「そうだね、あの人たちとやっていくのは大変そうだ」
レオンもため息をつく。
謁見室で感じた、あの居心地の悪さ。貴族たちの冷たい視線。嘲笑。敵意。
貴族社会で生き抜くには、戦闘力だけでは足りないのだ。
それに、【運命鑑定】は、貴族になるためのアドバイスをしてこなかった。それはつまり、大いなるビジョンの実現には『貴族にならない方がいい』という判断があるのだろう。
無理に貴族社会に食い込むより、自分たちのやり方で道を切り開く。
それが、正しい選択なのかもしれない。
レオンは、四人の少女たちを見回した。
王侯貴族たちに軽んじられても、めげない。
むしろ奮起して、より強くなろうとしている。
その姿に、レオンは胸が熱くなった。
大切なのは、この仲間たちと一緒にいること。
認められなくても、讃えられなくても、彼女たちがそばにいてくれる。それだけで、十分だった。
「よし、じゃあ決まりだな」
レオンは立ち上がり、拳を握った。
「貴族なんかにならなくていい。俺たちは俺たちのやり方で、世界一のパーティを目指す。いつか、あの王様が頭を下げに来る日まで」
「おー!」
「いいですわね!」
「やってやるわよ!」
「……うん」
四人の少女たちが、笑顔で応える。
その瞳には、希望の光が宿っていた。
アルカナの物語は、まだ始まったばかりだ。
そして、その未来は、誰よりも輝かしいものになる。
レオンは、そう確信していた。
◇
翌日、一行は不動産屋に連れられて洋館の内見に来ていた。
宿屋では守れない――そう判断したレオンは、家を借りることにしたのだ。
アルカナを狙う勢力が確実に動き始め、すでに襲撃も受けている以上、喫緊の課題である。
いくら【運命鑑定】が予見してくれるとしても、馬小屋の藁の中に女の子たちを隠すわけにはいかないのだ。
「どうですか? これは出ものですよ?」
不動産屋のおじさんはヒゲを撫でながら、自慢げに二階建ての広い屋敷を紹介した。
リフォームしたばかりという瀟洒な作りで、内装も一新され、とても快適そうだ。石造りの堅牢な外壁、重厚な木製のドア、そして手入れの行き届いた庭――どこを見ても、一流の職人の仕事だと分かる。
白い石の壁が午後の陽光を受けて柔らかく輝き、窓枠には繊細な装飾が煌めいていた。
「うわぁ、素敵……」
シエルが思わず声を漏らした。その碧眼が、まるで宝石を見つけた子供のように輝いている。
「いいね! いいね!」
ルナも緋色の瞳をキラキラさせながら、あちこちを見回している。
「うん、悪くない!」
エリナは窓の作りや庭木の具合を慎重に見まわし、侵入者に対する守りやすさを確認してうなずいた。
「アルカナにふさわしいわ……」
ミーシャが優雅に微笑む。空色の瞳が、満足げに細められていた。
女の子たちの表情を見て、レオンの胸が温かくなった。
先日まで野宿を繰り返していた彼女たちには、この屋敷はまさに別世界に見えているのだろう。
全てを失い、絶望のどん底にあった日々から死闘を越えて英雄へ。そして、たどり着いた白亜の屋敷。
それはまさに輝かしいサクセスストーリーなのだ。
「では、中へどうぞ……」
手ごたえを感じたおじさんは、営業スマイルで恭しく玄関へと案内する。
◇
広いエントランスの奥にはダイニング、その隣は広大なリビングで暖炉も見える。
高い天井には精緻なレリーフが施され、壁には風景画が飾られていた。大きな窓からは陽光が差し込み、室内を温かく彩っている。
家具付きなので、テーブルやソファももう備わっていた。磨き上げられた木製のテーブル、ビロードの張られた椅子、そして窓辺には読書用の小さな机まである。
「うわぁ、ひろーい! ふふっ!」
ルナはタタッと駆け出した。その赤髪が元気に揺れ、喜びが全身から溢れ出ている。
普段は子供っぽく思われまいと強がっている彼女だが、こういう時は年相応の無邪気さを見せる。その姿が、レオンには微笑ましかった。
妹が生きていたらこういう風だったかも……。
レオンはふと、そんなことを思い出し、首を振った。
亡くなった人のことを思い出しても仕方ない。ただ――ルナを見ているとなぜか妹のことが思い出されてしまう。
「あぁっ! ルナ! 走らないの!」
エリナが注意するが、その声には厳しさがない。自分もそうしたい気持ちが分かるのだ。
ルナはピョンとソファに飛び込む――。
「わぁ! ふっかふかよぉ!」
ルナの身体が、上質なソファの柔らかさに包まれる。雲の上に寝転んでいるような、そんな感覚に彼女は目を輝かせた。
「私もー!」
シエルも嬉しそうにルナの隣にピョンと飛び込んだ。
公爵令嬢だった頃は、こんなはしたない真似は許されなかった。いつも背筋を伸ばし、優雅に振る舞わなければならなかった。
でも今は違う。
自由だ。
