惨事だというのに、いつもより抑揚豊かにそんなことを吐かした。もしくは小さい子をあやすような含みをもって。
「ぐはっ、……はぁはあ」
「大丈夫大丈夫。もうすぐつくからね」
瑞原は鳴海の太ももを深く掴み直すと、少し跳ねて上に身体を背負い直した。
「……あっ」
上下に揺すられてまた胃袋の中をかき回される。やめてくれ。もう動かないで。
「……も……あるく……おろして」
瀕死になったバケモノみたいな気分だ。まだ正気を失ったままのバケモノの方がマシだ。
また大丈夫大丈夫、と言われたが、こちらが大丈夫じゃないのだ。
「もうすぐだよ」
もうすぐという言葉につられて僕はゆっくり重い頭を上げた。
住宅街を抜けて遊歩道を進んだ先にあったのは、木々がうっそうと茂る公園だった。
まるっきり初めて来た所だ。瑞原とは小学校が別なので、鳴海がこれまで遊んできた場所と縄張りが違うのだろう。
木漏れ日の森林浴を楽しめるような清潔感のある公園とは程遠い。剪定や整備が行き届いていない忘れ去られたような公園だった。
入り口に挿さっているU字の車止めは塗装が剥がれてまだらだし、傍の植え込みには汚い空き缶や菓子のゴミ袋が捨てられていたりする。
一歩その公園の中に踏み入れるとさながら森の中のようだった。背の高い木々が覆い被さるように並んで生えている。
数段ほど朽ちかけた木の階段を降ると、少しひらけたスペースに出た。木々の生えている層から一段低い場所と言ったものである。見上げると周りを木でぐるりと囲われている感じだった。
瑞原は迷わず歩を進めてあるところで止まった。そこはコンクリートで舗装された小径の下がえぐれていて、屋根のようになっていた。露出した木のねっこに、何処からか拾ってきたような黄色と黒色の紐を縒ったロープが巻き付いており、自らの基地であることを主張している。
そして太くて長いつるつるとした枝の棒の横にバケツが裏返しに置いてある。そこに鳴海はしずしずと降ろされた。
ようやく解放されたようだ。バケツからずり落ちるようにして地面に座った。今はバケツの上より地面の方が心地よかった。地上に降りると、またここから一切動きたくないと思った。
着てきたジャンパーの襟元を最大限上まで上げて蹲る。右側から湿った風が吹いてきて寒いのだ。
ちらりと横を見ると瑞原はそばの薄汚れた段ボールの上の土を熱心に払っているところだった。そして突然むくりと立ち上がった。
その動きには迷いがなくて、まるで最初からそうするのが決まっていたみたいだった。鳴海の存在とは別のところで、勝手に世界が進んでいくような感覚がある。
「――これ汚いね。ちょっと近くにスーパーあるから取ってくるよ」
え、と声に出そうとした時にはもう遅かった。彼はもうすでに走り出して階段を数段とばしで登っている。
よく動かない頭でぼんやりと眺めていたが故に、咄嗟に引き止められなかったのだ。
「瑞原……!!」
とっさに名前を呼ぶものの、こちらの呼びかけに全く気づいていない様子で走る足を止めない。
「瑞原!」
再びすがるような気持ちで遠くなりかけている背中になんとか声を振り絞る。しかしこれにも気づかず後ろ姿がもっと遠くなる。
あれよあれよといううちに木々に阻まれて見えなくなった。
足音さえ聞こえなくなって、茫然と瑞原が消えてった方を見つめるしかない。
呼んだ声だけが、空気の中に変に残っていて、行き場を失っているのがわかる。
木々がざわめく音までやけに鼓膜に大きく響いた。
夕方の風が鳴らす木擦れの音は、よそよそしくて嫌いだ。風に合わせて一斉に群舞する枝葉が鳴海の存在を無視しているかのようなのだ。
すると、みるみるうちに向こうの階段や景色が遠くなり、自分を中心にどんどんと空間が広がっていく。まるで公園全体が急速に拡張していくような感覚だった。
広がっていくのに、逃げ場は増えない。むしろ、自分だけが小さくなっていくみたいだった。
目に張られた涙の膜、これが鳴海とこの心細いひとりぼっちの空間を隔てる唯一の防塞だった。
