学校一のモテ男子が、なぜか俺にだけ甘えてくる ──イケメン甘えん坊男子×保護者系眼鏡男子の学園BL

王太陽は、水泳部に入った。バレー部にも、茶道部にも入った。

 毎日何かしらの部活がある。アクティブなやつだ。

「水泳部入ってるとさー、暑い日にシャワー浴びれんのがいいよなー」

 快活に王太陽は、言った。

「それな」

 おれは、言った。

「正直、めちゃ羨ましいよ。特に、夏になったら最高じゃね?」

 夏場は、教室内はエアコンがきくだろうが、一歩外に出たら、待ち構えているのは、炎熱地獄。

 廊下もトイレも、めまいがしそうなほどの熱気がこもるのは、目に見えている。

「それ!」

 王太陽が、明るい表情になった。

「それなんだけどさ、部長に訊いたら、ひとりだけならいいって」
「え? は? 何が?」

 おれは、目をぱちくりさせた。

「おれの友だち、ひとりくらいなら、シャワー使っていいってさ」
「……」
「夏場さ、帰る前にシャワー浴びれたら、最高だろ!」

 おれは、言葉につまった。

「……そりゃ、最高、だけど」
「だろ!」
「でも……」

 おれは、言い淀んだ。

「水泳部じゃないのにシャワーなんて、使いにくいよ……」
「またまたぁ。律は、真面目だな。部長がいいって言ってんだから、いいんだよ!」
「そうは、言われても……」
「水泳部の部長の彼女、茶道部の部長だよ。だから、全然かまわないって」
「あ、そうなの?」

 王太陽は、頷いた。

「だから、茶道部の稽古のあととか、使えば、って」
「えー、マジか」

 おれの心は弾んだ。

「わー、マジありがたい!」
「だろ!」
「すげーうれしい!」

 おれと王太陽は、小学生のように、手を取り合って喜んだ。

 そのままの勢いで、おれは言った。

「じゃあ、一緒に浴びような」
「……は?」
 
 王太陽の動きが止まる。

 さっきまで快活だった顔が、みるみるうちに赤くなる。

「な、なに言ってんだよ律!」
「なにって、シャワー」
「わ、わかってるよ!」
 
 太陽はぶんぶん首を振る。耳まで真っ赤だ。
 
 おれは首をかしげる。

「どうかした?」
 
 太陽は両手で顔を覆った。

「心の準備とかあるだろ普通!」
「シャワーに? 心の準備?」
 
 おれは、くすっ、と笑った。
 
「一緒にひとつのシャワー浴びるんじゃないよ。シャワーはそれぞれ別でもさ、一緒、に浴びよう」

 王太陽は、そろりそろりと顔から手を離した。

 それでもその顔には、まだ朱色が散っている。

「……律」
「なんだよ?」
「律、って、意外と小悪魔だな」

 おれは、ふきだしていいのか、呆れていいのか、よくわからなかった。

「人生で始めてだよ。そんなこと言われたの」
「小悪魔だよ。おれを、もてあそんでるだろ」
「どこが?」
「一緒に浴びようとか、さらっと言うなよ!」
「別に変な意味じゃないだろ」
「わかってるよ!」
「じゃあ、時間ずらす?」
「それはそれで寂しいだろ!」
「どっちだよ」
 
 太陽は耳まで赤くしながら言う。

「一緒に行って、別々に、浴びる……」
 
 おれは頷いた。

「了解」

 今年の夏は、ささやかな、でもうれしい楽しみが待っている。

 少しだけ、夏が待ち遠しいような、そんな気分になった。