そして、いよいよ前線基地から離れる日がやってきた。
先にオーフレア様たちが率いる部隊が出発するので、僕たちは見送りに出た。
「ケン君、本当にありがとうね。ケン君のおかげで、魔法使いとしても自信がついたわ」
「それに、友達も治療してくれたわ。王都に着いたら、また会いましょう」
セレナさんとユリアさんは、僕とスラちゃんとガッチリと握手した。
捕虜になっていた同期の女性兵は、一足先に麓の軍事基地に向かったという。
「あー、ようやく娘と会えるぞ。きっと、パパに会えなくて淋しいはずだ」
「相変わらず、親バカね……」
そして、オーフレア様とローリー様も馬車に乗り込んだ。
個人的には、オーフレア様の奥さんと娘さんがどんな人なのか気になっていた。
もしかしたら、王都に着いたら会えるかもしれないね。
みんなを見送って少ししたら、僕たちもいよいよ馬車に乗り込んだ。
「ゴードン様、色々とありがとうございました」
「お礼を言うのは私の方だ。ケン君とスラちゃんのおかげで、多くの兵の命が救われた。感謝する」
僕とスラちゃんは、ゴードン様とガッチリと握手をした。
ゴードン様が部隊を指揮したからこそ、奇襲を防げたんだよね。
司令官としての任期はもう少しあるそうなので、王都で会えるのも少し先だ。
そして、僕とスラちゃんはヘルナンデス様とルーカス様の馬車に乗り込んだ。
「いってきまーす!」
「「「「「気をつけて行ってこいよ!」」」」」
僕とスラちゃんが馬車の窓から手を振ると、見送りの兵も手を振り返した。
そして、半年以上過ごした国境の前線基地も段々と見えなくなった。
「ずっと同じところにいたので、何だか淋しい気持ちです」
「基地の兵はケン君に良くしていたし、そういうところも影響しているのだろう」
ちょっとアンニュイな気分になっている僕とスラちゃんを、ヘルナンデス様が強めに撫でてきた。
みんな良い人だったし、多くの人が無事に王都に帰れて良かったと思っていた。
そして、馬車は段々とガルフォース辺境伯領の町中に入り、屋敷を目指していく。
「町も人も、とっても活気があります。こうしてみると、人々を守れて良かったと思います」
「人々が平和に暮らすことがどれだけ大事なのか、私も改めて実感した」
馬車の窓から商店街で買い物をする人々を眺めながら、ルーカス様も感慨深そうに話をしていた。
町の人の笑顔を見ると、僕とスラちゃんも笑顔になっちゃいそうだね。
ドーン。
そして、僕たちを乗せた馬車は無事にガルフォース辺境伯家の屋敷に到着した。
うん、分かっていたけどとんでもなく大きな屋敷だ。
実家の屋敷が、何個も入りそうな大きさだ。
既に話がついていたのか、馬車から降りると応接室に案内された。
「おお、無事に戻ってきたか。ハハハ、これは良かった」
すると、ボーガン様が景気よく笑いながら僕たちを出迎えてくれた。
案内されて席に着くと、ボーガン様が僕の方を見て凄いことを言ってきたのだ。
「そうそう、ケンのことも物凄く話題になっているぞ。亡くなった【蒼の令嬢】の息子である【蒼の治癒師】が、多くの兵を救ったってな」
ゴホッ、ゴホッ。
あ、危うくお茶を吹き出しそうになってしまった。
えっ、えっ、ど、どういうことなの?