けれども涙の膜は早々に決壊して頬をしとどに濡らした。しゃくりあげる声が止まらない。自分の泣き声で木擦れは聞こえなくなったけれど、心はどんどん切なくなっていくばかりだ。
泣く理由なんて説明できないのに、身体だけが勝手に反応していくのが悔しい。
ただひとり残されただけで、こんなに苦しくなるのがわからない。
切なくなった心のせいで心臓をどくどくと早送りにされた。ますます気分が悪くなる。ある一定の切ない気持ちを超えると心の中がまるごとぐちゃぐちゃになって、悲しさというより混乱で頭がぼおっとしてきた。
どのくらい経っただろうか。ふいにぱたぱたと駆ける音が近づいて来た。鳴海ははっと面をあげて、音の方向を見る。
「いいのあったよ」
彼は上気した顔で大きな空き段ボールと丸まった毛布を抱えて走って来た。
そして鳴海の泣き腫らした顔に気づくと一瞬だけビクッとなって唾を飲み込んだ。
「ああ、ごめんね」
申し訳なさそうな表情で謝っている。
彼は走ってきた歩を緩めて息を整えながら、おそるおそるといったようにこちらに一歩ずつ一歩ずつ近づいてきた。
そして身をかがめたかと思うといきなり鳴海に抱きついて来たのだ。腕の中にぎゅうと閉じ込められる。
彼の腕と肩がわずかに震えていた。
なんでいきなり抱きしめてくるんだとか、ゲロが臭うとか、ひとりぼっちにしたくせにとか、脳内をよぎりそうな感想すべて彼の与えるぬくもりによって薙ぎ倒されていってしまった。
瑞原に対する“なんか得体の知れないやつ”という印象が、この行為に妙な説得力を与えていて、こいつは友人にこういうこともするんだろうなと、異国の文化を受け入れるみたいに納得した。鳴海はそのまま彼の胸に身を預けた。
それに瑞原がよく知らないクラスメイトでほぼ他人ということには変わりないけれど、具合の悪い自分を助けてくれたということも事実だった。
人の温もりがとても心地良くて、安心して、うとうとと深い眠りについてしまいそうだ。
「泣いてるなんて思わなかった」
「ひどい」
彼の胸を叩いた。すると彼は持ってきた毛布をたぐり寄せると、肩にかけて一緒に包み込んでくれた。
世界が少しだけ狭くなって、その狭さがちょうどよく感じる。
「これ家からとってきたんだ」
「うん」
「あったかい?」
「うん」
喉の奥で返事をしてから亀みたいに首を窄めて温もりの中により深く埋まってみた。すると耳元でくすくすと笑う声がする。
少しいらいらとした。
「ねえ、なんでこんなに熱あるのに自転車で遠くまで来たの?鳴海くんちって第三小の近くだよね」
「んー、眼科行こうと思って」
目を丸くしているのが気配でも伝わる。
「ふつう内科じゃない?」
「いや、なんかさっきほんとに目見えなくなって、焦って“なんとか障”かもって思って、そしたら眼科行かないとって……」
そういえば目に関しては完全に良くなっている。自転車で走っているときからいままで夢中になっていたから気づかなかった。いつのまにか見え方の問題は全くなくなっていた。
なんだかそれどころじゃないことがいろいろと起きすぎて、そんな心配があったことは意識の彼方だった。
「もう大丈夫?」
「うん、目は平気」
「そう、よかった。でもびっくりしたよ、倒れてて。僕が一番に気づいてよかった」
「……ありがとう」
鳴海がおずおずと礼を言うと彼はいいよ、と言った。
「それより熱があるから明日病院にいかないとだね」
「ええ……病院行かない」
「どうして?」
「母親看護師だし」
「そうなんだ。すごいね。きっとやさしいんだろうね」
彼は目を細めて笑う。
「過保護だと思う」
鳴海はくすぐったい気持ちでぶっきらぼうにそう言った。
「会ってみたいなぁ。鳴海くんのお母さん」
「え?ただの一般人だよ」
「ふふっ。違うよ。鳴海くんを産んだ人に会ってみたいってこと」
「変なやつ……」
鳴海がぼそぼそとゆっくり話しても、どんなにつっけんどんな返事をしても、会話はなかなか途切れなかった。
そのうちだんだん返事がおざなりになっていく。うつらうつらとしながら瞼が落ちたり開いたりしてバウンドした。
