【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 自分は、この力を正しく使えているのだろうか。仲間を守るため、街を救うため、それは確かに正しい目的だった。だが、この成果に酔っていたら、いつかとんでもない事になるのではないだろうか?

 風が、ふわっとレオンの茶色の髪を撫でる。その翠色の瞳には、勝利の喜びではなく、深い憂いが宿っていた。

「レオン?」

 気が付くと、シエルが監視塔を登ってきていた。銀髪が風に揺れ、傾きかけた陽の光を受けてキラキラと輝いている。

「あ、も、もう起きたんだ」

 レオンは慌てて表情を取り繕う。心配をかけたくなかった。自分の中の葛藤は、自分だけで抱えていればいい。仲間たちには、勝利の喜びだけを味わってほしかった。

「うん、ちょっと興奮してるみたい……」

 シエルはさらしを巻いた男装の胸に手を当てて、恥ずかしそうにうつむいた。頬がほんのりと紅潮している。

 昨夜の戦いで、シエルは生まれ変わっていた。怯えて逃げ続けていた公爵令嬢から、伝説の魔獣を射落とす神弓手へと。その興奮がまだ冷めやらず、落ち着かないのだ。

 そして、それだけではない。

 昨晩から急速に心を占め始めたレオンへの想いが、彼女の胸を締め付けていた。鼓動が速い。胸が熱い。この感情が何なのか、彼女自身もまだ理解しきれていなかった。

「シエルがここでコカトリスを撃ち落としたんだってね」

 レオンは優しく微笑んだ。シエルの凄まじい功績は、兵士たちから何度も聞かされていた。伝説級(レジェンド)の魔獣を、たった一矢で仕留めた神のような少女の物語を。

「うん……あの時は夢中で……」

 シエルは視線を逸らす。思い出すだけで、心臓が高鳴った。

 あの瞬間のことを、シエルは鮮明に覚えている。石化のブレスが迫ってくる恐怖。それでも弓を引き絞った決意。レオンの言葉を思い出したおかげで、全てが変わっていたのだ。

『君の弓は神域に達する』

 あの言葉が、自分を変えてくれた。

「その活躍のおかげでルナの魔法が成功したんだよ。ありがとう……」

「えっ!? そ、そうなの? よ、良かった……」

 シエルの碧眼が驚きに見開かれ、次の瞬間、安堵に潤む。

 自分の戦いが、仲間の勝利に繋がっていた。一人で戦っていたはずなのに、実は繋がっていたのだ。遠く離れた火山で、ルナやミーシャやレオンが戦っている時、自分のレベルアップの光が、彼女たちを支えていた。

 その事実が、シエルの心を温かく満たした。

「離れていても僕らはアルカナ……同じカードをめくっていくんだ」

 レオンは遠くの空を見つめながら、静かに呟いた。その横顔には仲間を信じる誇らしさが浮かんでいた。

「そう……ね」

 シエルもまた、流れる雲を見つめる。

 二人の間に、穏やかな沈黙が流れた。

 夕暮れの風が、二人の髪を揺らす。遠くで鳥が鳴いていた。灰色の大地とは対照的に、空は美しい茜色に染まっていく。

「レオンに会えて……よかった……」

 シエルの声は、小さく震えていた。本当は叫びたいほどの想いを、必死に抑えているかのように。

「それはこっちのセリフだよ。みんなに出会えてなければ、今頃奴隷にされてたんだ」

 レオンは自嘲気味に肩をすくめた。

 あの裏路地で少女たちに出会わなければ、奴隷商人に売り飛ばされ、奴隷として一生を終えていただろう。いや、その前に、絶望のあまり命を絶っていたかもしれない。

 全てを失った朝、自分を救ってくれたのは、この少女たちだった。

「そんなすごいスキルを持ってるのに?」

「スキルはしょせんスキル。それに【運命鑑定】はみんなが上手くやった時に成功するってだけだから、成功の保証はないんだよね。失敗したら最悪だよ」

「そうなんだ……」

 シエルは驚きに目を瞬かせる。てっきり、レオンのスキルは万能なのだと思っていた。未来が見えるなら、全てを完璧に操れるのだと。

 でも、違った。

 レオンも不安を抱えながら、それでも前に進んでいたのだ。完璧な導き手ではなく、自分たちと同じように恐怖と戦い、迷いながら道を切り開いていた。

 そう思うと、彼のことがさらに愛おしく感じられた。

「だから、シエルたちに会えたことは、僕にとっては最高にラッキーだったと思ってるよ」

 レオンの言葉は、心の底からの本音だった。その真摯な瞳に、シエルの胸が締め付けられる。

「うふふ……良かった……」

 幸せそうに笑うシエルを見て、レオンはしみじみと言った。

「素敵な顔で笑うんだね」

「えっ!?」

 シエルは思わず自分の顔を手で覆った。

 思えば逃亡生活に入ってからというもの、心が休まる時がなかったのだ。常に追手に怯え、常に孤独に震え、常に絶望と隣り合わせだった。笑顔を作ることすら忘れていた。いや、笑う理由がなかった。

 それが、いつの間にか自然と笑えるようになっていた。心の底から、温かい感情が湧き上がってくるのを感じる。

「な、なんだか調子狂っちゃうわ……」

「いいじゃない、笑ってる方が可愛いよ?」

「か、可愛いって……ボク、男の格好してるんだよ?」

 シエルの声が、可愛らしく上ずる。

「はははっ! そんな男装じゃ誰もごまかせないよ」

「え……? そ、そうなの?」

 シエルは愕然とした表情を浮かべる。自信満々だった変装が、まるで通用していなかったなんて――。今までの必死の変装は、一体何だったのか。