優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 そんなことがあったら、世も末である。まあ、そんなことには絶対にならないが。
 それは置いておくとして、バイトの件について話そう。こいつの言う通り、少しだけ上から目線になってしまった。

 まあでも、別に支障はないだろう。こいつだって、黙っていた方がいいだろう。
 ただでさえ、素行が悪いのだから。これ以上は、下手すると退学になってしまう。
 こいつだって、そこまでアホではないだろう。多分、きっとそうだと願いたい。

「黙っておく代わりに、友達になろう」
「なんで、お前と」
「嫌なら、言っちゃおうかな〜」
「僕はそんなに重い罪にならないが、お前はどうだ」
「え〜俺だって、貧困本線で〜」
「それを言うなら、品行方正だ。お前が品行方正なら僕は、神になるな」

 僕は真面目に言っているのに、こいつときたら。こいつに真面目を求めることが、愚行なのかもな。
 友達って、勝手にマブダチ認定しておいて何を言っているのだろうか。認める気はないが、オタ友は欲しい。

 こいつのことは嫌いだと断言できるが、純粋にオタ友は欲しい。こいつの価値は、それぐらいしかないからな。
 しかも、貧困本線ってなんだよ。もしかして、品行方正って言いたいのか。

 こいつ、日本語も知らないのかよ。頭は痛いが、まあ多めに見てやろう。

「お前って意外に、アホなこと言うんだな」
「煩い! とにかく、黙っておくしかないな」
「じゃあ、のぞむんって呼ぶよ」
「やめろ、僕もお前と同じでバカだと思われる」
「え〜酷いなー」
「はあ……戻るぞ」
「ういっす、のぞむんパイセン」

 こいつは、何を思ったのか変な目で見てきた。神と言ったのは、冗談である。
 こいつに、アホって言われてしまった。アホにアホって言われるのは、屈辱的である。

 しかも意味の分からない、あだ名をつけられてしまった。口が悪い自覚はあるが、こいつに気を遣う必要性がない。
 バイトを黙ってほしい気持ちは、同じだろうからな。まあ、今はそれだけでいいだろう。

 ニコニコ笑顔のこいつを見ると、不思議と嫌な感じはしなかった。
 先が思いやられるが、友達だと言われて嬉しいのは黙っておこう。

「のぞむん、帰ろっ」
「そうか、さようなら」
「じゃなくて、一緒に」
「さて、着替えよう」
「じー」
「見るな」

 バイトが終わり、更衣室でこいつと二人っきりになった。一緒に帰ろうと言われたが、絶対に嫌である。
 何が悲しくて、こいつと帰らなければならないんだ。無視することにして、着替えることにした。

 ボタンを外していると、ジロジロと見てきた。しかもご丁寧に、声に出している。
 こいつは一体、何をしたいんだ。上半身裸になっているため、身の危険を感じた。

 男同士だと何もないと思うが、世間には変態もいるからな。男同士を否定はしないが、僕はノーサンキューである。
 しかも、こいつは何を考えているのか分からない。色んな意味での危険人物のため、用心に越したことはない。

 急いで、Tシャツを着ることにした。ズボンも脱ぎたいが、何故かガン見している。

「気色悪いから、見るな」
「え〜いいじゃん、別に〜何かが減るもんじゃあるまいし」
「煩い、何かが減る」
「え〜のぞむん、かわいっ」
「……アホらし」

 気持ちが悪いため、睨むとさらにニヤニヤしている。気色悪いと言っているのに、嬉しそうにしている。
 ドMかと思ったが、めんどくさいため無視をすることにした。こいつ、考えているんだ。

 急いでスボンを脱ぎ、短パンを履いた。こっちを何も言わずに、じーっと見つめている。
 本当に、気色悪いため帰ろう。しかも可愛いとか、意味の分からないことを言っている。
 メガネをクイッと上げて、バッグを持った。帰ろうとすると、何故か急いで着替えていた。

「待って〜のぞむん」
「……はあ、バスの時間までまだあるな」
「じゃあさ、俺とおしゃべりしよう」
「……コンビニにでも行くか」
「俺も行く〜アイス食べたい」
「だらしないから、それやめろ」
「いいじゃん! ヘソだしは、正義だろ」

 通用口から出ると、急いで追いかけてきた。こいつって、本当に無駄にイケメンだよな。
 興味がないため、気にも留めていなかったが。半袖シャツから覗く、筋肉質な腕は逞しい。

 穴あきのジーンズを着ていて、陽キャしか履けないよな。色も白くて、確かにかなりのイケメンだ。
 左耳にピアスして、ネックレスもつけている。指輪も嵌めていて、陽キャイメージそのものだ。

 二次元キャラなら、確実にメインになるだろう。まあ、性格は終わっているけどな。
 しかも暑いらしく、Tシャツの裾を持って仰いでいる。近くの女性陣が、顔を真っ赤にしている。
 こいつ、ほんとに危険人物のようだ。まあ、無視することにしよう。

「のぞむん! 行こう」
「引っ張るな!」
「いいから! いいから!」
「よくない!」

 急に腕を引っ張られて、歩き出した。コンビニに行くようだから、まあいいか。
 ニコニコしていて、なんか調子が狂う。こいつって、こんなに嬉しそうに笑う奴だったか。

 僕の記憶だと、いつもつまらなそうにしている。笑っていても、本心には見えなかった。
 強引だけど、優しくて大きい手のひら。僕のと比べて、かなりゴツゴツしている。

 Tシャツから見える腕も逞しく、僕じゃなかったら恋に落ちるだろうな。
 なんか、気持ちの悪いことを言ってしまった。まあ、こいつがイケメンなのは認めよう。

 事実を曲げても、意味はないからな。僕としては、かなり譲歩してやったんだ。
 ありがたく、思ってほしいぐらいだ。まあ、こいつに振り回されるのは嫌じゃないからな。

「ふむふむ……なるほど」

 コンビニに入り、ゲーム雑誌を見つけた。立ち読みをしているが、かなり有益な情報が入っている。
 家に帰って、ゆっくりと見ることにしよう。レジに向かうが、並んでいるみたいだ。

 二人で対応しているが、一人は新人さんみたい。分からないことが多いため、もう一人に質問している。