七瀬と約束の日。
「あがって」
「おじゃまします」
今日は七瀬くん家にお邪魔して勉強する。
玄関に入って靴をぬいでいると、二階から物音がして、ちょうど誰かおりてきた。
花柄のワンピースを着たロングヘアの子。七瀬に気づいて挨拶する。
「あ、お兄さん、こんにちは」
「まひろちゃん、こんちは。順は?」
「じゅんくんなら、すぐ降りてくると思います」
こんにちはと会釈してくれたので伊達も同じように返す。
順くんって確か弟だよな、前に一度紹介されたことがある。
七瀬を小さくしてちょっと華奢にした細眉で焼けてないバージョンのオールバック。
おもい出していると二階からスカジャンサングラスの順が降りてきた。兄と伊達に気付いて挨拶してくる。
「おまた…あ…お帰り兄貴。と、こんちは」
「こんちは」
「出かけるのか、気を付けてな」
「おう。……いってくる、まひろ行こ
う」
「うん。お邪魔しました」
「いってらっしゃい」
手を降って見送る七瀬の後ろで伊達も手をふる。
七瀬の部屋に通された。
飲み物取ってくると出ていったので一人残される。
前来たときと変わらず、整頓された室内は、色んな布と糸が棚に入っており、可愛い人形が並んで座ってる。
ミシンが置かれた机とその横に、作ったと思われるリボンのついた白いドット柄のワンピース。
相変わらずかわいいもの作ってるなとしげしげと見る。
知らなかった、洋服も作れるのか。
部屋のドアが開いて飲み物を手に七瀬が戻ってきた。七瀬にお礼を言い受け取る。
ワンピースを指さし伊達は尋ねた。
「…これも作ったの?」
「ああ、まだ完成してないけど、さっきの…まひろちゃんに渡す予定」
「へえ、頼まれたの?」
「順に。…内緒なんだと」
「…ふーん、彼女も喜ぶだろ、こんなかわいいの」
「そうだといいけど。…男だぞ」
「…………、え?」
「まひろちゃんの女装は趣味。たまに、素で来たりするしな…」
「…そう、なんだ。てっきり……弟くんとは…?」
「どうなんだろうな」
「……」
…あの子が男…?…確かに、今思い返すと順くんより身体が大きかったような。声も裏声と言われれば……そうかも。気づかなかった…。
すぐそこに、こんな近くに落ちているではないか。
ぼんやりしてる伊達に気付いた七瀬がどうかしたか?と聞いてきた。
頭を軽く振って切り替える。
「ごめん、トイレ借りてもいい?」
「出て右手側だ」
こんな心あらずで勉強なんか出来るだろうか。気を抜くと、今の一連の流れを解読しようと空想の世界にとびそうだ。
いや、勉強をしに来たんだ勉強。
そう自分に言い聞かせ、頬を叩いて戻ってきた伊達。しかしそこには、なぜかワンピースをもって待ち構える七瀬がいた。
「なあ、伊達ちょっと頼みがある。これ、着てくれないか?」
「…、なんて?」
「イヤなら断ってくれていい。…着たイメージが合ってるのか知りたい…だめか?」
「…ええ……、マネキンに、なる分にはいいけど…、はいんの…?」
「背格好同じぐらいだから…少しはかってもいいか?」
「どうぞ……」
すぐに手際良く採寸をすませ、大丈夫だなと七瀬はワンピースをあてがい、威嚇スマイルをみせた。
言われた通りインナーパンイチで着てみる。腰に手をあて伊達は開き直る…どや。
「…」
「…」
七瀬は何も言わず、いかつい真面目な顔で身体周りをチェックする。
笑いもおこらないのはさみしいなという自分を発見した伊達。
七瀬は伊達の腕を横にあげたり、首周りを直しながら話しかける。
「…、着てみてなんか腕上げにくいとか、動きにくいとかきついとかある?」
「……ない、と思う。参考になんのこれ」
「ちょっと歩いて」
長袖ロングワンピースで部屋を歩く伊達の背後にまわりこむ七瀬。
止まってと言われ立ち止まる。
スカートの裾の部分をつまんで、何やら作業をしている模様だが見えない。
机にむかい書き込んでる姿が職人…
顔をあげた七瀬に「もう着替えていい」と言われて丁寧に脱いで返す。
「つき合わせてわるい、助かった」
「いーや、役に立てたなら良かった」
首をふって返事をする。真剣な人をみたら背すじがのびる感じするし、そんな作り手の七瀬を尊敬する。
「なんかお礼する、考えといて」
七瀬の申し出に、伊達はお礼なんていい、と断ろうとした。
けれど一瞬閃いて、思ったことを言おうと口を開きかけた。
頭に浮かんだ、順とまひろのことを知りたい、という言葉を一度セーブする。
「…あの、このワンピースを渡した後日談を聞かせて下さい」
「…いいぞ、…そんなんでいいのか…?」
「うん(おれにとっては)。着ただけだし」
「…なら、…わかった」
「勉強するか」
「するか」
友のためにひとはだ脱いだ日。
