「闇」
三途の川付近、そう呼ばれる場所。濃い霧に遮られ、境界は水の音と湿った風でしか感じられない。 在山(ざいさん)は記憶を失ったまま、重力に引かれるように歩いていた。そこへ霧の向こうから、見慣れたシルエットが近づく。 「おっ。お前も来てたんだ」 居酒屋のような軽い挨拶。だがここは誰も予約などしない場所だ。無無(むむ)は答えず、すれ違いざまに在山の首へ万力のような腕を回した。 「軽挨拶すんな! 俺ら、死んだんやぞ!」 喉に響く怒号。それだけが、この生気のない世界で唯一確かな手触りだった。 「お前が詐欺に誘うからや!」 無無の殺気に対し、在山はどこか冷静に事実を告げた。 「でもさ・・・オレたちの死因って、圧迫死だろ」 無無の腕の力がふっと抜ける。 「そや。な・ん・で・・・象に踏まれて、グチャって死ななあかんねん!」
三途の川付近、そう呼ばれる場所。濃い霧に遮られ、境界は水の音と湿った風でしか感じられない。 在山(ざいさん)は記憶を失ったまま、重力に引かれるように歩いていた。そこへ霧の向こうから、見慣れたシルエットが近づく。 「おっ。お前も来てたんだ」 居酒屋のような軽い挨拶。だがここは誰も予約などしない場所だ。無無(むむ)は答えず、すれ違いざまに在山の首へ万力のような腕を回した。 「軽挨拶すんな! 俺ら、死んだんやぞ!」 喉に響く怒号。それだけが、この生気のない世界で唯一確かな手触りだった。 「お前が詐欺に誘うからや!」 無無の殺気に対し、在山はどこか冷静に事実を告げた。 「でもさ・・・オレたちの死因って、圧迫死だろ」 無無の腕の力がふっと抜ける。 「そや。な・ん・で・・・象に踏まれて、グチャって死ななあかんねん!」