ヘルナンデス様とルーカス様は、どうやらこの話を知っているみたいだ。
「戦況を国民に伝えるとしても、どうやって伝えるかが問題だ。すると、交代で王都に戻った兵がケン君の治療が凄かったと周囲に話したのだよ」
「すると、たまたま教会の聖職者がこの話を聞いて、ケン君の母親がイリスさんだと知ったのだよ。そこで、髪色を参考にして話をしたところ、元々のイリスさんの善行もあって一気に噂が広まったんだ」
あの、ヘルナンデス様、ルーカス様、それってとんでもないことじゃないですか……
僕の母親が想像以上に有名人だったのは何となく気がついたが、まさか僕まで有名人になる必要はないと思いますよ。
しかも、僕にまで大層な二つ名までついていますよ……
「あと、ケン君の父親と兄が他の兵にケン君を国境に送ったとベラベラと話したのもあり、完全に逆境に追い込まれているらしい」
「小さな子を屋敷に監禁していた上に、自らの手を汚さずに処分しようとした。親や兄として以前に、人としてありえないとね」
ああ、うん。
正直なところ、父親と兄の事はどうでも良いと思った。
自分がやった事や言いふらした事がどんな事なのか、全く理解していないのだろう。
挙国体制を取っている中で軍人貴族が起こした発言だから、どう考えても処分対象だろう。
「ケンの噂は、ほぼ自然発生的に人々へ広まった。その結果、ケンを保護している王家と軍の名声を高めることにも繋がった。更に、道中急いでいるのに多くの人を治療したのもある。更に、捕虜になった帝国兵も治療した。小さいのに、何て心優しい子どもなのだろうとな」
「あのあの、町での治療もダッシュ伯爵領とグロリアス子爵領しかしていないし、帝国兵はほぼ僕とスラちゃんの魔法で怪我をしちゃったんです」
「ケンよ、それだけで十分な功績だ。それに、許可した王国軍も人格が優れていると言われている」
ハーデス様も、上機嫌で話に加わっていた。
うん、これ以上は何を言っても無駄っぽい。
僕とスラちゃんは、思わずガックリとしてしまった。
しかし、話はこれで終わらなかった。
「今夜は、王国を守った英雄を招いての夕食会を開く。周辺領地の貴族も来るぞ。皆が、噂の【蒼の治癒師】に会いたがっているぞ」
えっ、夕食会があるの?
えっ、えっ?
僕とスラちゃんは思わずヘルナンデス様とルーカス様を見たが、二人ともにこやかに頷くだけだった。
「そうそう、今夜は屋敷にも泊まってもらうぞ。ハハハ、国の英雄を招くことは我が家の誇りにもなる」
これは、とんでもないことになってきた。
と、ここであることに気がついた。
「ルーカス様、もしかして王都までの道中でも同じように夜会に出るんですか?」
「ダッシュ伯爵家やグロリアス子爵家のように、周囲の貴族領地を統括する貴族家で行われる。ケン君は、貴族の義務として参加することになる」
ここで初めて、オーフレア様とローリー様が僕にご愁傷様という表情をした理由が分かった。
正直言うと、確かに面倒くさいことだ。
とはいえ、断るのは限りなく難しいだろう。
僕とスラちゃんは、またまたガックリとしてしまったのだった。
先にオーフレア様たちが率いる部隊が出発するので、僕たちは見送りに出た。
「ケン君、本当にありがとうね。ケン君のおかげで、魔法使いとしても自信がついたわ」
「それに、友達も治療してくれたわ。王都に着いたら、また会いましょう」
セレナさんとユリアさんは、僕とスラちゃんとガッチリと握手した。
捕虜になっていた同期の女性兵は、一足先に麓の軍事基地に向かったという。
「あー、ようやく娘と会えるぞ。きっと、パパに会えなくて淋しいはずだ」
「相変わらず、親バカね……」
そして、オーフレア様とローリー様も馬車に乗り込んだ。
個人的には、オーフレア様の奥さんと娘さんがどんな人なのか気になっていた。
もしかしたら、王都に着いたら会えるかもしれないね。
みんなを見送って少ししたら、僕たちもいよいよ馬車に乗り込んだ。
「ゴードン様、色々とありがとうございました」
「お礼を言うのは私の方だ。ケン君とスラちゃんのおかげで、多くの兵の命が救われた。感謝する」
僕とスラちゃんは、ゴードン様とガッチリと握手をした。
ゴードン様が部隊を指揮したからこそ、奇襲を防げたんだよね。
司令官としての任期はもう少しあるそうなので、王都で会えるのも少し先だ。
そして、僕とスラちゃんはヘルナンデス様とルーカス様の馬車に乗り込んだ。
「いってきまーす!」
「「「「「気をつけて行ってこいよ!」」」」」
僕とスラちゃんが馬車の窓から手を振ると、見送りの兵も手を振り返した。
そして、半年以上過ごした国境の前線基地も段々と見えなくなった。
「ずっと同じところにいたので、何だか淋しい気持ちです」
「基地の兵はケン君に良くしていたし、そういうところも影響しているのだろう」
ちょっとアンニュイな気分になっている僕とスラちゃんを、ヘルナンデス様が強めに撫でてきた。
みんな良い人だったし、多くの人が無事に王都に帰れて良かったと思っていた。
そして、馬車は段々とガルフォース辺境伯領の町中に入り、屋敷を目指していく。
「町も人も、とっても活気があります。こうしてみると、人々を守れて良かったと思います」
「人々が平和に暮らすことがどれだけ大事なのか、私も改めて実感した」
馬車の窓から商店街で買い物をする人々を眺めながら、ルーカス様も感慨深そうに話をしていた。
町の人の笑顔を見ると、僕とスラちゃんも笑顔になっちゃいそうだね。
ドーン。
そして、僕たちを乗せた馬車は無事にガルフォース辺境伯家の屋敷に到着した。
うん、分かっていたけどとんでもなく大きな屋敷だ。
実家の屋敷が、何個も入りそうな大きさだ。
既に話がついていたのか、馬車から降りると応接室に案内された。
「おお、無事に戻ってきたか。ハハハ、これは良かった」
すると、ボーガン様が景気よく笑いながら僕たちを出迎えてくれた。
案内されて席に着くと、ボーガン様が僕の方を見て凄いことを言ってきたのだ。
「そうそう、ケンのことも物凄く話題になっているぞ。亡くなった【蒼の令嬢】の息子である【蒼の治癒師】が、多くの兵を救ったってな」
ゴホッ、ゴホッ。
あ、危うくお茶を吹き出しそうになってしまった。
えっ、えっ、ど、どういうことなの?
