静寂に包まれた廊下を一人の男性が足音を響かせながら部屋に近づいてくる。
ガチャと音を立て部屋のドアが開かれ、眠っている少女に起きるように声をかけながら、閉まっているカーテンを開くと窓を開ける。
「●●●、よく眠れたかい?」
窓から差し込んでくる眩しい光が部屋の中を照らし、眠い目を擦らながら少女がベッドから体を起こす。
男性は、少女が起きたことに気付き振り返ると優しく微笑んでくれている。
少女も笑顔で「はい」と返事をした。
男性は、また窓の方向に体を向ける。
少女は、男性の後ろ姿を眺めていると、窓から入ってきた風が男性の整った短い金色の髪をなびかせている。
少女は、男性のその後ろ姿を見た瞬間、自然と手を伸ばしていた。
すぐにでも掴めそうなほどの距離のようにも感じるし、遠くの距離にいるようにも感じた。
そんなことを思っていた次の瞬間、強い風が吹いた。
風は、少女のベッドまで届き髪の毛が目に入り思わず目をぎゅっと閉じた。
少女は、現実に引き戻されて目を覚ました。
「夢か……」
少女は、微かに残っている夢の中の部屋と比べてみても似ても似つかない部屋に暮らしていたのでした。
天蓋付きのフカフカのベッドにブラウン色の一式揃った家具は、この部屋にはありません。
(あの夢の中の男性は、きっと私の思い描いた理想なのだろう)
固く薄いベッドから起き上がると少女は、部屋にある唯一の小窓を開き手を上げながら伸びをした。
「うん、今日もいい天気」
小窓から風が吹いて、少女の腰の長さまである夜空色の長い髪の毛を風が揺らします。
ここは、モーントライト王国。
王都から、ずっと南に向かうとクラウンという国境にほど近い小さな田舎町がある。
この町にあるパラディース教会という教会で暮らしている。
少女の名前は、ルーナ。
この教会にやって来た頃はまだ生まれ手間もない赤ん坊でした。
あの日は、朝から大雨が降り続いているそのような天気の日だったという。
教会の聖堂の入り口に、ツルや枝といった作りの荒いカゴの中に、布のようなもので包まれた状態でいたところを、教会のシスターが見つけた。
そこから、教会に併設されている孤児院で育てられたのです。
ルーナの名前の由来は、教会のシスターが見つけた際、カゴの中に紙が挟まっていた。
その紙に【ルーナ】と記されており、ルーナという名前になったのである。
あの日から、十五年が経った。
屋根裏部屋の小窓からは、庭が見え朝から元気よく遊んでいる数人の子供たちの姿が見える。
庭にいる他の子供たちに比べて、ルーナの体型は年齢の割に痩せ細った腕と足をしています。
パジャマからいつもの無地の白い長袖のワンピースに着替えていきます。
ルーナの体の大きさよりも小さなワンピースで袖口は短い。
隠れるはずの膝は見えてしまっていて、体の大きさにあっていません。
それでも、ルーナはそのワンピースに着替えるのでした。
もう少しで、朝の点呼の時間が始まります。
その前に、昨日酌んでおいた桶の水で顔を洗い「冷たい」と思わず声に出してしまいました。
クシは、持っていないため髪は簡単に手で梳かす。
髪の毛を前に寄せると、左側の目が見えないようにして隠していきます。
「よしこれでいいかな?」
身支度を終えドアを開くと、すぐに薄暗い急な階段がある。
ゆっくりと階段を下りている途中に、小窓の戸を閉め忘れていることを思い出す。
「あ」
ルーナは、仕方なく向きを変えると階段を急いで上がっていきます。
以前、閉め忘れたときに、偶然、雨が降り部屋中が水浸しになったことがあった。
そのため、晴れていても念のために閉めるようにしているのである。
ルーナは、部屋に戻り小窓を閉める。
また薄暗い急な階段を、また一歩ずつ下りる。
階段を下り終ると、目の前にドアがある。
このドアを開けると、一階の廊下に繋がっていて、少し歩くと外に出れる出入り口がある。
ここは、庭に直接繋がっている。