このまままふわふわした心地のままどろんで寝てしまいたい。
それからしばらくすると彼がなにか鳴海へ問いかけている声がした。そんなのを聞いたのを最後に意識は途切れてしまった。
--------------
目を開けるとあたりは真っ暗だった。
枝葉の重なる間から月が見えた。満月になる少し前の月だった。
月光があたりを青く変えている。鋭利な光を出しそうなのに実際は全体を包んで照らしてくれるものみたいだ。こんなに月明かりだけを感じた夜は初めてだった。
寝ている間に僕はあの段ボールに横たえられていたようだ。段ボールは厚みがあって寝心地は悪くなかった。毛布が首の下までかかっていて、身体全体を覆っている。
ふと隣を見ると影のなかに“生き物”の眼がふたつあった。月光の中に際立つ白と黒。しっかりと目を開けてこちらを見ている。
「うわ、なに見てんだ!」
それはもちろん瑞原の目だった。声が少し裏返った。
こんなことがつい最近にもあった気がする。ふと視線を向けたらこいつの黒黒とした瞳が鳴海を捉えていたこと。
そうだ、昨日はじめて話しかけられたあとの放課後の教室でだ。不気味なのだ。彼にじっくり見つめられると居心地が悪いだけじゃない、変な気分になる。
「ふふっ、寝てるの見てた」
楽しくて仕方ないといったように顔を綻ばせて笑う。いつもの薄ら寒い笑みじゃなくて、月明かりのなかでもわかる、楽しいという感情が内から滲み出ているような笑顔だった。
「見んなよ……」
「ふふん。おまじないしてたんだよ」
「おまじない?」
「元気になりますようにって。兄妹が風邪ひいたときにやってあげるんだ」
「へえ」
上機嫌な瑞原とは対照的に、鳴海はこの会話を今すぐに切り上げて帰りたくなっていた。なにしろ夕方より寒いのだ。毛布の中でもぞもぞと腕をさすり膝頭を擦って暖を取る。
「瑞原、帰ろ。もう帰りたい。寒いよ」
すると一気に瑞原は顔の表情をなくした。また影のなかに目だけになってしまったみたいだ。
いきなり感情を置いてきたみたいな瑞原に面食らって、摩っていた腕の動きを思わず止めた。
「え、帰りたい?」
冷たい声がしんとした公園に響く。
「……うん」
おそるおそる鳴海は返事をした。急に温度が下がったかのように感じる。歯が仕舞われて顔の表情がよく見えなくなり怖い。
変な間が生まれた。枝葉が一斉にさーっと流れる音がする。鳴海たちの間を流れる妙な空気を増長する様に。
「もう一緒にいたくない?嫌になった?」
責めるでもなく、ただ確かめる声だった。だから余計に逃げ場がない。否定しても疑われる気がした。
「え……いや……そうじゃなくてさ、も、もうこんなに暗いだろ。学校でも会えるし。そろそろ帰らないと。ほ、ほらさ、僕もベッドで寝たいし……」
言い募れば言い募るほど、心臓が早くなって冷や汗が首の後ろあたりをじんわり濡らす。なぜこんなに追い詰められているんだ。なにも悪いことしていないのに。ただ帰りたいと言っただけなのに。
鳴海は人に負の感情を向けられるのが特に苦手だった。たぶん小学校のときの担任の先生がいつも怒ってるような怖い先生だったからだと思う。
こんな状況は一刻も早く脱したい。どうしよう。どうしよう。もう嫌だ。
「いいよ」
すると突然彼はわざとらしく拗ねたような声を出した。さっきまでの張り詰めた空気はぱたんと途切れた。ほっと唇のそばにため息が漏れる。
「あ、あはは……」
気のせいだったみたいだ。もしくは冗談だったのか、今の許さないと言わんばかりの凍てつくような雰囲気は。ああ、怖かった。確実に寿命が縮んだような気がする。
というか、瑞原はこんなやつだっただろうか。クラスメイトとして遠巻きに見てる時には感じなかった。
「よし、じゃあ帰ろうか」
にこりとしてそう言う瑞原の手に引っ張られて立ち上がった。
「鳴海くん、おぶろうか?」
「いや、いい」
ひと眠りしたからか先ほどより吐き気や熱っぽさがましになっている気がする。というより寝る前の道中で吐いたからかもしれない。
