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 もそもそ、もそもそ。

「うん? もう朝……」
「「うーん……」」

 王都に戻った翌朝、僕はいつもの時間に起きた。
 すると、ベッドの中でアイちゃんとリュウちゃんが気持ちよさそうに寝ていた。
 ギュッと手を繋いでいて、二人はとても仲がいい。
 そういえば、まだ緊張しているから一緒に寝て欲しいと頼まれたっけ。
 こうして、安心して寝られるのはとても良いことだと思った。
 因みに、ケイトちゃんはクリスと一緒に寝ていた。
 スラちゃん達もまだ寝ているけど、そろそろ起きないとね。

「今日は、三人の服を作りに商会の人が来るよ。あと、僕の実家からフリージアお祖母様とクリスの実家からケーラさんが来るって。みんなに会いたいんだよ」
「「わーい!」」

 朝食時に、三人の子ども達に今日の予定を伝えた。
 すると、ケイトちゃんとリュウちゃんは大喜びしていたのだけど、何故かアイちゃんは少し俯き加減だった。

「その、おかね、ないです……」

 あっ、そっか。
 アイちゃんは、服を作るお金の事を気にしていたんだ。
 幼いのに、とてもしっかりしていた。

「お金は大丈夫だよ。僕が、みんなにプレゼントするよ。もしかしたら、フリージアお祖母様とケーラさんもみんなに服をプレゼントするかもね」
「えっと、ありがとう……」

 アイちゃんは、少しもじもじしながらも僕にお礼を言った。
 まだ僕の屋敷での生活が始まったばっかりだから、これから徐々に慣れていけば大丈夫。
 ハンナおばさんも、このくらいは問題ないと言っていた。
 さてさて、僕とクリスは仕事があるからそろそろ出かけないとね。

「アイちゃんとリュウちゃんは、少し前に親にスラム街に置いていかれたみたいです。二人とも孤児と出ていたので、既に親は亡くなったのかと。親は、元から家を空けることが多かったそうです」
「うーん、元々住んでいた所もスラム街だというし、両親は真っ当な仕事をしていたのか分からない。こればかりは、もう追及してもしょうがないだろう」

 王城の陛下の執務室で、僕はアイちゃんとリュウちゃんの説明を行った。
 あくまでもアイちゃんから聞いた内容なので、陛下も判断は避けた。

「特に、アイちゃんはずっとリュウちゃんを守ってきたので少し遠慮気味です。でも、暫くすれば慣れるかと思います」
「心が落ち着くのに、少しの時間は必要だ。子ども達も新しい友達ができると思っているみたいだが、謁見が終わるまで待つようにと言ってある」

 アーサー様が苦笑しながら言っていたが、きっとアリアちゃん達は早くアイちゃんとリュウちゃんと遊びたいんだ。
 きっと、みんな仲良しになるはずだ。
 さてさて、僕も書類整理を頑張らないと。
 一月に入って直ぐに講和会議に出ていたから、仕事がそこまで出来ていないんだよね。

 カキカキ、ペラペラ。
 カキカキ、ペラペラ。
 カキ……

 あれ?
 この書類、何かおかしいなぁ。
 ここは、詳しい人に聞いてみよう。

「アーサー様、この屋敷の補修の補助金申請なんですけど、金額を書き換えたりした跡があります」
「どれどれ。うん、これは……」

 屋敷の庭を修理する申請書なんだけど、もう数字が滅茶苦茶です。
 アーサー様も、申請書を手に取ると直ぐに陛下と色々と確認していた。

「単に却下するだけなら簡単だが、この数字の改ざんは明らかに何かを企んでいる跡がある。スラちゃん、ピーちゃん、この屋敷への潜入を命じる」
「ピッ」

 僕の席にいたスラちゃんとピーちゃんは、陛下の執務机にやってきて綺麗な敬礼をした。
 職員から屋敷の場所を教えてもらい、スラちゃんはピーちゃんに乗って窓から飛んでいった。

「ケン、よく見つけた。この貴族は、過去に庭の工事の補助金申請を出している。単に申請期間の問題もあるが、こいつは貴族主義の連中だ。何かある可能性が高い」

 どうも度々陛下の方針に口を挟む貴族らしく、貴族は生まれ持って凄い存在だと思っているらしい。
 でも、その凄い存在が不正な申請書を出してはいけないと思うよ。
 改めて気を引き締めて、僕は他の書類の確認を行った。
 すると、昼食前にスラちゃんとピーちゃんが陛下の執務室に戻ってきた。

 ふりふりふり。

「えっと、庭の補助金申請は嘘みたいです。前回も業者からキックバックを受けていて、今回はもっと沢山のお金を手に入れようとしているみたいです」
「ピィ」
「ピーちゃんが、庭にいる鳥に話を聞いてくれました。庭におかしい所はなく、少なくとも五年間は工事をしていないそうです。今は、アクアちゃんとリーフちゃんが潜入しています」

 僕がスラちゃんとピーちゃんの話を通訳すると、陛下とアーサー様の怒りのボルテージがズゴゴゴと上がっていった。
 スラちゃんは、更にスラスラと紙に何があったかを書いていた。

「業者名なども出ているな。ついでだから、この業者にも捜査をするか」
「確か、この業者も手抜き工事が多いと他の貴族からクレームが出ていましたね。この業者経由で、貴族にも手を出せます」

 陛下とアーサー様は、スラちゃんの報告書を手にして色々と話をしていた。
 その間に、スラちゃんとピーちゃんは職員から業者の店舗の位置を聞いていた。
 そして、陛下のゴーサインでスラちゃんはピーちゃんに乗って業者の店舗へと向かった。
 更に、陛下は僕にある命令を出した。

「ケン、早めに昼食にしろ。午後イチで、先に業者への家宅捜索を行う」
「えっ、僕がですか?」
「ケンが不正な書類を見つけた。それに、ケンとクリス以外ではスラちゃん達の通訳はできない」

 付き合いの長いルーカス様とヘルナンデス様なら、スラちゃんの話なら分かりそうだけど思ってしまったり。
 とにかく、午後イチで動く事になった為、僕は魔法袋からお弁当を取り出していそいそと食べ始めたのだった。