少し離れたところに緑色のとんがり屋根でレンガ造りの聖堂が見える。
そんな聖堂に、ぞくぞくと孤児たちが集まっていきます。
この教会は、上は十五歳、下は八歳と幅広い年齢の子供達が二十人ほどが一緒に暮らしています。
聖堂の中に入ると、左右に十脚の長椅子があります。
正面には、花の模様のステンドグラスの前には大きな十字架があります。
ルーナは、いつも遅れて聖堂に入ります。
そして、左側の一番後ろの長椅子の窓側の隅に座ります。
子供たちは、前側の長椅子に座り、二人から三人程度が座る小さな長椅子ですが、四人も座っているところもあります。
どんなに座る場所が狭くても、誰もルーナの前の長椅子も、横の長椅子にさえも座っている人はいません。
この光景は、ルーナにとっていつものことでした。
シスターたちが、聖堂に入ってくると、大きな十字架の前に立ちます。
「今から名前を一人ずつ呼びますので、返事をしていってください」
シスターが伝えると、孤児達は返事をします。
「エンジー、クリス、アナ……」
シスターは、ルーナに一瞬視線を移しましたが、すぐに逸らします。
「全員いますね」というとすぐに次の行動に移ってしまいます。
気付いているにも関わらず、ルーナの名前をシスターは呼ぶことはありませんでした。
これもいつものことなのです。
ですが、ルーナは何の表情も見せることなく、真顔を貫きます。
このあと、祈りを捧げる時間を終えると、各自に自由な時間が与えられます。
ルーナは祈りが終り、すぐに立ち上がると、聖堂から早足に出ていきます。
そして、一人になれるいつものあの場所に向かうのです。
この教会の敷地内には、聖堂の他にも本館と別館があり、本館は主に皆で食事をする部屋や孤児達が暮らす部屋があります。
別館は、シスターたちが暮らす部屋があり、ルーナたち含め、用事がない限り滅多に立ち入ることはありません。
ルーナは、何も変わらない毎日をただ一生懸命に生きていたのでした。
ガチャと音を立て部屋のドアが開かれ、眠っている少女に起きるように声をかけながら、閉まっているカーテンを開くと窓を開ける。
「●●●、よく眠れたかい?」
窓から差し込んでくる眩しい光が部屋の中を照らし、眠い目を擦らながら少女がベッドから体を起こす。
男性は、少女が起きたことに気付き振り返ると優しく微笑んでくれている。
少女も笑顔で「はい」と返事をした。
男性は、また窓の方向に体を向ける。
少女は、男性の後ろ姿を眺めていると、窓から入ってきた風が男性の整った短い金色の髪をなびかせている。
少女は、男性のその後ろ姿を見た瞬間、自然と手を伸ばしていた。
すぐにでも掴めそうなほどの距離のようにも感じるし、遠くの距離にいるようにも感じた。
そんなことを思っていた次の瞬間、強い風が吹いた。
風は、少女のベッドまで届き髪の毛が目に入り思わず目をぎゅっと閉じた。
少女は、現実に引き戻されて目を覚ました。
「夢か……」
少女は、微かに残っている夢の中の部屋と比べてみても似ても似つかない部屋に暮らしていたのでした。
天蓋付きのフカフカのベッドにブラウン色の一式揃った家具は、この部屋にはありません。
(あの夢の中の男性は、きっと私の思い描いた理想なのだろう)
固く薄いベッドから起き上がると少女は、部屋にある唯一の小窓を開き手を上げながら伸びをした。
「うん、今日もいい天気」
小窓から風が吹いて、少女の腰の長さまである夜空色の長い髪の毛を風が揺らします。
ここは、モーントライト王国。
王都から、ずっと南に向かうとクラウンという国境にほど近い小さな田舎町がある。
この町にあるパラディース教会という教会で暮らしている。
少女の名前は、ルーナ。
この教会にやって来た頃はまだ生まれ手間もない赤ん坊でした。
あの日は、朝から大雨が降り続いているそのような天気の日だったという。
