優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 欲しいため、懇願することにした。すると腰に両手を置いて、やる気に満ち溢れていた。
 お金を払い、準備を整えた。腰を低くし、肘を固定している。

 体を少し後ろに反らして、銃を安定している。異名といい、この佇まいといい出来る奴なのだろう。
 詳しくは知らないが、アニメとかで見る構えと同じである。僕も緊張してしまい、固唾を飲んで見守った。

「無理だった」
「射的の虎、とは」
「ゲームのハンドルネーム」
「ゲームかよ!」
「ランキング一位なのに」
「スマホゲーか」
「よく分かったな」
「スマホと現実の銃じゃ、違うだろ」
「あっ……テヘペロッ」

 全部、外していた。そしてトボトボを歩いてきて、心なしか元気がないように見える。
 頑張っていただろうし、僕のためだった。そのため、まあ慰めたほうがいいのだろうか。

 気になっていることを聞くと、ゲームのハンドルネームだった。スマホゲームと、現実は違うだろ。
 やっぱり、チャラ男のようでなんか安心した。まあ、面白いからいいかな。

 その後、僕は挑戦した。しかし無理だったようで、早々に諦めることにした。
 人生諦めも肝心なので、次に行こうと思う。引き際も大事なので、名残り惜しいが諦めよう。

「はあ……どうしようか」

 朔弥くんはトイレに行くと言って、行ってしまった。そのため、一人で待っていた。
 木に寄りかかり、ため息をついていた。楽しかったけど、急激に不安になったきた。

 あいつ、彼女欲しいんだよな。それなのに、僕と行動していていいのか。
 今日一日だけで、数人から話しかけられそうになっていた。しかし華麗に無視して、遊んでいた。

 流石は陽キャのようで、慣れっこのようだ。僕と違って、逆ナンとか普通なんだろうな。
 少し胸が痛いというか、締め付けられてきた。最近の僕はやっぱり、少しおかしいようだ。

「いたたっ」
「あっ、すいませんでした」
「あぶねーだろうが!」
「すいません」
「兄貴にぶつかっておいて、謝って済むかよ!」

 ため息をついて、うろちょろしていた。すると誰かにぶつかってしまって、見てみると強面のお兄さんだった。
 直ぐに頭を下げて、謝った。しかし完全に怒らせてしまったようで、殴られそうになった。

 咄嗟のことで、避けることはできない。目を瞑ることしかできなくて、身構えた。
 しかし一向に、痛みがない。衝撃も来ないため、恐る恐る目を開けた。

「ふう……間に合った」
「さ……くや」
「いててっ」
「何、カッコつけてんだ!」

 朔弥くんに、抱きしめられていた。僕を庇ったのか、頬に傷ができていた。
 痛くないのか、にこやかに微笑んでいる。ドキッとして、呼吸が苦しくなった。

 しかし痛くないわけではなく、痩せ我慢だったらしい。痛そうにしていて、急激に心配になってきた。
 だけど心配だとは言えずに、強い言い方をしてしまった。僕のせいで、殴られてしまったのに。

「お巡りさん、こっちです! 高校生が、絡まれていて」
「望、行こうぜ!」
「えっ! あっ!」

 誰かが警察を呼んでいたらしく、朔弥くんに手を引かれた。僕の手を握って、走り出すその背中に見惚れてしまった。

 いつもよりも、大きく見えてしまった。大ききてゴツゴツした手や、筋肉質の腕。
 何故か、胸の高鳴りが収まらない。僕が辛くないスピードで走ってくれて、そういう優しさも。

 ――――全てに、意味を求めてしまう。

「はあ……はあ」
「ふう……ここまで来れば、大丈夫だろう」
「はあ……傷は」
「あっ……これか、痛っ……口の中、鉄の味がする」
「あり……ありがと」
「どういたしまして〜」

 人気のない花火が見える穴場のスポットへと、連れて行かれた。地元民の僕でも知らないのに、よく知ってるな。
 本命の子と、一緒に来るために調べていたのかな。今年は、僕で良かったのだろうか。

 ベンチに座って、傷口のことを聞いた。すると強がっているが、口の中が切れているらしい。
 それでも笑っていて、申し訳ない気持ちが溢れてきた。だけど謝るよりも、お礼を言おう。
 僕のために、体を張ってくれたんだから。素直になって、感謝するべきだ。

「ありがと」
「つっ……あっ」
「ほんと、望に怪我がなくてよかった」

 絆創膏ぐらいしかないけど、それを頬に貼った。気休めにしかならないけど、ひどい怪我じゃなくてよかった。
 手の甲にキスをして、上目遣いで見つめられた。そのせいか、身体中が暑くなってきた。
 僕のせいなのに、お礼なんて言わないでよ。どうして、こんなにも優しいのだろうか。

「喧嘩……慣れているのか」
「全然」
「じゃあ、なんで……」
「……好きな子が、危ない目に遭いそうなら当然だろ」
「えっ……」

 可愛くない僕は、可愛くない発言しかできない。申し訳ない気持ちと、助けてくれて嬉しい。
 だけど怪我はして欲しくないけど、見惚れてしまった。普段からは想像もできないような姿に、心臓が煩い。
 しかも、今サラッと凄いこと言わなかったか。幻聴かもしれないから、触れないほうがいいよな。

「望があいつらに絡まれているのを見た時は、心臓が止まるかと思った」
「な……んで……ぼ……なんかをっ」
「望に怪我がなくてよかった。好きな子を守ってつけた傷は、勲章だな」
「バカッ! バカッ! ごめっ……ぼ……くのせいでっ」
「大丈夫だから、泣き止んで」

 僕が絡まれているのを見て、そんなに心配してくれたんだ。それなのに、僕は何もできない。
 勝手に喧嘩慣れしていると思っていたが、僕のために怪我までした。意味が分からないから、取り乱してしまった。
 すると抱きしめてくれて、頭と背中を摩ってくれた。しかも怪我は勲章とか、言っている。

 その考え方は、身を滅ぼすから! そんな風に守ってもらっても、嬉しくないっ!
 思わず、胸を両手で叩いてしまった。その際に少しだけ、胸元がはだけてしまった。