優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 手から伝わってくる温もりを手放したくない。付き合っているって、改めて実感した。

「何、食べたい?」
「サンドイッチ」
「俺はパスタにしようかな〜」

 カフェに連れて来られ、列に並んでいた。そこで何にすると聞かれたため、食べたいものを告げる。
 嬉しそうにしていて、なんか恥ずかしい。注目を浴びていることに気がついて、周りを見た。

 女性陣を筆頭に、何やら噂されている。この服装、何かおかしいのかな。
 僕には知識がないため、分からない。朔弥くんのことを見ているのかと思ったけど、違うらしい。

「どうした?」
「ねえ、なんか見られてない?」
「あーこれだろ」
「あっ……」
「離すか」
「か……勝手にしろ」
「じゃ、きっちりと繋ぐ」

 思わず、朔弥くんの服の袖を掴んでしまった。すると優しい笑顔で、振り向いてくれた。
 顔を近づけて、コソッと伝えた。手を上げられて、繋いでいることを思い出した。

 そうか、これのせいだったか。顔から火が出そうなぐらいに、恥ずかしい。
 離すかと言われて、勝手にするように告げる。どうせ、人の話を聞きやしない。

 すると嬉しそうに、微笑んでいた。より一層繋がれて、心臓が煩い。
 ゴツゴツした手で、僕よりも大きい。ほんと、こいつは手までイケメンなのかよ。

「美味いか」
「美味しい」
「パスタ食べるか」
「そんなに、食べられない」
「少食か、可愛いな」
「僕は別に普通だよ。朔弥くんが、食べ過ぎなんだよ」
「高校生男子にしてみたら、少ない方だろ」

 サンドイッチを食べていると、声をかけられた。卵サンドって、たまに無性に食べたくなるよね。
 嬉しそうにしていて、恥ずかしい。さっきの件があるため、周りから見られている。

 美味しいから、別にいいんだけど。ココアも美味しいし、言うことなしかな。
 パスタを一口、口元に持ってきた。美味しそうだけど、そんなに食べられないよ。

 まあ文句を言ったところで、引かないだろう。そのため大人しく、食べることにした。
 ナポリタンって、やっぱり美味しいよね。うんっ、食べて正解だった。

「そういえば、用事は済んだのか」
「あっ、うん。服でなにゃんで」
「にゃん? 可愛いな」
「噛んだ……ゴホンッ……服で悩んでいたから」
「なるほどな〜」

 食べられないかと思ったけど、完食できた。朝も気になって、少しだけしか食べられなかったからね。
 ココアを飲んでいると、声をかけられた。完全に噛んでしまったため、恥ずかしい。

 だけど朔弥くんが、ニコニコ笑顔だった。それだけのことで、嬉しい気分になった。
 こんなことなら、最初からお願いすればよかった。あー、だけど払ってもらったしな。

 その点だけは、どうするべきだったのか悩むとこである。まあ、こいつじゃないが彼色に染まるのも悪くはないのかもな。

「ねえ、朔弥の知り合い?」
「俺の大事な人」
「……ふぅ〜ん。彼女じゃないわよね」
「違うぞ」
「う〜ん、もしかして男! な〜んだ、元カノとして精査してやろうと思ったのに」
「お前、余計なことを……あれ、行くのか」

 微笑み合って、自分たちの世界に入っていた。すると朔弥くんは、知らない女の人に声をかけられていた。
 髪が腰まであり、タイトな服を着ている。ヒールを履いているけど、僕よりも身長が高いようだ。

 香水の香りも良くて、かなりの美人。朔弥くんと親しげにしていて、胃がムカムカしてきた。
 僕を睨むと言うか、品定めしているような目をしている。朔弥くんは彼女の問いに、間髪入れずに答えている。

 彼女じゃないのかという問いに、違うと言っていた。しかもそれだけじゃなくて、元カノって言っている。
 朔弥くんは嫌そうにしているが、これ以上ここにいたくない。僕が立ち上がると、驚いているようだった。

「どうぞ、元カノさんと仲良くして下さい。僕はちっとも! 全くもって! 気にしないので!」
「いつになく、刺々しいセリフ」
「ふんっ」
「ちょっ! 待って!」

 そんなに、元カノさんと仲良くしたいだったら! 僕のことなんて、気にしないでよ!
 僕は人目も憚らずに、大きな声を出した。注目されたけど、知ったことか!

 僕は静止も聞かず、その場を後にする。朔弥くんも急いで、立ち上がっていた。
 ヤキモチなんて可愛いものじゃない。これは、独占欲だ。

 僕はいつから、こんなに好きになっていたのだろうか。僕は鈍感だから、自分の気持ちに気が付かなかった。
 だけど、きっと最初から惹かれていた。嫌いだったのは、羨ましかったからだ。

 嫌いって言う感情は、好きになる。何かの作品で言っていて、そんなことはない。
 その時はそう笑っていたが、まさにこの状況そのものだ。嫌いだったのに、今ではこんなにも好きだ。

「話聞かないなら、道の往来でキスするぞ。ふか〜いやつ」
「うっ……だって」
「ここ、学校の近くだな〜同級生、いるんだろうな〜俺はいいよ、別に〜」
「だって……彼女じゃないし」
「……ほほう。なるほど、じゃあ尚更話をしないとなー」

 ズンズンと勢いよく歩いていたが、急に悲しくなってきた。立ち止まっていると、後ろから抱きしめられた。
 顔を見なくても、直ぐに朔弥くんだって分かった。香水の香りがなくても、絶対に直ぐに分かった。

 だって、僕の大好きな温もりだったから。イライラしていても、直ぐに心が安らいだから。
 耳元で囁かれて、心臓が煩くなった。いつもなら嬉しいけど、今はそっとしておいてほしい。

 だって、ヤキモチ妬いて一人で突っ走った。僕が自分で、付き合っていることを言いたくない。
 そう言ったのに、自分勝手すぎるだろ。だから、今は一人になりたい。

 だけどそんなこと、こいつには関係ない。基本的に僕の気持ちは尊重するのに、こういう時は察してくれない。
 まあ嫌じゃないため、難しい。僕って、めんどくさいメンヘラみたいな感じだったのか。

 それなのに、嬉しそうにしている。まあ、めんどくさい同士お似合いなのかもな。

「飲み物、頼むか」
「彼女じゃないから、いらない」
「彼女って、言われたほうがいいのか」
「だけど、あんなにきっぱり否定しなくても……確かに、言わないでほしいって言ったけど」

 半ば強引に、カラオケに連れて来られた。飲み物と言われたが、そんな気分じゃない。
 カラオケだって、誰かと来るの初めてだ。一人では何度か、来たことはあるが。

 彼女じゃないって、言われたのを根に持っている。否定されたのが、嫌だった。