「あがって」
「おじゃまします」
今日は七瀬くん家にお邪魔して勉強する。
玄関に入って靴をぬいでいると、二階から物音がして、ちょうど誰かおりてきた。
花柄のワンピースを着たロングヘアの子。七瀬に気づいて挨拶する。
「あ、お兄さん、こんにちは」
「まひろちゃん、こんちは。順は?」
「じゅんくんなら、すぐ降りてくると思います」
こんにちはと会釈してくれたので伊達も同じように返す。
順くんって確か弟だよな、前に一度紹介されたことがある。
七瀬を小さくしてちょっと華奢にした細眉で焼けてないバージョンのオールバック。
おもい出していると二階からスカジャンサングラスの順が降りてきた。兄と伊達に気付いて挨拶してくる。
「おまた…あ…お帰り兄貴。と、こんちは」
「こんちは」
「出かけるのか、気を付けてな」
「おう。……いってくる、まひろ行こ
う」
「うん。お邪魔しました」
「いってらっしゃい」
手を降って見送る七瀬の後ろで伊達も手をふる。
七瀬の部屋に通された。
飲み物取ってくると出ていったので一人残される。
前来たときと変わらず、整頓された室内は、色んな布と糸が棚に入っており、可愛い人形が並んで座ってる。
ミシンが置かれた机とその横に、作ったと思われるリボンのついた白いドット柄のワンピース。
相変わらずかわいいもの作ってるなとしげしげと見る。
知らなかった、洋服も作れるのか。
部屋のドアが開いて飲み物を手に七瀬が戻ってきた。七瀬にお礼を言い受け取る。
ワンピースを指さし伊達は尋ねた。
「…これも作ったの?」
「ああ、まだ完成してないけど、さっきの…まひろちゃんに渡す予定」
「へえ、頼まれたの?」
「順に。…内緒なんだと」
「…ふーん、彼女も喜ぶだろ、こんなかわいいの」
「そうだといいけど。…男だぞ」
「…………、え?」
「まひろちゃんの女装は趣味。たまに、素で来たりするしな…」
「…そう、なんだ。てっきり……弟くんとは…?」
「どうなんだろうな」
「……」
…あの子が男…?…確かに、今思い返すと順くんより身体が大きかったような。声も裏声と言われれば……そうかも。気づかなかった…。
すぐそこに、こんな近くに落ちているではないか。
ぼんやりしてる伊達に気付いた七瀬がどうかしたか?と聞いてきた。
頭を軽く振って切り替える。
「ごめん、トイレ借りてもいい?」
「出て右手側だ」
こんな心あらずで勉強なんか出来るだろうか。気を抜くと、今の一連の流れを解読しようと空想の世界にとびそうだ。
いや、勉強をしに来たんだ勉強。
そう自分に言い聞かせ、頬を叩いて戻ってきた伊達。しかしそこには、なぜかワンピースをもって待ち構える七瀬がいた。
「なあ、伊達ちょっと頼みがある。これ、着てくれないか?」
「…、なんて?」
「イヤなら断ってくれていい。…着たイメージが合ってるのか知りたい…だめか?」
「…ええ……、マネキンに、なる分にはいいけど…、はいんの…?」
「背格好同じぐらいだから…少しはかってもいいか?」
「どうぞ……」
すぐに手際良く採寸をすませ、大丈夫だなと七瀬はワンピースをあてがい、威嚇スマイルをみせた。
言われた通りインナーパンイチで着てみる。腰に手をあて伊達は開き直る…どや。
「…」
「…」
七瀬は何も言わず、いかつい真面目な顔で身体周りをチェックする。
笑いもおこらないのはさみしいなという自分を発見した伊達。
七瀬は伊達の腕を横にあげたり、首周りを直しながら話しかける。
「…、着てみてなんか腕上げにくいとか、動きにくいとかきついとかある?」
「……ない、と思う。参考になんのこれ」
「ちょっと歩いて」
長袖ロングワンピースで部屋を歩く伊達の背後にまわりこむ七瀬。
止まってと言われ立ち止まる。
スカートの裾の部分をつまんで、何やら作業をしている模様だが見えない。
机にむかい書き込んでる姿が職人…
顔をあげた七瀬に「もう着替えていい」と言われて丁寧に脱いで返す。
「つき合わせてわるい、助かった」
「いーや、役に立てたなら良かった」
首をふって返事をする。真剣な人をみたら背すじがのびる感じするし、そんな作り手の七瀬を尊敬する。
「なんかお礼する、考えといて」
七瀬の申し出に、伊達はお礼なんていい、と断ろうとした。
けれど一瞬閃いて、思ったことを言おうと口を開きかけた。
頭に浮かんだ、順とまひろのことを知りたい、という言葉を一度セーブする。
「…あの、このワンピースを渡した後日談を聞かせて下さい」
「…いいぞ、…そんなんでいいのか…?」
「うん(おれにとっては)。着ただけだし」
「…なら、…わかった」
「勉強するか」
「するか」
友のためにひとはだ脱いだ日。
