エリナは復讐のために剣の修行ばかりしてきた。
ミーシャは孤児院で料理当番はあったが、言葉巧みに男の子たちにやらせてばかりだった。
ルナは魔法学院で寮暮らし。
シエルに至っては公爵令嬢で、料理など習ったことがない。
それでも――。
「レオンのために、ちゃんと作らなきゃ」
ルナが、真剣な表情で言った。
いつものツンデレ少女の面影はなく、ただ純粋に、大切な人を想う少女の顔がそこにあった。
「……そうね」
エリナが頷く。
その黒曜石の瞳には、ただ誰かを想う温かさが揺れる。
「レオンは、私たちのために命を懸けてくれた。今度は、私たちがレオンを支える番よ」
ミーシャの言葉に、全員が頷いた。
「じゃあ……も、盛り付けだけでも頑張りましょ?」
シエルが不安げな顔で、作り笑いを浮かべる。
四人の少女たちは、不器用ながらも、精一杯の愛情を込めて――料理に向き合った。
◇
コンコン。
昼過ぎ――扉をノックする音が響いた。
「レオン……入るわよ」
エリナの声だった。
返事をする気力もないレオンを気にせず、扉がゆっくりと開く。
そこには、少女たち四人が立っていた。
皆、どこか不安そうな、それでいて決意に満ちた表情をしている。
「あの……お昼、作ったの」
シエルが、遠慮がちに言う。
その手には、木のお盆。その上には、簡単な料理が乗っていた。
目を引いたのは――焦げた肉だった。
真っ黒に焦げた、もはや炭に近い何か。
そして、不器用にガタガタに切られた野菜の煮物。大きさがバラバラで、煮込み時間も怪しい微妙な見た目をしている。
お世辞にも、美味しそうとは言えなかった。
「あ、あの……私たち、料理とか、あんまり得意じゃなくて……」
ルナが、真っ赤な顔で言い訳する。
いつもの勝ち気な表情はどこへやら、今は恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいの顔をしている。
「ごめんなさいね。もっと美味しく作れればよかったんだけど」
ミーシャも、珍しく申し訳なさそうにうつむく。
いつもの余裕ある笑みはなく、純粋に落ち込んでいるようだった。
「……食べなきゃ体に悪いわ。食べてよ?」
エリナが、ぶっきらぼうに言った。
その顔は、少し赤い。彼女なりに、精一杯の優しさを込めているのだろう。
レオンは、ゆっくりと体を起こした。
四人の少女たちを見る。
皆、心配そうな、それでいて温かい眼差しを向けている。
レオンの胸に、温かいものが込み上げてきた。
ああ――。
この子たちは僕のために不器用に、必死に。
誰も料理なんてできないのに、それでも僕のために。
「……ありがとう」
声が、震えた。
お盆を受け取り、震える手でフォークを握る。
焦げた肉を、口に運ぶ。
硬い。
そして、苦い。
正直、料理としては失敗作だろう。
だけど――。
「美味い……」
涙が、こぼれた。
こめられた気持ちが、嬉しくて。
自分のことを想ってくれる人がいることが、嬉しくて。
自分は一人じゃない。こんなにも、自分のことを想ってくれる仲間がいる。
スキルを失っても、力を失っても――この絆だけは、失われていない。
「レオン……!」
少女たちが、ベッドの周りに集まってくる。
「泣かないで……」
シエルが、そっとレオンの手を握る。
その手は温かくて、優しかった。
「私たちがいるから……」
ルナが、涙目で言う。
いつものツンデレはどこへやら、今は純粋に心配する少女の顔だった。
「レオンは一人じゃないんだから……」
ミーシャが、優しく微笑む。
それは計算された聖女の笑みではなく、心からの笑顔だった。
「……私たちを、信じて」
エリナが、静かに言った。
その黒曜石の瞳には、強い決意が宿っている。
優しい言葉が、レオンを包み込む。
温かさが、胸に満ちていく。
レオンは涙を拭いながら、焦げた肉を――そして、ガタガタに切られた野菜を、一つ残らず食べた。
こんなに心にしみる料理は、今まで食べたことがない。
どんな高級料理よりも、どんな名店の味よりも――この不格好な料理が、何よりも美味しかった。
温かい。
心が、温かい。
カインは「役立たずは追放」と言った。
でも、この子たちは違う。
力があろうとなかろうと、スキルがあろうとなかろうと――ただ、自分という存在を大切にしてくれる。
それが、どれほど尊いことか。
それで、どれほど救われることか。
未来を視る力を失っても――この絆があれば、きっと道は開けるはずだ。
自分にだって、できることがきっとある。
今は道が見えないけど、絆があればきっと道は開けるのだ。