ヘルナンデス様とルーカス様は、どうやらこの話を知っているみたいだ。
「戦況を国民に伝えるとしても、どうやって伝えるかが問題だ。すると、交代で王都に戻った兵がケン君の治療が凄かったと周囲に話したのだよ」
「すると、たまたま教会の聖職者がこの話を聞いて、ケン君の母親がイリスさんだと知ったのだよ。そこで、髪色を参考にして話をしたところ、元々のイリスさんの善行もあって一気に噂が広まったんだ」
あの、ヘルナンデス様、ルーカス様、それってとんでもないことじゃないですか……
僕の母親が想像以上に有名人だったのは何となく気がついたが、まさか僕まで有名人になる必要はないと思いますよ。
しかも、僕にまで大層な二つ名までついていますよ……
「あと、ケン君の父親と兄が他の兵にケン君を国境に送ったとベラベラと話したのもあり、完全に逆境に追い込まれているらしい」
「小さな子を屋敷に監禁していた上に、自らの手を汚さずに処分しようとした。親や兄として以前に、人としてありえないとね」
ああ、うん。
正直なところ、父親と兄の事はどうでも良いと思った。
自分がやった事や言いふらした事がどんな事なのか、全く理解していないのだろう。
挙国体制を取っている中で軍人貴族が起こした発言だから、どう考えても処分対象だろう。
「ケンの噂は、ほぼ自然発生的に人々へ広まった。その結果、ケンを保護している王家と軍の名声を高めることにも繋がった。更に、道中急いでいるのに多くの人を治療したのもある。更に、捕虜になった帝国兵も治療した。小さいのに、何て心優しい子どもなのだろうとな」
「あのあの、町での治療もダッシュ伯爵領とグロリアス子爵領しかしていないし、帝国兵はほぼ僕とスラちゃんの魔法で怪我をしちゃったんです」
「ケンよ、それだけで十分な功績だ。それに、許可した王国軍も人格が優れていると言われている」
ハーデス様も、上機嫌で話に加わっていた。
うん、これ以上は何を言っても無駄っぽい。
僕とスラちゃんは、思わずガックリとしてしまった。
しかし、話はこれで終わらなかった。
「今夜は、王国を守った英雄を招いての夕食会を開く。周辺領地の貴族も来るぞ。皆が、噂の【蒼の治癒師】に会いたがっているぞ」
えっ、夕食会があるの?
えっ、えっ?
僕とスラちゃんは思わずヘルナンデス様とルーカス様を見たが、二人ともにこやかに頷くだけだった。
「そうそう、今夜は屋敷にも泊まってもらうぞ。ハハハ、国の英雄を招くことは我が家の誇りにもなる」
これは、とんでもないことになってきた。
と、ここであることに気がついた。
「ルーカス様、もしかして王都までの道中でも同じように夜会に出るんですか?」
「ダッシュ伯爵家やグロリアス子爵家のように、周囲の貴族領地を統括する貴族家で行われる。ケン君は、貴族の義務として参加することになる」
ここで初めて、オーフレア様とローリー様が僕にご愁傷様という表情をした理由が分かった。
正直言うと、確かに面倒くさいことだ。
とはいえ、断るのは限りなく難しいだろう。
僕とスラちゃんは、またまたガックリとしてしまったのだった。


