ひとりぼっちの私のことを救ってくれたのは魔法使いでした。

 どのくらいここにいるのだろうか。
 何時間経ったのか、分からないけれど早くここから出たい。

 ゴロゴロ、ガシャンと物凄い音が近くからした。

 ルーナは、危険を感じ必死に入り口を開けようとする。
 やはりなかなか開かず、暗闇の中で道具を探すと、園芸用の小さいスコップを見つける。
 ドンドンと打ち付けていく。
 もう少しで開こうとした瞬間、ドカンと大きな音がする。
 すると、突然物置小屋にまで来て、何かが覆い被さりルーナの意識は、そこで途切れた。

 「い、痛い」

 頭を押えながら目を覚ます。
 真っ暗の中で手を前にかざすとすぐに何か触れる。
 そして、木箱のようなものに閉じ込められていることに気がつく。

 「誰か、誰か開けて、助けて」

 ルーナは、大きな声で精一杯叫ぶ。
 何度も叫ぶが、誰も気付いてくれない。
 もう叫びすぎて声が出ない。

 「たすけ……………て」

 ルーナは、最後の力を振り絞り木箱を殴る。
 手が真っ赤になり、血も出ているのが分かる。
 足元に何かが触れるのを感じ、手繰り寄せるとあのスコップだった。
 ルーナは、何度も何度もスコップで先端を打ち付けると小さな穴ができ、徐々に穴は大きくなっていきます。
 それからは、簡単に崩れていき木箱から出ることができたのです。

 外は夜で、月の光だけしかありません。
 ルーナは、驚き辺りを見回すと聖堂は崩れ本館と別館にまで広がり、一部燃えたような後がありました。

 「う、嘘でしょ」

 言葉になりません。
 何もかも失くなってしまったのです。

 私の存在なんて伝えられないまま、皆は避難したのだろう。

 ルーナが、外に出るまでに三日掛かったのです。
幸いにも炎がこちらとは反対の方向に向いて、煙にも木箱であまり吸わずにすんだ。
 教会の周りには建物がなく、ポツリと教会だけが佇んでいます。
 町の病院まで、歩くと二時間ほどかかります。
 飲まず、食わずのルーナにそんな力は残っていません。

 でも、ここにいても何もなりません。
 でもルーナは、一つだけ探したいものがあり、瓦礫(がれき)の中に足を踏み入れた。
 日記帳だけは、どうしても探したかったのです。
 きっと見つかるはずだ。

 そして、くすんだ赤色が瓦礫の中から見え、拾い上げ中を確認するとルーナの日記帳であった。
 (よかった)

 ルーナは、日記帳を持って教会を後にする。
 生まれてから今まで過ごしてきた場所にお別れを告げる。
 さよなら、私の過ごした場所。


 ルーナは、ゴツゴツとした道なき道を歩いていく。
 周りには、草原が広がるばかりで人を見つけることができない。
 ずっと変わらない景色が続く。
 私はどれくらい歩いたのだろうか。
 もう足が言うことを聞いてくれない。
 段々、空の色が明るくなっていくのが分かる。

 すると、遠くから馬車の足音が聞こえてる。
 (あ、誰か通りかかる)
 ルーナは、気付いてもらうために手を振る。
 馬車が止まると、誰かが降りてきてくれた。
 田舎町には、居ないようなキレイな格好をしている。
 (ああ、もうダメだ。意識が……)

 「た、たすけ………」

 ルーナは、その人に体を預けるようにして倒れてしまいました。
 受け止められた時、がっしりとしていたので男性なのだろうかと、薄れ行く記憶の中で思ったのでした。


 次に目を覚ました時には、白い天井が目の前に広がっていた。

 フカフカのベッドに横になっていた。
 体を起こそうと、力を込めると所々痛みを感じる。
 手には、包帯が巻かれていたり、傷の手当てがされている。
 左の目には、眼帯がされている。

 扉が突然開くと、男性が入ってくる。
 慌てた様子でベッドまで来る。

 「安静にしていないと……」
 「はい」

 この人が、馬車から降りて私のことを助けてくれた人なのだろうか。

 「あ、あの」

 ルーナは、思いきって質問をする。

 「あなたが、私を救ってくれたのですか?」
 「ああ、そうだよ」

 男性は、そう答えた。

 「あの、救ってくださり、ありがとうございました」
 「良いんだよ。大したことはしていないよ」

 改めて男性を見てみると、三十代後半くらいにみえ、顔が細長く、少しふっくらとした体型をしていて、髪は銀色であった。

 「あの、もう一つ聞いても良いですか?」
 「何が知りたいんだい」
 「ここって、どこなのかと思いまして」
 「ここは、僕が泊まっているペンションだよ」
 「ペンション」
 「最初は、病院に連れていこうとしたんだけど、君が嫌がってここに連れてきて医者に見てもらったんだ」
 「そうだったんですね。ご迷惑をお掛けしました」
 「気にしなくて良いんだよ」

 (何てこの人は、優しいのだろう)

 夜になり、二人は改めて自己紹介をする。
 男性の名前は、シャルル・アルジェント。
 この町からずっと南にある水の都フルスという場所に住んでいる。
 これが、男性が教えてくれたことだ。

 ルーナも、教会からやってきてことを伝えた。
 まだ自分のことを詳しく話す勇気がない。

 あとは呼び名を決めた。
 ルーナは、アルジェント様と呼び、アルジェントは、ルーナと呼ぶことになった。


 それから数日ルーナは、ケガを治すため安静にして過ごしていました。
 アルジェント様は、こんな私に食事を毎回持ってきてくれる。
 温かい食事に口に出きるそれだけで十分なのだ。

 「美味しい」

 スープとパン。
 あの頃は、いつも冷めたスープに半分の残りのパンだった。

 あれから一週間ほどが経ったある日。

 「随分ケガもよくなったね。ねえ、ルーナ、君に一つ提案があるんだけど聞いてくれる?」
 「はい」
 「ルーナは、僕と一緒に暮らさない?」
 「え…」

 ルーナは、言葉に詰まった。
 だってそんな言葉を言われたのは、初めてだから。

 「ホントに?」
 「ああ」

 ルーナは、突然椅子から立ち上がり、アルジェントの前までいく。

 「アルジェント様、これを見てもそう言えますか?」

 やろうとした矢先、躊躇(ちゅうちょ)してしまいそうになる。
 止めてしまいたくなる。
 でも……。
 ルーナは、眼帯を勢いよく外し、ゆっくりと両目を開けると、ルーナの秘密が明かされる。
 青色の瞳。

 今まで何度も言われた言葉を聞くと思っていた。
 でも、アルジェントの口から出た言葉は違った。

 「ルーナ、君の瞳はキレイな色をしているね」

 まさか、こんな言葉を聞く日がくるなんて思わなかった。
 ルーナは、自分でも気づかないうち泣いていることに気づいた。
 アルジェントが驚いてあたふたしている。

 「私、一緒に暮らしたいです」

 ルーナは涙を溢しながら、アルジェントに伝えたのでした。

このあと、泣き止むまでそばにいてくれたのでした。