「狂月の鴉なら間違いないわ。ぽっと出の小娘たち、目立ちすぎちゃったわね。ふふふ……」
セリナの妖艶な笑みには、冷酷な悪意が浮かんでいた。
かつてレオンに向けていた微笑みとは、まるで別人のよう。仮面の下に隠されていた本性が、今、むき出しになっている。
「よし! ガンツ。すぐに頼みに行け。ついでにお前も行って楽しんで来い」
「え? いいんですか? あの可愛い娘たちを……。ひっひっひ……」
ガンツは下卑た笑みを浮かべると、嬉しそうに出ていった。その足取りは軽く、まるで祭りにでも行くかのよう。
残されたカインとセリナは、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「レオン……お前は出しゃばりすぎたんだ。俺より目立つとか許されんだろ? これはお前の自業自得だ……」
カインは自分に言い聞かせるように呟く。
蝋燭の炎が、彼の瞳を照らしている。
嫉妬と憎悪に狂った男の目。
自分が間違っていたとは、絶対に認められない。だから、相手を潰す。
それが、カインという男の選んだ道だった。
◇
翌日の夜――――。
月も出ていない闇夜の中、狂月の鴉のメンバーは黒頭巾に身を固め、アルカナの拠点近くの物陰で息をひそめていた。
闇に紛れた彼らの姿は、まるで死神のようだった。黒い衣に身を包み、顔を覆い、呼吸さえも殺している。彼らの目だけが、闇の中でぎらぎらと光っていた。
屋敷の窓からは、温かな光が漏れている。
その中で、何も知らない少女たちが笑い合っている。
その無防備な姿を見て、男たちの目が下劣な欲望に濁った。
「あの美少女たちと楽しめるなんて、夢みたいだぜ。くっくっく……」
「昨日のババァはいまいちだったからな。やはり若い子じゃないと……」
メンバーの男たちは襲撃が待ちきれない様子で軽口をたたいていた。その声には、人間とは思えない残虐さが滲んでいる。
彼らにとって、これはただの「楽しい作業」だった。
金をもらって、人を壊す。それだけの話。
「おい、静かにしろ……窓の明かりが消え始めたぞ。工作部隊はスタン魔道具の安全装置を解除しておけ」
リーダー格の男が、鋭い視線で屋敷を睨む。その目は、獲物を狙う蛇のようだった。
「お、いよいよか! 俺は銀髪の子な」
「なら俺は聖女だな。あの胸がそそるぜ」
「赤髪のガキもいいぞ。あのくらいの年頃が一番……」
男たちの邪悪な笑い声が、闇に溶けていく。
ほどなく、屋敷の照明が全部落ちた。
闇が、屋敷を包む。
静けさがやってくる――――。
「おやおや、あいつらお楽しみタイムか?」
「小僧一人に美少女四人だろ? 毎日とっかえひっかえしてるに違いない。羨ましい」
「まぁ、今日は俺らが楽しませてもらうんだがな。ひっひっひ……」
下卑た笑い声が、夜気に響く。
「ヨシッ! シーフ行け!」
リーダー格の男は小柄な男をまず放った。
男は音もなく闇を駆け、ゲートの鉄の門扉についた錠前にとりついた。細い指が、精密な道具を操る。
カチリ。
あっさりと鍵が開き、男はサムアップして合図した。その手際は、まさにプロ。何百という家に忍び込んできた経験が、その指先に宿っている。
「行くぞ!」
男たちは隊列を組み、足音を立てずに一気にゲートをくぐっていく。
ガンツも必死についていった。その巨体が、闇の中を駆けていく。ちゃんと仕事を見届けないとカインに叱られるし、何より美少女のおこぼれに目がくらんでいた。
屋敷を目指してアプローチの石畳をかけていく襲撃者たち。
勝利を確信した笑みが、その顔に浮かんでいる。
こんな簡単な仕事はない。眠っている小娘たちを襲うだけ。抵抗などあるはずがない。
その時だった。
パチン!