ミーシャは孤児院で料理当番はあったが、言葉巧みに男の子たちにやらせてばかりだった。
ルナは魔法学院で寮暮らし。
シエルに至っては公爵令嬢で、料理など習ったことがない。
それでも――。
「レオンのために、ちゃんと作らなきゃ」
ルナが、真剣な表情で言った。
いつものツンデレ少女の面影はなく、ただ純粋に、大切な人を想う少女の顔がそこにあった。
「……そうね」
エリナが頷く。
その黒曜石の瞳には、ただ誰かを想う温かさが揺れる。
「レオンは、私たちのために命を懸けてくれた。今度は、私たちがレオンを支える番よ」
ミーシャの言葉に、全員が頷いた。
「じゃあ……も、盛り付けだけでも頑張りましょ?」
シエルが不安げな顔で、作り笑いを浮かべる。
四人の少女たちは、不器用ながらも、精一杯の愛情を込めて――料理に向き合った。
◇
コンコン。
昼過ぎ――扉をノックする音が響いた。
「レオン……入るわよ」
エリナの声だった。
返事をする気力もないレオンを気にせず、扉がゆっくりと開く。
そこには、少女たち四人が立っていた。
皆、どこか不安そうな、それでいて決意に満ちた表情をしている。
「あの……お昼、作ったの」
シエルが、遠慮がちに言う。
その手には、木のお盆。その上には、簡単な料理が乗っていた。
目を引いたのは――焦げた肉だった。
真っ黒に焦げた、もはや炭に近い何か。
そして、不器用にガタガタに切られた野菜の煮物。大きさがバラバラで、煮込み時間も怪しい微妙な見た目をしている。
お世辞にも、美味しそうとは言えなかった。
「あ、あの……私たち、料理とか、あんまり得意じゃなくて……」
ルナが、真っ赤な顔で言い訳する。
いつもの勝ち気な表情はどこへやら、今は恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいの顔をしている。
「ごめんなさいね。もっと美味しく作れればよかったんだけど」
ミーシャも、珍しく申し訳なさそうにうつむく。
いつもの余裕ある笑みはなく、純粋に落ち込んでいるようだった。
「……食べなきゃ体に悪いわ。食べてよ?」
エリナが、ぶっきらぼうに言った。
その顔は、少し赤い。彼女なりに、精一杯の優しさを込めているのだろう。
レオンは、ゆっくりと体を起こした。
四人の少女たちを見る。
皆、心配そうな、それでいて温かい眼差しを向けている。
レオンの胸に、温かいものが込み上げてきた。
ああ――。
この子たちは僕のために不器用に、必死に。
誰も料理なんてできないのに、それでも僕のために。
「……ありがとう」
声が、震えた。
お盆を受け取り、震える手でフォークを握る。
焦げた肉を、口に運ぶ。
硬い。
そして、苦い。
正直、料理としては失敗作だろう。
だけど――。
「美味い……」
涙が、こぼれた。
こめられた気持ちが、嬉しくて。
自分のことを想ってくれる人がいることが、嬉しくて。
自分は一人じゃない。こんなにも、自分のことを想ってくれる仲間がいる。
スキルを失っても、力を失っても――この絆だけは、失われていない。
「レオン……!」
少女たちが、ベッドの周りに集まってくる。
「泣かないで……」
シエルが、そっとレオンの手を握る。
その手は温かくて、優しかった。
「私たちがいるから……」
ルナが、涙目で言う。
いつものツンデレはどこへやら、今は純粋に心配する少女の顔だった。
「レオンは一人じゃないんだから……」
ミーシャが、優しく微笑む。
それは計算された聖女の笑みではなく、心からの笑顔だった。
「……私たちを、信じて」
エリナが、静かに言った。
その黒曜石の瞳には、強い決意が宿っている。
優しい言葉が、レオンを包み込む。
温かさが、胸に満ちていく。
レオンは涙を拭いながら、焦げた肉を――そして、ガタガタに切られた野菜を、一つ残らず食べた。
こんなに心にしみる料理は、今まで食べたことがない。
どんな高級料理よりも、どんな名店の味よりも――この不格好な料理が、何よりも美味しかった。
温かい。
心が、温かい。
カインは「役立たずは追放」と言った。
でも、この子たちは違う。
力があろうとなかろうと、スキルがあろうとなかろうと――ただ、自分という存在を大切にしてくれる。
それが、どれほど尊いことか。
それで、どれほど救われることか。
未来を視る力を失っても――この絆があれば、きっと道は開けるはずだ。
自分にだって、できることがきっとある。
今は道が見えないけど、絆があればきっと道は開けるのだ。



