ひとりぼっちの私のことを救ってくれたのは魔法使いでした。

 季節は、完全に冬へと移り変わった。
 外では、粉雪が舞っていたのでした。
 この季節を迎えると、私はなぜだかとても悲しい気持ちになる。

 この季節といえば、クリスマスを思い浮かべる人が多いだろう。
 どんなことを行うかというと、クリスマスツリーを飾り付けたり、贈り物をしたりするのである。
 この情報は、クリスマスに詳しくない私のために、リリーさんが教えてくれたのである。

 一度、教会でクリスマス?に参加したことがある。
 あれが、クリスマスだったのかと、今知ることになった。

 ルーナは、本日も日記を記していた。
 『この時期になると、クリスマスを思い浮かべる。体験したことがあるが、良い記憶ではない。ここでの、クリスマスは楽しい記憶にしたい』

 日記帳を閉じると、ルーナは引き出しに閉まった一冊の本を取り出す。
 『魔法の子』、ずっとこの物語の続きを読んでみたいと思っている。
 もしかしたら、エミリオさんの書店にこの本があるかもしれない。
 会う機会があれば、エミリオさんに聞いてみよう。

 引き出しに本を戻した。
 立ち上がり、クローゼットから暖かいそうな上着を羽織ると、部屋を出ると一階に下り、中庭に出る。

 中庭に来た理由、それは雪を見るためでした。
 ここに来て初めての雪を見る。
 ルーナは、手のひらを上に向かって開くと、空から雪が落ちてきて、手ひらで雪が溶けてゆく。

 「キレイ」

 雪を見て、キレイだと思ったことは、今までなかった。
 後ろから足音が聞こえ、振り返るとシャルルがこちらへ歩いてきていた。
 ルーナの隣にシャルルが並んだ。

 「ルーナ、寒いのに何をしていたんだい?」

 ルーナは、シャルルに返事に答える。

 「雪を見ていました。雪が、こんなにもキレイだなんて思いませんでした」
 「うん、そうだね。キレイだ。君に良いものを見せてあげよう」

 シャルルが、そういうと突然目の前の雪が止まった。
 ルーナは、驚いた。
 そんなルーナを横目に、シャルルはいつもの子供っぽいあの笑顔でいう。

 「時間を止めてみたんだ」

 そういわれたので、ルーナは見渡してみる。

 確かに、時間が止まっている。
 空を飛んでいる鳥も馬の(ひずめ)の音も聴こえない。

 ルーナは、止まっている雪を触ってみる。      
 何とも表現するのが、難しい感触をしている。
 シャルルがルーナに尋ねた。

 「どうかな?」
 「うーん、不思議な感触です。シャルル様も触ってみてください」

 シャルルも触ってみる。

 「確かに不思議な感触をしているね。柔らかい感じかな?」

 二人で十分に楽しんだ。
 そのあと、シャルルは魔法を解くと、止まっていた雪がまた降り出したのでした。

 「楽しかったですね」
 「そうだね。」
 「シャルル様は、普段から魔法を使うのですか?」
 「時と場合によるけれど、それがどうしたの?」
 「もし私のような人間にも、シャルル様に魔法を習ったりしたら、魔法が使えるようになるのでしょうか?」
 「魔法を使ってみたい?」
 「シャルル様の魔法を見てから少し興味をもちました」

 「そうだったんだね。でも、残念ながら魔法を使える遺伝子をルーナは持っていない。だから、魔法を教えたとしても、魔法を使うことは出来ないんだ」
 「そうなのですね」

 ルーナは、残念がり、悲しそうな表情をする。

 「僕が、代わりに魔法をルーナに沢山見せるね」
 「はい!」

 ルーナの表情が明るくなり、笑顔になった。

 「寒いから、そろそろ中に戻ろうか」

 二人は、並んで屋敷に戻る。
 シャルルが、ルーナの頭に乗っている雪を払い落としてくれた。

 「あ、ありがとうございます」

 シャルルのしてくれたことに、ルーナは恥ずかしくなってしまい、急いで自分で雪を払い落とす。

 「では、私は部屋に戻ります」

 足早に階段を上り、部屋に戻っていく。

 「あ、ルーナ」

 シャルルが、話しかけようと声かける間もなく、ルーナが部屋に戻ってしまう。
 ただ、呆然と立ち尽くしていた。
 
 シャルルも書斎に戻る。

 ルーナは、部屋に戻り扉を閉めると、扉の前でへたりこんでしまう。
 (またこの感情だ)

 治まったと、思っていた。
 だってもう、押し花の効果は切れたはずだ。
 ルーナは、別のことに集中することにした。
 本を読もうとしたが、五行目で読むのを止めてしまう。

 「どうして、さっきのことばかり考えてしまうの……」

 その後は、夕食をいつもより急いで食べると、すぐにベッドに入った。

 

 翌日、ルーナが覚ます。
 扉をノックする音が聞こえる。
 
 「リナーでございます。朝の支度のお手伝いに参りました」 

 ルーナは、ゆっくりとした足取りで扉へ向かっていく。

 「はい、今開けます」
 「おはようございます。ルーナ様、どうなさったのですか。顔色があまりよろしくありませんが……」

 リナーは、ルーナの顔を見るなり心配の顔を見せる。

 「だ、大丈夫ですよ。少し寝るのが遅かっただけです」
 「でしたら、もう少しお休みになった方がよろしいかと」
 「そうですね。そうします」

 ルーナは、リナーに支えてもらいながら、ベッドに戻る。
 リナーは、机にあった本に当たってしまい本を落としてしまう。
 本に挟まっていた、押し花が本から外れる。
 リナーは本を拾い上げると、部屋から出ると、扉が閉まった。

 天井を眺め考えていると、眠気がやってきた。
 今は、ただ眠ることにした。


 ルーナが、もう一度目を覚ます頃には、外はすっかり暗くなり始めていたのでした。