そのまま連れ立って公園を出た。さっきまでの月明かりの暗闇に目が慣れていたからか、街頭や住宅の明かりが眩しく感じた。目の奥にまで届くような光だ。
電気が生み出すオレンジの明かりが、こんなに恋しくて安心したことはない。
彼と一緒に夜の住宅街をとぼとぼと歩いた。鳴海は意味もなく、2色のタイルが違い違いに並ぶ模様の境目をあみだくじみたいに目で追っていた。
ふとある一軒家から美味しそうな晩御飯の匂いと大型犬の吠える声がして、さっとそちらに目が奪われる。大きな庭があって、天井の高い家だ。ここにもオレンジの光が柔らかく灯っていた。
そしてそのまま視線の先にいた瑞原をぼんやりと眺めているうちに、なぜか話しかけていた。
「ぶっちゃけ暗いのって怖くない?」
彼はいつもの笑みをたたえてこちらを見下ろした。
「そう?」
「怖いよ」
鳴海は視線を外して手を擦りながら答える。
「幽霊とか出てきそうだから?」
「そうじゃなくて。ふつうに怖い。ただ暗いだけで怖い。理由とかなくて。なんか心がざわざわするっていうか」
「そうかな〜……でも慣れるよ」
彼の声音と、ふと考えるように視線を前に向けた横顔が、今日のどの瞬間よりも大人びて見えた。思わず彼の方を再び見てしまったくらいだ。
「慣れる?」
「うん。慣れる慣れる。僕も昔はちょっと怖かったけど、もう慣れた。ぜんぜん平気」
そう言って彼はにんまりと笑ってみせた。
鳴海はむかっとした。その笑みにも発言にも。
「昔」という響きが特にいけすかない。
今は全く怖くないんですね!と睨み付けようとしたとき、彼のシャツには僕の嘔吐物が付いていて、ズボンは土でどろどろ、髪はよれよれだった。
鳴海は思わずぷっと吹き出した。まあいいか。こいつがいけすかないやつに変わりはないけど今回は許そう。
なんだか今日は途方もなく長かった。
そんな物思いに耽っているうちに、大きな道路に出ていた。向かいに緑の看板を掲げるほかベン屋が見えた。
あれ、もしや……。夜の景色は見慣れないから一瞬わからなかったが、あそはよく日曜の昼食を買いに行くお店ではないか。ぱっと右に視線を移すと、チェーン店の珈琲屋がある。間違いないと確信した。
胸の奥が一気に熱くなる。さっきまでの不安が嘘みたいに引いていく。見覚えのあるものが、こんなにも心強いとは思わなかった。
帰ってきんだ。
ようやく目の前に現れた見知った街並み———
気づけば瑞原のことをほっぽり出して、うわーっと叫びながら走り出していた。
後ろを振り返る余裕なんてなかった。頭の中は「帰れる」それだけでいっぱいだった。足が地面を蹴るたびに、その実感が強くなる。
考えるよりさきに動いていた。懐かしさと感動と安心といろんな感情がない混ぜになって爆発してしまったのだ。
うまく整理なんてできない。ただ前へ進みたい衝動だけがあった。胸の奥がぐちゃぐちゃのまま、それでも軽い。
夢中だった。ひたすらに走った。何度もゼーゼーしながら立ち止まっては、また走り出した。道のりを覚えている足が勝手に回っていくようだった。
見慣れた角や電柱が次々に現れる。そのたびに確信が強くなる。間違っていない、この道で合っている。
アパートを見上げて、自分の家にオレンジが灯っているのを見咎めたとき、涙が溢れた。
止めどなく目から零れ落ちる。今日は泣いてばかりだ。
袖で涙をごしごしと拭いながら階段を駆け上がった。足がもつれそうになった。
息を整えながらピンポンを押す。間もなくぱたぱたと玄関を走る音がドア越しに聴こえる。
「どうしたの〜ひろちゃんー」
扉が開くと……眉を八の字にした母が出てきた。僕は母の胸に勢いよく飛び込んだ。いつもの匂い。いつもの声。いつもの家。
「うん」
鳴海はまた泣きそうになって、これしか言えなかった。多くを言ったら嗚咽が声に乗ってしまいそうだった。中学生にもなって泣いてるところなんてみられたくない。泣いていたのはバレバレなのだろうが。
「ママが帰ってきたらね、お布団がお大入り様みたいになってリビングから覗いてたわよ」
「うん、へへっ……」
わざとおどけたようにいう母の口調がおかしくてくすぐったかった。