どこかから、指の鳴る音が響いた。
まるで、処刑の合図のように――。
「へ?」
リーダーが不穏な響きに顔を向けた時だった。
ジュォン……。
不気味な音が足元から鳴り響いた。
それは、大地そのものが唸り声を上げているかのような、不吉な響きだった。
直後、足元の石畳が黄金色に光輝く。
まるで、天罰が降り注ぐかのように。
「うぉっ!」
「な、なんだこれは?!」
「しまった!」
刹那、石畳の道は底なし沼へと様変わりし、一気に襲撃者たちを飲み込んだ。
つい先ほどまで固い石畳だった地面が、今は泥のように柔らかくなっている。足を踏み出すたびに、ずぶずぶと沈んでいく。
「ぐはぁ!」
「やばい!」
「逃げろーー!」
しかし、足元のぬかるみは容赦なく足をからめとり、右足を上げれば左足が沈み、もがけばもがくほど、どんどんと沈んでいく一方だった。
まるで、亡者の怨念がその命を奪おうとしているかのように。
「ふふっ、逃げられませんわよぉ」
二階の窓を開け放ち、ミーシャが姿を現した。
セリナの妖艶な笑みには、冷酷な悪意が浮かんでいた。
かつてレオンに向けていた微笑みとは、まるで別人のよう。仮面の下に隠されていた本性が、今、むき出しになっている。
「よし! ガンツ。すぐに頼みに行け。ついでにお前も行って楽しんで来い」
「え? いいんですか? あの可愛い娘たちを……。ひっひっひ……」
ガンツは下卑た笑みを浮かべると、嬉しそうに出ていった。その足取りは軽く、まるで祭りにでも行くかのよう。
残されたカインとセリナは、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「レオン……お前は出しゃばりすぎたんだ。俺より目立つとか許されんだろ? これはお前の自業自得だ……」
カインは自分に言い聞かせるように呟く。
蝋燭の炎が、彼の瞳を照らしている。
嫉妬と憎悪に狂った男の目。
自分が間違っていたとは、絶対に認められない。だから、相手を潰す。
それが、カインという男の選んだ道だった。
◇
翌日の夜――――。
月も出ていない闇夜の中、狂月の鴉のメンバーは黒頭巾に身を固め、アルカナの拠点近くの物陰で息をひそめていた。
闇に紛れた彼らの姿は、まるで死神のようだった。黒い衣に身を包み、顔を覆い、呼吸さえも殺している。彼らの目だけが、闇の中でぎらぎらと光っていた。
屋敷の窓からは、温かな光が漏れている。
その中で、何も知らない少女たちが笑い合っている。
その無防備な姿を見て、男たちの目が下劣な欲望に濁った。
「あの美少女たちと楽しめるなんて、夢みたいだぜ。くっくっく……」
「昨日のババァはいまいちだったからな。やはり若い子じゃないと……」
メンバーの男たちは襲撃が待ちきれない様子で軽口をたたいていた。その声には、人間とは思えない残虐さが滲んでいる。
彼らにとって、これはただの「楽しい作業」だった。
金をもらって、人を壊す。それだけの話。
「おい、静かにしろ……窓の明かりが消え始めたぞ。工作部隊はスタン魔道具の安全装置を解除しておけ」
リーダー格の男が、鋭い視線で屋敷を睨む。その目は、獲物を狙う蛇のようだった。
「お、いよいよか! 俺は銀髪の子な」
「なら俺は聖女だな。あの胸がそそるぜ」
「赤髪のガキもいいぞ。あのくらいの年頃が一番……」
男たちの邪悪な笑い声が、闇に溶けていく。
ほどなく、屋敷の照明が全部落ちた。
闇が、屋敷を包む。
静けさがやってくる――――。
「おやおや、あいつらお楽しみタイムか?」
「小僧一人に美少女四人だろ? 毎日とっかえひっかえしてるに違いない。羨ましい」
「まぁ、今日は俺らが楽しませてもらうんだがな。ひっひっひ……」
下卑た笑い声が、夜気に響く。
「ヨシッ! シーフ行け!」
リーダー格の男は小柄な男をまず放った。
男は音もなく闇を駆け、ゲートの鉄の門扉についた錠前にとりついた。細い指が、精密な道具を操る。
カチリ。
あっさりと鍵が開き、男はサムアップして合図した。その手際は、まさにプロ。何百という家に忍び込んできた経験が、その指先に宿っている。
「行くぞ!」
男たちは隊列を組み、足音を立てずに一気にゲートをくぐっていく。
ガンツも必死についていった。その巨体が、闇の中を駆けていく。ちゃんと仕事を見届けないとカインに叱られるし、何より美少女のおこぼれに目がくらんでいた。
屋敷を目指してアプローチの石畳をかけていく襲撃者たち。
勝利を確信した笑みが、その顔に浮かんでいる。
こんな簡単な仕事はない。眠っている小娘たちを襲うだけ。抵抗などあるはずがない。
その時だった。
パチン!
どこかから、指の鳴る音が響いた。
まるで、処刑の合図のように――。
「へ?」
リーダーが不穏な響きに顔を向けた時だった。
ジュォン……。
不気味な音が足元から鳴り響いた。
それは、大地そのものが唸り声を上げているかのような、不吉な響きだった。
直後、足元の石畳が黄金色に光輝く。
まるで、天罰が降り注ぐかのように。
「うぉっ!」
「な、なんだこれは?!」
「しまった!」
刹那、石畳の道は底なし沼へと様変わりし、一気に襲撃者たちを飲み込んだ。
つい先ほどまで固い石畳だった地面が、今は泥のように柔らかくなっている。足を踏み出すたびに、ずぶずぶと沈んでいく。
「ぐはぁ!」
「やばい!」
「逃げろーー!」
しかし、足元のぬかるみは容赦なく足をからめとり、右足を上げれば左足が沈み、もがけばもがくほど、どんどんと沈んでいく一方だった。
まるで、亡者の怨念がその命を奪おうとしているかのように。
「ふふっ、逃げられませんわよぉ」
二階の窓を開け放ち、ミーシャが姿を現した。



