優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 手を繋いできて、繋ぎ返した。恥ずかしいため、顔を見られなかった。

「遊園地か、お前はいつぶりだ」
「中学の修学旅行かな」
「なるほどな」
「のぞむんは?」
「僕も同じだろうな。まあ、あの時はずっと一人だったけど」
「今日は思う存分、遊ぼう」
「ああ、だな」

 ジェットコースターに乗るために、列に並んでいた。流石は、イブである。
 想像の何倍も混んでいて、乗り物に乗るのに時間がかかる。まあ、こいつとなら楽しいけど。

 雪が降りそうなぐらいに寒いため、凍えそうだ。こういう時に限って、手袋を持ってくるの忘れるんだから。
 風が吹いたため、思わず腕を組んだ。手を繋いでくれて、暖かくなった。

 恥ずかしいため、話題を振ることにした。そうか中学の修学旅行か、あの時は一人だったな。
 気を遣って、誘ってくれた人もいた。嫌だろうなと思ったから、断ったんだよな。

 あれから一年以上経って、恋人ができるなんて思いもしなかった。あの時の僕に言いたいな。

 ――――お前を愛してくれる人が現れるよ。

 恥ずかしいことを思ってしまって、朔弥くんの顔を見た。すると優しく微笑んでくれて、嬉しくなった。

「ぶえっ! クション!」
「豪快な奴だな。寒いだろ、これ誕生日プレゼント」
「黄色と水色か、いいな。ありがと、のぞむんっ! 本当に嬉しいよっ! 世界一のマフラーだよっ!」
「喜びすぎだろ……暖かいか? クシュン」
「一緒に巻こうか」
「でも」
「俺一人じゃ、長すぎるからな」
「そういうことなら、仕方ないな。勝手にしろ」
「へーい」

 談笑していたが、豪快なくしゃみをしていた。そのため、僕は買っておいたプレゼントを渡すことにした。
 黄色と水色のマフラーで、淡い綺麗な色合いだ。喜んでくれて、本当に良かった。

 口では悪態をつくが、内心本当に嬉しい。僕もくしゃみをすると、半分巻いてくれた。
 体をより一層、密着させた。マフラーの暖かさよりも、彼の温もりの方が暖かい。

 最初から一緒に巻くつもりだったのは、黙っておこう。恥ずかしいし、なんかバカップルみたいだから。

「いやっほー!」
「最高!」
「いやあ〜楽しかったな〜」
「ほんと、いっぱい乗ろっ!」
「おうよっ! 制覇だっ!」
「どんとこいっ!」

 ジェットコースタ―が楽しすぎて、はしゃいでいた。途中で曲がったり、急降下したりする。
 他にも後ろ向きのもあったり、すごいスピードのもあった。僕たちは、心から楽しんだ。

 待ち時間もあったが、雑談しているとあっという間だった。制覇は無理かもだけど、イケイケドンドンだった。
 こいつといると、本当に楽しいな。手を繋いだり、腕を組んだりしていた。

 好奇の目に晒されたけど、全然怖くない。こいつと一緒にいるってだけで、勇気が溢れてくるからだ。

「流石に、疲れたな」
「だね〜好きだけど、これ以上はいいかな」
「もっと乗りたいが……諦めるか」
「別に、これから幾らでも来られるんじゃないか」
「確かにな〜のぞむんも大胆だね〜」

 ジェットコースターに、一気に五つ乗った。近くのベンチに座って、項垂れていた。
 流石に好きでも、無理なのだと分かった。これ以上は、体がどうにかなってしまう。

 腰が痛くなってきたし、朔弥くんは首を揉んでいる。体が悲鳴をあげているため、今日はもうやめておこう。
 もっと乗りたいって、嘆いている。でもこれからも、普通に来られるでしょ。

 僕の言葉に、朔弥くんは喜んでいた。大胆だと言われて、意味が分からない。
 だけど直ぐに、言葉の意味が分かった。これからもって、まるでプロポーズみたいじゃん。

 あれ、でも待って? 日本じゃ男同士だと結婚できないから、このプロポーズ成功しないんじゃ。
 そんなつもりはなかったが、それはそれで複雑だな。だけど別に断られたわけじゃないから、気にしなくてもいいのか。

 そんなことを考えていると、頭を撫でられた。その手の感触が心地よくて、顔を見上げた。
 すると嬉しそうに微笑んで、僕を見つめている。今日、来られて良かったな。

「カチューシャ?」
「ああ、可愛いだろっ。のぞむん猫」
「三毛猫か? それとも、ペルシャ?」
「大事なのは、そこなのか」
「最優先事項だ。あっ、ゴンザレスに似ているやつがある。これは、朔弥くんだな」
「確かに、この耳の感じ似ている」

 お昼を食べるために、レストランに向かっていた。そこで、カチューチャなどが売っているお店を見つけた。
 朔弥くんは、猫のカチューシャを僕につけてきた。なんの種類なのか、気になってしまった。

 そこまで詳しくないが、考えてしまった。犬は犬種って言うから、猫は猫種って言うのだろうか。
 朔弥くんにツッコまれたが、大事なことだろう。そこで、ゴンザレスに似た感じのカチューシャを見つけた。

 背伸びをして、朔弥くんの頭につけた。似ているし、似合っているな。
 店員さんが微笑んでいたため、急激に恥ずかしくなった。お金を払い、そそくさとその場を後にした。

「ハンバーグ、最高に美味いな」
「チーズが溶けているね」
「食べるか? あ〜ん」
「ごくっ……美味しいっ」
「そうか、良かった〜のぞむんが幸せなら、俺も幸せ〜」
「じゃあ、これ食べるか。ほら」
「美味いな〜のぞむんが食べさせてくれたから」
「か……勝手にしろ」

 レストランに入ると、少し空いていた。まあ、お昼時じゃないからね。
 ジェットコースターに、カチューシャ。時間が経過するのは早いもので、完全に晩御飯になりそうな時間になった。

 まあ、楽しいから問題ないけどね〜。朔弥くんはハンバーグ定食で、僕はエビフライランチを頼んだ。
 ハンバーグの中には、チーズが入っていて美味しい。食べさせてもらったから、特に美味しいよね。

 大きめのエビが三匹入っていて、ソースも美味しい。タルタルとソースって、相性最高だよね。
 美味しいけど、少し多いな。貰ったから、僕も一口あげることにしよう。

 食べさせると、嬉しそうに微笑んでいる。歯の浮くようなセリフを言っていて、恥ずかしい。
 嬉しいって思う僕も、やっぱり大概なんだろうね。まあ、今日は非日常を味わう日だからね。

 誕生日ぐらい、イチャつこうか。嬉しいって思われると、僕までも嬉しくなるからね。

「うっ……怖い」
「大丈夫、俺がいるから」
「さ……くやくんっ。僕初めて、君を頼もしいって思ったよ」
「若干、言いたいことはあるけど。まかせんしゃいっ!」
「声が大きいと、周りに迷惑」
「お化け屋敷なんだから、大声出すだろ」