教会の聖堂の入り口に、ツルや枝といった作りの荒いカゴの中に、布のようなもので包まれた状態でいたところを、教会のシスターが見つけた。
そこから、教会に併設されている孤児院で育てられたのです。
ルーナの名前の由来は、教会のシスターが見つけた際、カゴの中に紙が挟まっていた。
その紙に【ルーナ】と記されており、ルーナという名前になったのである。
あの日から、十五年が経った。
屋根裏部屋の小窓からは、庭が見え朝から元気よく遊んでいる数人の子供たちの姿が見える。
庭にいる他の子供たちに比べて、ルーナの体型は年齢の割に痩せ細った腕と足をしています。
パジャマからいつもの無地の白い長袖のワンピースに着替えていきます。
ルーナの体の大きさよりも小さなワンピースで袖口は短い。
隠れるはずの膝は見えてしまっていて、体の大きさにあっていません。
それでも、ルーナはそのワンピースに着替えるのでした。
もう少しで、朝の点呼の時間が始まります。
その前に、昨日酌んでおいた桶の水で顔を洗い「冷たい」と思わず声に出してしまいました。
クシは、持っていないため髪は簡単に手で梳かす。
髪の毛を前に寄せると、左側の目が見えないようにして隠していきます。
「よしこれでいいかな?」
身支度を終えドアを開くと、すぐに薄暗い急な階段がある。
ゆっくりと階段を下りている途中に、小窓の戸を閉め忘れていることを思い出す。
「あ」
ルーナは、仕方なく向きを変えると階段を急いで上がっていきます。
以前、閉め忘れたときに、偶然、雨が降り部屋中が水浸しになったことがあった。
そのため、晴れていても念のために閉めるようにしているのである。
ルーナは、部屋に戻り小窓を閉める。
また薄暗い急な階段を、また一歩ずつ下りる。
階段を下り終ると、目の前にドアがある。
このドアを開けると、一階の廊下に繋がっていて、少し歩くと外に出れる出入り口がある。
ここは、庭に直接繋がっている。
少し離れたところに緑色のとんがり屋根でレンガ造りの聖堂が見える。
そんな聖堂に、ぞくぞくと孤児たちが集まっていきます。
この教会は、上は十五歳、下は八歳と幅広い年齢の子供達が二十人ほどが一緒に暮らしています。
聖堂の中に入ると、左右に十脚の長椅子があります。
正面には、花の模様のステンドグラスの前には大きな十字架があります。
ルーナは、いつも遅れて聖堂に入ります。
そして、左側の一番後ろの長椅子の窓側の隅に座ります。
子供たちは、前側の長椅子に座り、二人から三人程度が座る小さな長椅子ですが、四人も座っているところもあります。
どんなに座る場所が狭くても、誰もルーナの前の長椅子も、横の長椅子にさえも座っている人はいません。
この光景は、ルーナにとっていつものことでした。
シスターたちが、聖堂に入ってくると、大きな十字架の前に立ちます。
「今から名前を一人ずつ呼びますので、返事をしていってください」
シスターが伝えると、孤児達は返事をします。
「エンジー、クリス、アナ……」
シスターは、ルーナに一瞬視線を移しましたが、すぐに逸らします。
「全員いますね」というとすぐに次の行動に移ってしまいます。
気付いているにも関わらず、ルーナの名前をシスターは呼ぶことはありませんでした。
これもいつものことなのです。
ですが、ルーナは何の表情も見せることなく、真顔を貫きます。
このあと、祈りを捧げる時間を終えると、各自に自由な時間が与えられます。
ルーナは祈りが終り、すぐに立ち上がると、聖堂から早足に出ていきます。
そして、一人になれるいつものあの場所に向かうのです。
この教会の敷地内には、聖堂の他にも本館と別館があり、本館は主に皆で食事をする部屋や孤児達が暮らす部屋があります。
別館は、シスターたちが暮らす部屋があり、ルーナたち含め、用事がない限り滅多に立ち入ることはありません。
ルーナは、何も変わらない毎日をただ一生懸命に生きていたのでした。