誰の目も気にせず、好きなように振る舞える。
レオンもため息をつく。
謁見室で感じた、あの居心地の悪さ。貴族たちの冷たい視線。嘲笑。敵意。
貴族社会で生き抜くには、戦闘力だけでは足りないのだ。
それに、【運命鑑定】は、貴族になるためのアドバイスをしてこなかった。それはつまり、大いなるビジョンの実現には『貴族にならない方がいい』という判断があるのだろう。
無理に貴族社会に食い込むより、自分たちのやり方で道を切り開く。
それが、正しい選択なのかもしれない。
レオンは、四人の少女たちを見回した。
王侯貴族たちに軽んじられても、めげない。
むしろ奮起して、より強くなろうとしている。
その姿に、レオンは胸が熱くなった。
大切なのは、この仲間たちと一緒にいること。
認められなくても、讃えられなくても、彼女たちがそばにいてくれる。それだけで、十分だった。
「よし、じゃあ決まりだな」
レオンは立ち上がり、拳を握った。
「貴族なんかにならなくていい。俺たちは俺たちのやり方で、世界一のパーティを目指す。いつか、あの王様が頭を下げに来る日まで」
「おー!」
「いいですわね!」
「やってやるわよ!」
「……うん」
四人の少女たちが、笑顔で応える。
その瞳には、希望の光が宿っていた。
アルカナの物語は、まだ始まったばかりだ。
そして、その未来は、誰よりも輝かしいものになる。
レオンは、そう確信していた。
◇
翌日、一行は不動産屋に連れられて洋館の内見に来ていた。
宿屋では守れない――そう判断したレオンは、家を借りることにしたのだ。
アルカナを狙う勢力が確実に動き始め、すでに襲撃も受けている以上、喫緊の課題である。
いくら【運命鑑定】が予見してくれるとしても、馬小屋の藁の中に女の子たちを隠すわけにはいかないのだ。
「どうですか? これは出ものですよ?」
不動産屋のおじさんはヒゲを撫でながら、自慢げに二階建ての広い屋敷を紹介した。
リフォームしたばかりという瀟洒な作りで、内装も一新され、とても快適そうだ。石造りの堅牢な外壁、重厚な木製のドア、そして手入れの行き届いた庭――どこを見ても、一流の職人の仕事だと分かる。
白い石の壁が午後の陽光を受けて柔らかく輝き、窓枠には繊細な装飾が煌めいていた。
「うわぁ、素敵……」
シエルが思わず声を漏らした。その碧眼が、まるで宝石を見つけた子供のように輝いている。
「いいね! いいね!」
ルナも緋色の瞳をキラキラさせながら、あちこちを見回している。
「うん、悪くない!」
エリナは窓の作りや庭木の具合を慎重に見まわし、侵入者に対する守りやすさを確認してうなずいた。
「アルカナにふさわしいわ……」
ミーシャが優雅に微笑む。空色の瞳が、満足げに細められていた。
女の子たちの表情を見て、レオンの胸が温かくなった。
先日まで野宿を繰り返していた彼女たちには、この屋敷はまさに別世界に見えているのだろう。
全てを失い、絶望のどん底にあった日々から死闘を越えて英雄へ。そして、たどり着いた白亜の屋敷。
それはまさに輝かしいサクセスストーリーなのだ。
「では、中へどうぞ……」
手ごたえを感じたおじさんは、営業スマイルで恭しく玄関へと案内する。
◇
広いエントランスの奥にはダイニング、その隣は広大なリビングで暖炉も見える。
高い天井には精緻なレリーフが施され、壁には風景画が飾られていた。大きな窓からは陽光が差し込み、室内を温かく彩っている。
家具付きなので、テーブルやソファももう備わっていた。磨き上げられた木製のテーブル、ビロードの張られた椅子、そして窓辺には読書用の小さな机まである。
「うわぁ、ひろーい! ふふっ!」
ルナはタタッと駆け出した。その赤髪が元気に揺れ、喜びが全身から溢れ出ている。
普段は子供っぽく思われまいと強がっている彼女だが、こういう時は年相応の無邪気さを見せる。その姿が、レオンには微笑ましかった。
妹が生きていたらこういう風だったかも……。
レオンはふと、そんなことを思い出し、首を振った。
亡くなった人のことを思い出しても仕方ない。ただ――ルナを見ているとなぜか妹のことが思い出されてしまう。
「あぁっ! ルナ! 走らないの!」
エリナが注意するが、その声には厳しさがない。自分もそうしたい気持ちが分かるのだ。
ルナはピョンとソファに飛び込む――。
「わぁ! ふっかふかよぉ!」
ルナの身体が、上質なソファの柔らかさに包まれる。雲の上に寝転んでいるような、そんな感覚に彼女は目を輝かせた。
「私もー!」
シエルも嬉しそうにルナの隣にピョンと飛び込んだ。
公爵令嬢だった頃は、こんなはしたない真似は許されなかった。いつも背筋を伸ばし、優雅に振る舞わなければならなかった。
でも今は違う。
自由だ。
誰の目も気にせず、好きなように振る舞える。



